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勇者になってみませんか?  作者: 七瀬 優
第一章 名称未定 りん「りんの大冒険がいいよ!」
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居眠り禁止!

 朝のリビング、優雅な朝食というには微妙に悲しい、コーンフレーク。

 時間もあることだし、軽く作ろうとしたのだが、訳あってできなかった。

 それで手間要らずのコーンフレークなのだが……。

 貴重な朝の時間に妙に空きが出来てしまった。

 こんな事なら、もう少し寝てても良かったな。

 昨日は遅くまで色々探したけど、結局装備品を見つける事はできなかったしな。

 う~ん、これは本当にドロップアイテムで装備品見つけるのが早いのかもしれない。

 あとは、武器屋や防具屋とか探したいところではあるけど、元手がほぼゼロだしな……。


 ドテ、ガチャ、ゴロゴロ。

 廊下から妙な音が聞こえてきた。

 りんだとは思うけど……。

 何してるんだあいつ?

 

 気になって廊下を覗いてみると、そこには……。

「なんて格好してるんだ? りん」

 頭には、鍋をかぶり、顔には猫のお面。

 右手には、杖。あれは多分仕込刀だろう。昨日封印しておいたはずなのに……。

 左手にはまな板? それに腰には包丁を下げてるじゃないか!?

 台所探しても出てこないわけだ!

 あとは、何のつもりなんだそれは……。

「暑くないのかそれ?」

 ものすごい厚着でだるまのように膨れた胴体。

 あと、ジーパン。

 う~ん。すごいファッションセンスだな。

「ものすごく暑いよ~だけど、モンスター退治に行くために準備したんだよ」

 ああ、言われてみれば……。重装備といえなくもない。

 下半身がジャージだけなのは多分、着膨れた胴体で手が届かなかったんだろうな。

「却下!! 学生服に着替えて、学校に行くぞ」

「ええええええ~せっかく準備したのに」

「学校はどうする気だ?」

「りんさんは本日、風邪を引いておやすみです!」

 声音を変えてそう答えるりん。

 つまり仮病か? りんにしては珍しい。

「馬鹿な事言ってないでさっさと着替えて来い」

「えええええ~今日も居残りとかいやだよ~」

 それが理由か……。

 そして、今日も居眠りする気満々なんだなお前。


 その後、放課後にモンスター退治に行くという事でりんを説得して学校に行った。

「放課後に居残りされると時間がなくなるから、居眠り禁止!」

 と一応釘も刺しておいたのだがどうなる事やら……。


 

 朝のホームルームでは行方不明だった田中の話がでた。

 なんと、昨日の夜発見されたらしい。

 どうやら、2日間完徹でバイトだったらしく、バイト時間終ったら職場の仮眠室で一日熟睡してたらしい。

 確か、日給1万とか言ってたよな? 

 24時間労働で1万円だとすると……時給420円切るじゃないか!?

 やっぱり罠だったか。

 まあ今日は学校に来てるから、色々と聞こうと、何度か話かけようとはしたのだが、

「今はちょと、悪い……」

 みたいな感じでそのつど断られた。

 よっぽど手ひどく説教食らったのか、バイト内容がよっぽど酷かったのか、はたまたその両方なのか、今日は本当に気力が感じられなかった。

 あと、教師は付け加えるように、

「田中君だけではなく、行方不明になる生徒がここのところ増えています。皆さん気をつけてください」

 なんて事を言っていた。

 もしかして、昨日の悲鳴の女子はモンスターに食べられて行方不明なんて事はないよな?

 人知れずモンスターが人を襲っていく風景を想像して、少し不安を感じた。



 静まり返る教室に黒板にチョークで書き連ねる音が聞こえる。

 その音は少し苛立ってるような気がするのは気のせいではないだろう。

 ピリピリと空気が痛い。

 俺はりんの方に目を向ける。

「ZZZ……zzz……」

 ものの見事に、一時限目から堂々と居眠りを始めていた。

 授業開始5分立ってないだろう!?

 その幸せそうな寝顔にちょっとイラっとして、りんの席まで歩いていく。

 そして、ノートを丸めて……。

 ズベシ!

「ふぎゃ!」

 少し涙目になりながらりんは俺をにらみつける。

 反省する気ないのかこいつ。

 そんな感じでその日は実力行使に出た。 


 授業中立ち歩く生徒は基本的に注意はされるんだろうが、りんの居眠りを的確にたたき起こしてるためだろう。

 教師達からは黙認……もしかしたら、りんをたたき起こす役を押し付けられたのかもしれない。



 ベシ!

「へぎゃ」

 ガス!

「ギャ!」

 ドゴス!

「グギャ!」

 

 それから毎時間、りんが寝る度にたたき起こした。

 叩く毎に、ノート、教科書、教科書の角、辞書……。

 というように叩く威力がバージョンUPしていった。

 それでも、次の授業には居眠りを始める。

 そこまで執念を持って居眠りするのかと尊敬の念すら抱きそうになった。



 昼休み。

 授業中にりんを叩きまくったせいなのか、

「今日のあおちゃん、嫌い~~~」

 とか言って開始と同時に逃げて言った。

 『サヤちゃん』にりんの分の弁当を渡しておいたから、まあ何とかなるだろう。

 俺はゆっくりと自分の分の弁当を食べた。

「番長が…………」

「……東堂さんが……」

「…………逃げ回っている」

 う~ん、周りが何か騒がしい気がするが、気にしない、気にしない。

 今日は平和な昼休み。

 平和なんだ……俺がそう決めた。

 だから、りんの駆け回ったり、こけたて凄い音がしてたり、何か野太い男の声が聞こえたりしたが、気にしない。

 何か、後々に色々付けを回してる気がしてならないのだが……。



 午後の授業も午前と同じく居眠りするりんを叩き起こした。

 午前とは違って1時間に2度も3度も居眠りして最後には思いっきりこめかみグリグリした。

 りんは半泣きになっていたが、クラスの誰もがスルーした。

 本当に、反省しろよなりん。

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