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1 ♢

 


 髪を整えながら、王宮の外に向かう。広間を覗いても、誰もいなかったし、見回り(散歩)でもしようと。


 晴れ渡った空はまるで、自分の門出を祝うかのよはう。機嫌良く庭園を歩き回った後、もう少し足を伸ばすかと、王宮から少しずつ離れていく。



 ✲✲✲✲✲✲



 ーーそして、気付けば、見知らぬ道を歩いていた。


 どうしてだ?さっきまで、街に通じる道を歩いてはずなんだが…。途中で青い鳥を追いかけたことがいけなかったのか?それとも、花の香りに誘われて、花屋に近づいたことか?それともやっぱり……うんうんと考え込み、更に見知らぬ道を突き進んでしまっていた。


 道にだんだんと霧がかかり始める。霧で見えなくなった先を行くわけにも行かず、来た道を戻ろうと、踵を返す。しかし、霧の濃い方向から馬の鳴き声が聞こえたことにより、振り向く。


「何故、馬が…?」


 さては、自分と同じように道に迷ったのだな。そう思って、くるっと体の向きを戻し、また霧の道を突き進んだ。すると、いきなり馬の足音が近づいてくるのが分かった。馬は止まる気配は無く、気付いた時には、馬と衝突してしまっていた。


「うおっと!?何だ!?何事だ!?」


 馬はやっと足を止め、自分は衝突した衝撃で、体勢を崩し、尻餅をついてしまった。地面に打ち付けたところを擦りながら、立ち上がる。いきなり迫ってくるとは、この馬め。この自分の美しさに魅了されてしまったか。


「…済まない。追っ手に追われているせいで、衝撃してしまった。怪我は無いだろうか?」


「しゃ、喋った…」


 ただの馬かと思えば、人語を話す馬だったとは…驚き目を見開いていると、馬の背後から複数の足音、奇妙な呻き声が聞こえてきた。濃い霧によって、姿は見えない。


「…もう来たのか」


「お前の追っ手という奴らか?」


「…ああ、魔物だ」


「!魔物だと」


 今日からの旅で、何時かは出会すだろうと思っていた魔物。まさかこんなところで出会すことになるとはな…。


 魔物達は馬と自分の目の前までやって来た。黒々としたその姿は、これが魔物かと納得せざるを得ない風貌だ。魔物達は馬だけでなく、自分のことも敵と認識したらしく、迷うことも無く、攻撃を仕掛けてきた。


「魔物は自分が倒そう」


 この魔物達も馬鹿だな。自分を敵と認識したのは間違いでは無い。しかし、自分に臆することなく、攻撃を仕掛けてきたのは大間違いだ。


 矢と弓を取り出し、構える。そして、呪文を唱えて放てば、一本の矢は複数に増え、魔物達の心臓目掛けて一直線に飛んでいく。そのまま、心臓を貫かれた魔物達は呻き声と共に、消滅した。



「これで大丈夫だろう。安心していい」


「!…とても強いのだな。恩に着る」


「次期王になる者からすれば、当たり前のことをしたまでだ」


 ふんっと、髪を靡かせ、余裕の笑みを携えた。流石は次期王となる自分だ。圧倒的な美しさと強さを兼ね備えている上、人助けだけに留まらず、馬も助けてしまった。


「次期王になるのか」


「ああ。…そう言えば、お前は何故、魔物に追われていたんだ?」


 霧が少しずつ晴れていく。見えていなかった馬の姿が露わになった。馬は白く逞しい翼を生やしている。初めて実物を見たため、目を見開いた。


「!ペガサスだったのか…」


「その通り…我はキューピット族に仕えるペガサス族の者だ。キューピット族とは違い、魔力が低い我らは魔物達には狙われやすい。今回も地上に降り立った時、奴らに見つかり、襲われかけたのだ」


「成程な」


 人語を話した時点で、ただの馬ではないだろうと思っていたが、まさかあのペガサスだったとはな。様々な種族がこの世界リーフェに生存しているとはいえ、この国には殆ど人間しか生息しておらず、王宮で暮らしている自分達は、外にもあまり出ない。人間以外の種族に出会すのは初めてだ。


「改めて礼を言う」


「いや、気にするな。…それより、一つ聞きたいことがあるんだが」


「?」


「………此処は何処だ?」


「!!」


 …そう、自分は道に迷っていたのだ。忘れかけてしまっていたし、魔物達も倒せたが、道に迷っていたという事実は何も変わらなかった。


「くくくっ…」


「何故、笑う!?」


 ペガサスは突然、笑い出した。それはそれは可笑しそうに。自分は真剣に聞いているというのに!


「済まない。道に迷った上、見知らぬ馬のために魔物を倒すとは、かなり行き当たりばったりな奴だと思ってな」


「困った者を助けるのは、次期王としての役目だからな」


「…そうだな。きっといい王になるはずだ」


 真剣な表情でペガサスはそう言った。自分はペガサスの言葉に、そうだろう、と余裕の笑みを浮かべた。自分以上に次期王に相応しい奴など居りはしない。そして、どんな王よりも立派な王になると確信している。


「そう言えば、自己紹介がまだだった。我はペガサス族の【シテマ】。其方を目的地まで送ろう」


「シテマか。良い名だな。自分はストーリア大国第一王子【ダイヤ】だ」


「ストーリア大国の王子だったのか。それで次期王になると」


「ああ」


「…それで、目的地は?」


「ストーリア大国の王宮まで頼む」


「承知した」


 シテマの背に乗ると、シテマは白い翼をはためかせ、宙へと浮いた。空を飛んだことは無かったから、不思議な感覚だ。シテマにしっかり掴まっていると、あっという間に空まで飛び上がる。


 結構揺れるものかと思っていたが、思っていた以上に安全で、快適なものだった。人々の生活を見下ろしながら、優雅に空を飛ぶというのは中々良いものだ。


 しかし、そう思っていられたのも最初の内だけだった。突然、強い衝撃によって、シテマが鳴き声を上げ、体勢を崩した。その衝撃の正体は何かの魔法だった。しかも、いい魔法ではない。周りを見渡すと、背後に浮遊していた魔物が一匹いたことに気付いた。


「シテマ!大丈夫か!?魔物がいる!」


「…あ、ああ。足を少し攻撃されたらしい…」


 シテマの足からは血が流れ出していた。魔物はまた攻撃を仕掛けようとしている。魔物にもう一度攻撃なんてさせてたまるものか!急いで、背にある弓と矢を取り出し、魔物の心臓を目掛けて、弓を引いた。矢は心臓を貫き、魔物を消滅出来た。


「魔物は倒した。後もう少しで王宮なんだが…持ち堪えられそうか…?」


「…大丈夫。王宮までならすぐに…」


「無理はしなくていいぞ」


「…ああ」


 シテマの飛ぶスピードが先程より速くなる。シテマの体にしがみついていると、やがて、王宮が見えてきた。シテマに王宮の庭園に降りてくれと頼む。


 そして、自分の頼んだ通り、シテマはしっかりと王宮の庭園に降り立ってくれた。王宮に近付くにつれ、スピードを緩めてくれたため、降り立つ時もゆっくりだったため、安全だった。


「シテマ、ありがとう。少し此処で待機しててくれないか?怪我の手当をする」


「い、いや、そこまで迷惑をかけるのは…」


「迷惑などではない。次期王として必要だと判断したことだ。遠慮するな」


 半ば強制的にだが、シテマを庭園に留めることに成功した。この時間帯なら庭師の人も居ないし、シテマが他に見つかることもないだろう。魔物も王宮に張られた結界によって、中へと入っては来られない。シテマの足を心配しつつ、王宮の中へと駆け込んだ。



 ✲✲✲✲✲✲



 王宮の中へと駆け込むと、使用人の人々が驚いた顔で自分を見つめていたり、声を掛けてきたが、今は緊急事態。シテマの傷の手当が先決だ。広間に、治癒魔法がとても得意な自慢の姉がいるはず。


 廊下を駆け抜け、広間に辿り着くと、扉を開け放ち、目的の姉の姿を探した。ーーそして、ソード、クラブと共にいたラブ姉さんの姿を見つけ、事情を説明せずに、引っ張り出して来てしまった。


 でも、ラブ姉さんのことだ。連れて行けばすぐに状況を把握して、対処してくれるだろう。また廊下を駆け抜け、王宮の外へと出て、庭園に向かった。庭園では翼を休め、苦しそうにしているシテマの姿があった。ラブ姉さんはペガサスの存在にとても驚いたが、すぐに足の傷の存在に気付き、治癒魔法で治してくれた。


 シテマはその治癒魔法で綺麗に治った傷を見て、驚きながらも喜んでくれた。シテマが再び元気になり、良かった。空へと帰っていくシテマを見送り、ラブ姉さんと共に広間へと戻った。



 広間には既に、お父様、お母様、クラウン達が集まっていた。お父様からの話を聞き、執事から地図を受け取り、自分は次期王として必ず宝石の欠片を見つけ、持って帰って来ようと心に誓った。


 お父様達に見送られた後、四つ子もバラバラに別れることになった。王宮の外へと出て、自分はすぐに仲間という名の家来を見つけ出そうと決め、街を歩き出した。



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