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スパイラル・チェイス  作者: 左門正利
◆ MI6諜報員ライオット
3/31

◇ クノイチ・ヒトミ

 飛行機が成田空港に到着し、空港の到着ロビーを歩いていたライオットは、出口付近にたたずむ。


 ヒトミという女が出迎えに来ているはずだが、ざっと見渡したところ、それらしい人物は見あたらない。


 ──どんな女性なんだ?


 そう思っていると、誰かがスーツの右側の裾をひっぱった。

 ライオットは、あわてた。人の気配をまったく感じないまま、ここまで接近をゆるすのは、いまの自分には考えられないことだ。


 驚いてそっちの方へ顔を向けると、日本人の子どもが自分を見上げている。中学生ぐらいの女の子だ。


 ──迷子か?


 唖然となっているライオットに、彼との身長差が三十五センチほどもある彼女が、話しかけてくる。ライオットは彼女の言葉をきくなり、仰天する。


「ミスター・ライオット?」


 彼は「ちょっと待て」と、いいたくなった。


 ──ま、まさか


 信じられない目をして、その女の子に日本語で訊いてみる。


「あなた、ヒトミ、ですか?」


 女の子は満面に笑みをたたえながら、うなずいた。


「イエス!」


 ライオットは、動かぬ石像と化したように呆然となった。まさか子どもに出迎えられるとは、夢にも思っていなかった。


 ──こ、子ども……だよな?


 おかっぱ頭でブレザーの学生服を着ている彼女は、「ニンジャ」や「クノイチ」という言葉と結びつかない。


 戸惑うライオットに、ヒトミがふたたび話しかけようと口をひらいた。


「ミスター・ライオット、久しぶりに(めい)に会う叔父(おじ)さんのように笑ってください」


 彼女の声が、新聞で読んだ記憶を思い出させる。


 ──ヒトミに会えば、彼女が案内するので従うように


 ライオットは、ヒトミにいわれるままに笑顔をつくる。


「ミスター、これからタクシーでホテルへ向かいます。わたしと御一緒に、どうぞ」


 ヒトミはライオットの右腕に抱きつくように、自分の左腕をからませる。

 ライオットはイギリス人で、ヒトミは日本人だが、本当に久しぶりに会った叔父と姪のようだ。


 彼らはこのままタクシー乗り場まで歩き、そしてタクシーに乗り込んだ。


 二人が出会ってからのやりとりは、ライオットが MI6 の諜報員だとバレないようにするためだ。彼の方でも、それはわかっている。


 ──まあ、ここまでする必要はないと思うが、念には念を入れるということだろうな


 これが大正解となる。




 この時間、双眼鏡で空港の出口を見張っている男がいた。()せぎすで黒髪を伸ばした彼は、ライオットを見ながら、ぼそっとつぶやいた。


「あいつは、ちがうな。ガキといっしょだ」


 冷酷な性格を感じさせる、低い響きだ。ネクタイは締めていないが、黒いスーツが一八五センチの身体に似合いすぎるというほど、さまになっている。


 彼のとなりにいる身長二メートルの大男が、首をかしげる。


「変だな。飛行機の時間を間違えたか?」


 そういいながら、茶色のスーツの内ポケットからスマートフォンをとり出し、情報を確認する。レスラーのような身体をした彼は、着ているスーツが窮屈そうだ。こちらもネクタイはしていない。


「時間どおりだ。日付もあってる」


 双眼鏡の男が、ため息をついた。


「それなら、情報が間違っているってことだ」


 彼の言葉をきいた大男は、髪の毛のないツルツルの頭に右手をあてると、その手を後頭部へすべらせる。


「やれやれだ」


 スマートフォンをスーツのポケットにもどす。そして、痩せた男にいかつい顔を向けると眉をよせる。


「どうする?」

「ボスに報告しよう」

「ボスの機嫌が悪くなりそうだな」

「仕方ない」


 大男はふたたびスマートフォンをとり出し、彼らのボスに連絡を入れるのだった。




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