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スパイラル・チェイス  作者: 左門正利
◆ MI6諜報員ライオット
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◇ 一夜明けて

 数時間もの距離を車で走ってたどり着いたのは、埼玉県にあるホテルだ。


 すでに日が暮れている。ライオットが、車の中からホテルの看板を見た。


 ──オタッシャ・ホテル?


 五階建てのビジネスホテルのようだ。ここで巻物を渡すのか……と思ったところが、ちがった。


 ナナセが彼に伝える。


「今夜は、ここで休んでください。明日、朝八時半に迎えに行きます。わたしたちの組織、春風の声がかかっているホテルなので、お金の心配はいりません」


 それなら安心だ。一応、ライオットは必要最低限の警戒心を抱きながら、ホテルに入る。


 ふつうにチェックインして部屋のキーを渡されると、エレベーターに乗って三階で降りた。自分の部屋に入ってシャワーを浴びたあと、下着姿でベッドに寝ころがった。


 バタバタした一日だったと思うが、身体はたいして動かしていない。車の中にいた時間が長く、動いていないわりには変に疲れている。


 ベッドから起き上がり、冷蔵庫からビールを取り出す。ひと口飲んで、ライオットは思った。


 ──やっぱり、エールがいいな


 エールビールはイギリスのビールである。他国にいると、それが恋しくなる。


 ふと、今日の三者会談での出来事が、ビデオを再生するようによみがえる。

 ナナセとヒトミの畳返しには驚いた。それを蹴り飛ばす彼女たちの俊敏な動きも、人間ばなれしている。やはり忍者はすごい。


 あの家自体が、ふつうの家ではなかった。まだまだ仕掛けや秘密がありそうで、興味がつきない。


 それにしても、ルーデス協会を騙っていたあの二人組は、何者なのか。


 ──これであきらめたとは思えない


 おそらく、ふたたび姿をあらわして、今度は力ずくで巻物を奪いにくるにちがいない。

 その巻物には、どんな秘密が記されているのだろうか。見当もつかない。


 いろいろと考えをめぐらせているうちに、ライオットは眠りに落ちる。

 朝、目が覚めたときは、すでに八時をまわっていた。


「いかん、遅れるっ」


 あわてふためくライオットだった。




 大急ぎで身支度をととのえたライオットがエレベーターで一階に降りると、すでにナナセとヒトミがロビーの椅子に座っていた。


 最初は誰だかわからなかった。ナナセはパンツ姿ではなく、ロングスカートでおしゃれな格好だ。ヒトミも、そんな感じである。まるで、家族で旅行でもするような雰囲気だ。


 チェックアウトを済ませたライオットは、彼女たちの方へ足を進める。


 ヒトミが微笑んだ。


「時間ぴったりですね」


 本当は、余裕をもってもう少しはやく降りてくるはずだった。間に合って良かったと、ライオットはホッとする。


 ナナセが彼に告げる。


「では、まいりましょう。これから、京都に行きます」

「京都?」

「そうです。わが組織、春風の本拠地です」


 また、ずいぶん離れたところにあるものだ。しかし車で行くとなると、しんどい旅になりそうだ……と思っていると、ヒトミがライオットの思考から外れたことをいう。


「新幹線で行きますね」


 ちょっと驚いた。彼女たちの行動は、ライオットには予測できない。

 だが、京都まで車に乗って長い時間を過ごすよりは、新幹線の方がはやくて良い。


 ヒトミたちが、なぜこのような服装をしているのか、それでわかった。


 ──なるほど、本当に家族旅行に見せかけるわけか


 ホテルを出ると、きのう乗った黒いセダンが彼らを待っている。運転手も、以前と同じくカナエが運転する。


 ライオットは車の中でネクタイをはずし、スーツを脱いだ。そして、ヒトミから渡された薄手のジャンバーに袖をとおす。念のために、彼自身がもっている伊達メガネをかける。


 車で東京駅まで走り、旅行バッグを携えて新幹線に乗車したライオットたちは、誰が見ても家族だった。

 誰にも不信感を抱かれることなく、彼らは京都に到着するのだった。




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