神の飛行法
別作品で、昔住んだ街について書いた際に、住んでいたアパートの郵便受けに「覚醒せよ」と書かれたビラが入っていたのを思い出しました。
「いらっしゃいまし」
「へへっ、一番安い酒を頼む」
元神聖肉食美食教会のニックが、入って来ました。
バアァアン!
このドアの開け方は、ゴッド様でしょう。
「ぶふぃ、今夜も来てやったぜ!」
「いらっしゃいまし、ゴッドさん」
いつものように、挨拶を交わします。
ガタッ…
「なっ!ゴッド?神?」
「ああん?お前……ニックか。そうとも、俺様が(ブタ族で)唯一の神、ゴッド様だ。ぶふぃ!」
ニックは、口をパクパクさせています。
「そ、そんなバカな!神が……神がブタである筈がない!……いや、しかしなぜ俺の名を?」
「ぶふぃ、俺様は(ブタ族の)神だと言ってるだろうが、お前の(ようなブタ族の敵の)名前など知っていて当然よ」
ニックは、ブルブル震えだしました。
「まさか……本当に、神だと?」
「そういえば、ニンゲン世界じゃ『飛べないブタは〜〜〜』とかいう言葉があるらしいな」
ゴッド様は、床に座り込み、ブタの体ではあり得ない角度で脚を曲げ、胡座をかきました。
「ぶふぃ……見せてやるよ、神の飛行法をな!」
ぴょん……ぴょん……
「な、そんなの俺にも出来そう……ぐあっ!痛い!」
ニックには、出来ませんでした。
ぜー、はー
「ぶ、ぶふぃ…見、見たか……はぁ……神の……ぜー、飛行法を」
若干疲れている様子ですが、流石はゴッド様です。わたしも飛べますが、鼻息で飛ぶため、勢いがつきすぎて音速を超えてしまいます。室内が滅茶苦茶にならない飛行法……やはりゴッド様は神です。
矮小なニンゲンであるニックにも、それが理解出来ると良いのですが。
「か、かかっ神よ!あなたを疑った俺……いや、わたくしを、お許し下さいませ!」
「ぶふぃ、なーに、ニンゲンが俺様の偉大さを理解しただけでも、大したモンだ。気にするな、ぶふぃ」
「おお……神よ!」
こうして、ニック・スキャナーは、ブタ族の神ゴッド様の信者になりました。
ゴッドさんが自らを「ブタ族で唯一の神」とか言ってますが、作中世界ではということですので、ご了承下さい。いくつかの神話で、ブタの神様が登場した記憶はあります。
……ブタ族からの信仰対象かは知りませんが。