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永久の日々

作者: 夢莉

いつからか、いつからだったろうか。



自分は永遠という時間の中にいる錯覚に陥ったことは。


寝ては起きて、朝食を食べ、学校に行っては夕食を食べ、風呂に入って寝る。


毎日少しずつ変わっているように見えるこの日々は、果たして本当に変わってなどいるのだろうか。


今日が過ぎてしまえば「今日」は明日の自分に「昨日」と呼ばれ、その繰り返しを何度も何度もしていくのだ。


すなわち、昨日の自分と今日の自分は別人と言えるのだろう、永遠という監獄に捕らわれた哀れな小鳥だ。




「…ふふっ」




嘲笑にもよく似た自虐的な笑みがこぼれる、何の意味もない毎日なら今日頑張った自分はいつ報われるというのだろう。


ところで昔聞いたことがある。「早起きは三文の徳」という言葉を。


果たして本当にそうだろうか、古人は朝寝を戒める為にこの言葉を生み出したという。


日本には昔「文」という通貨単位があったらしい、現在の通貨に直すと三文で約100円といったところか。


だが考えても見て欲しい、朝の貴重な睡眠時間を削ってまで得られるものがあのちいさな白銅のメダル一枚だ。今時そんなもの貰って喜ぶのは、翌日に給料日を控えて残金0円のアルバイターくらいなものだろう。あ、実際今僕は猛烈に欲しいわけだが。



しかし、時間は金に匹敵するぐらい重要なものだと最近では色々と問題になっている。


今社会問題として挙がっている「ブラック企業」。


これを聞いているあなたも一度くらい耳にしたことがあるだろう。この一見するだけで怖気立つような禍々しい響きを。


法で定められた以上の時間を職場で過ごし、働き、なおかつ毎月の給料はカメムシ程度らしい。

すなわち僕が言いたいことは、今人類にとって最も重要なことは休息であるのではないか、と言うことだ。


変わらない毎日、古来からの超健全的習わし、現在の企業体制。


こんな人生ならきっと休んで好きな事だけをしていた方がきっといいに決まっている。




「―――ちょっとーー!!」




なんだ五月蠅いな。僕は今これからの人類の為に有意義な哲学をしていたというのに。




「―――ちょっとー!あなたがバリカンで丸刈りにしたお客様!ついには警察まで呼び出したわよー!」




わかった、わかったからドアを叩くのをやめてくれないか。僕は今人類の未来について考えているところなんだ。




「―――いつまでもトイレに籠ってないで出てきなさい!!もう出すもん出したでしょ!!」





「―――ふっ、愚問だな。中村さん。僕は―――」












「―――明日に…逃げたい…」


その時だった。パトカーのサイレンが聞こえたのは。

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