恐喝者
「あれ?ナナパは?」
ナナパがグループから離れてしばらく、ナナパがいないことにようやく気づいたのか、リゼルがそういったのを聞いて、セリナとラティーナが呆れた顔をする。
「あんたねぇ……」
「ナナパくんなら、広場の方にいったよ。配られる野菜もらってくるんだって」
そんな話をしていたとき、爆発音が響いた。
収穫祭を楽しんでいたひとたちが、いっせいに音のしたほうをむく。
ひとびとの間にざわめきが起こる。
「なに、さっきのおと!?」
「花火?」
「そんな予定はなかったはずだぞ」
「おい、あれ、火が見えないか?」
「広場の方だ」
その声を聞いたとき、リゼルたちの顔色が変わった。
それと同時に当たり一帯に声が響いた。
魔法で拡大された音声だ。それは、王都全体に響いているようだった。
『我らは黒雲の塔の修験者である。我らの力により、この王都の中央広場は占拠された。
我らが偉大なる教祖、トールさまは卑怯にも国家連合の策略により囚われの身となった。我らはこれに抗議し、ただちにその身柄の解放を要求する。国民の命がおしくば、ランザニアの王族どもはただちにこの要求を、国家連合の愚か者どもに伝えよ!』
それは魔法使いたちによる、収穫祭へのテロ宣言だった。
街の各所で、爆発音が響き、火の手があがった。
いろんな人の悲鳴が聞こえる。
「まさか、ナナパくんが……」
顔を真っ青にしたラティーナがつぶやいた。
「君たちは避難してくれ!ナナパくんは僕がたすけにいくから!」
アレスは真剣な顔でそういうと、広場の方へ走っていった。
「まさか……、こんなことになるなんて」
「はやく逃げましょう……。くやしいけど、私たちがいても何にもできない……」
セリナが唇をかみ締める。
収穫祭は、楽しい雰囲気から一転、恐慌状態になりかけていた。みんな爆音が響くたびに悲鳴をあげ、真っ青な顔をしながら、駆け足で火の手が上がる場所から離れていく。
パニック寸前の危うい状態だった。
そんな中で二人にできるのは、出来る限り落ち着いて避難することだけだった。
「リゼル、行きましょう」
そういっていまいちばん動揺しているであろう友人に声をかけようとしたとき、リゼルは突如として広場の方向に走りだした
さきほどまで呆然としていたのに、「ナナパ!」と名前を呟いて。
「リゼル!?ちょっと、なにしてんのよ!」
「だめだよ!リゼっち!!」
セリナとラティーナは、止めようとする。しかし、その姿はあっというまに人ごみの中に消えていった。
「広場の方だよね……」
「あのバカ、探さなきゃ!」
追いかけようとする二人を、大きな手が差し止めた。
クロエだった。
「あの子なら大丈夫だよ」
この恐怖と悲鳴に満ちた場に、につかわしくないやさしく穏やかな声。
「あの子ならちゃんと無事にもどってくる。君たちは僕と一緒に安全な場所に避難しよう」
ひょろりと背の高い青年は、二人を落ち着かせるように微笑んで見せた。




