神無月の夜
……キィ♪
「いらっしゃいまし、ハナコさん」
「こんばんは、マスター。お久しぶりね」
ハナコさんは、カウンター席に腰掛けました。
「すっかり秋になってしまったわね。葡萄のお酒をもらえるかしら?」
「かしこまりました」
40度ほどの酒精を含んだ酒を用意し、ハナコさんに渡しました。
「ありがと。……おいしいわ」
店の外から、虫の音が聞こえています。
「ゴッドさんは、出雲かしら?」
「ええ、昨日連絡がありました。無事に着いたそうです」
「いつもいるから、留守だと寂しいわね」
「そうですね」
「ブフフッ。でも、マスターと二人きり……いえ、二豚きりになれて嬉しいわ」
「……ハナコさん」
「……マスター」
……ギィ。
「こんばんはデヒ。……あ、お邪魔だったデヒ?」
「いいいいえ!いらっしゃいまし!」
「あら、コーツさん!お久しぶりね。いつ戻ってらしたの?」
「……こちらに戻って来たのは、先月の末デヒ。あ、マスター。やっぱり帰りますデヒ」
「いえいえ、このブウィスキーをどうぞ」
……ギィ。
「お久しぶりでやす。お?コーツもいたでやすか。久しぶりに一緒に飲むでやす」
「あ、チャシューさん。いらっしゃいまし」
「うーん、チャシューも来たから、帰らずに飲んでいくデヒ」
コーツさんに、干したリンゴの皮とワイルドピッグのロックを、チャシューさんにデリシャス残飯とワイルドピッグのストレートを出しました。
「ゴッドさん、毎年出雲に行ってやすが、ニンゲンどもの縁結びの会議にブタ族の神が行っても、やることなさそうデヒ」
「いや、多分ブタ族の縁結びも会議してる筈でやすが……」
「あら、そうかしら?わたし、そうは思えないわ」
「ああ……そうでやすね。失言でやす」
チャシューさんとコーツさんは、顔を見合せて頷き合っています。
いつの間にか虫の鳴く音が秋のものに変わり、夜が長くなりました。ゴッドさんが帰ってくる頃には、寒くなっているかもしれません。




