声
昔に書き溜めていた物を引っ張り出してみました。
「声」
学校の帰り道、
静まりかえり誰も居ない四つ辻。
気がついたらそこに立っていた。
昼休みにおもしろいWEB小説をみつけ、
午後の授業からずっとスマホで読んでいた。
最近は、異世界物が流行っているらしく、
もともとファンタジー物が好きだったこともあり、
どっぷり嵌っていた。
おかげで、四六時中スマホとにらめっこが続いおり、
帰りもそんな調子で続きを貪る様に読みつつ歩いていた。
そんな時、声がした。
呼ばれたような気がして歩みを止め、
視線を上げる。
「・・・気のせいか」
特に、誰かだ近づいて来る事もない。
「にしても・・・」
歩くのが遅くなっていたのかあたりは夕暮れ。
あまり遅くなると叔母さんに怒られる。
いとはいえ・・・
小説の続きも気になっているし。
まぁ歩く速度を上げればいい。
再び、スマホに視線を戻し歩き出す。
しばらくすると、また声がした。
「・・・君」
今度は歩くのをやめない。
「そういえば、このあたりだっけ・・・」
学校の奴らがこのあいだ話していたってけ・・・
夕暮れ時、
この辺を通ると、
名前を呼ばれる。
でも、誰もいない。
声は知り合いの声だったきがするらしいけど
しばらくするとまた呼ばれる。
だんだん声が近づいてくる。
で、
振るかえると・・・
まぁよくある話だ。
「友達の友達から聞いたんだけどね」
で始まり、たどっていっても、
「私も友達の友達から・・・」
とたどり着けない。
不確かな第三者の話。
今読んでいる小説も、
そんな感じで異世界に引っ張られる話だ。
まぁ、読んだりする分にはいいけど、
自分がというのは嫌である。
そんな事を思いながら歩いていると・・・
「〇〇〇君」
と、名前をよばれた。
聴き覚えのあるような声。
クラスの女子だっけ?
でも、無視をする。
「〇〇〇君」
聞こえない振りをし、構わず歩く。
「〇〇〇君」
声が近くなる。
「あぁもううるさい」
とは、思うが・・・
だけど、振り返ったり返事なんてしない。
「〇〇〇君・・・」
だって知っているんだ。
俺の事を名前で呼んだり、
ましてや『君』なんて着けて呼ぶ奴なんていない事…
本当の名前は誰もしらないのだから…