願うなら…。
とてもとても、とおいとおい遠くにあるとてもとても綺麗な星。
「あの星を手に入れる事が出来るのならばきっと私はどんな事でも成し遂げてみせるでしょう。」
と旅人は笑って答えた。
「どうして、星は遠くにあるのでしょうか?」
私は問うた。
「星が綺麗すぎてみんなが妬んだんだ。」
旅人は怒っていた。
とてもとても静かな怒りだった。
それはとてもとても綺麗な怒りだった。
「もし、あの星を手に入れる事が出来たら君は何をするの?」
旅人は言った
「ただずっと、側に居られればそれでいい。星が安全に暮らせる所でひっそりと暮らしたい。」
旅人の答えは悲しげだった。
「星は何処でなら安全に暮らせるの?」
そうだね…。旅人は深く考え込んだ。
そうして、そうして、幾度かの流れ星が流れて流れて、旅人は告げた。
「この流れ星なら分かるかもしれないね。」
「流れ星…。」
それはとても綺麗で輝いていた。とてもとても綺麗な星と同じぐらいの輝きだった。
旅人は…旅人は…旅人は答えた
「ボクはこの流れ星が見たいんだ。流れ星が無くなってしまうまでずーっとずーっと流れ星を見ていたいんだ。」
「どうして?」
私は尋ねた。
「そうしたら、きっととてもとても綺麗な星も自由に暮らせると思うんだ。」
旅人は笑っていた。
とてもとても楽しそうだった。
けれど…。旅人は哀しんでいた。
「どうしたの?」
私が言うと
「僕達はそんなずーっとずーっと先の未来まで生きられない。僕達は直ぐに散ってしまうから。」
旅人は云った。
私は考えた。そうしてそうして、一つの答えを導き出した。
「流れ星は新たな生命を宿しているんだ。きっと巡り巡って私達にも宿るんじゃないかな。」
私の考えを聞くと旅人は大笑いした。
ははは。…ははは…ははは…。
そして、旅人は次第に笑わなくなっていった。
「僕達に生命なんで宿らないさ、けれどいつか宿る日が来るといいね。」
旅人は悲しげに云った。
私はただただそれを見ていた。
「僕達も流れ星を愛しているさ。君達と同じようにね。」
旅人は語った。
「私達と君達とはどう違うんだい?」
私は理由が知りたかった。
「違わない。」
ポツリと旅人は言った。
「けれど、僕達には生命が宿らないさ。」
旅人は泣いていた。ただポロポロと泣いていた。
やがて泣き尽くして泣き尽くして
涙が枯れてしまうと、旅人は旅に出ると言った。
「少しでも、あのとてもとても綺麗な星の側にいたいんだ。」
私は一言
「お気をつけて。」
とだけ伝えた。