ゴッド
出来心ってやつです。
「いらっしゃいまし」
今夜も、お客様がいらっしゃいました。毎晩来てくださっている常連様です。 ブタの名は、ゴッド。ブタ族の神様でござっしゃります。
「ぶふぃ!今夜も来てやったぜ、マスター」
ゴッド様は、いつも「ワイルドピッグ」という銘柄のブウィスキーを飲まれます。
ちなみに、ブウィスキーとはブタ族が開発したウィスキーを指します。全体的に、ニンゲンのウィスキーよりも美味いものが多いですよ。
でも、ニンゲンには秘密にしています。ブタ族の優れた文化、これはニンゲンの劣等感を刺激するでしょう。
ニンゲンは、残酷な分野に関してだけは、我々ブタ族を遥かに超えています。 とても危険な生物です。劣等感を拭うために、トンカツにされるのは御免こうむります。
「くう〜、効くぜぇ。ぶふぃ、マスター、特選リンゴ芯も頼むわ」
「かしこまりました」
ゴッド様は、普段あまり贅沢はなさいません。おそらく、苦境にいる多くのブタ達を思ってのことでしょう。神様でありながら、ブタ族のために貧乏暮らしをなさっているのです。
「うめぇ、うめぇよマスター」
「ありがとうございます」
突然、ゴッド様がニンゲンの服ならポケットがある位置をごそごそと、その豚足でさすり始めました。
「マスター、済まねえ。大事な仕事が入りやがった。ぶふぃ、また来るぜ」
ゴッド様は、ドアを蹴り開けて走り去りました。
「……あっ、お勘定……」
ゴッド様は、携帯電話など持ってはいらっしゃらないはずですが、なぜ仕事が入ったとわかったのでしょうか……。やはり神様は凄いですね。
ここはブタ酒場Ton、ブタ族の、ブタ族による、ブタ族のための酒場です。
また次の営業日も、ブタのお客様がいらっしゃるでしょう。良い酒と、美味しい残飯を用意しておきましょう。