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スパイラル・チェイス  作者: 左門正利
◆ MI6諜報員ライオット
2/62

◇ 日本へ

 正午前、ライオットはタクシーでロンドンのヒースロー空港に到着する。


 チャコールグレーのスーツにライトブルーのシャツ、ネイビーのストライプタイをきっちり締めて、黒いアタッシュケースを左手にさっそうと歩く。その姿は、どこから見てもふつうのサラリーマンだ。


 ロビーへ足を向けると、メガネをかけている腹の出たオヤジが、椅子に座って新聞を読んでいる。スーツを着ているが、妙にだらしない感じだ。

 ライオットは彼のところまで近づき、ひと席あけて腰を下ろした。


 すると、オヤジが話しかけてくる。


「兄ちゃん、新聞みるかい?」


 そういいながら、読んでいた新聞をライオットに渡そうとする。


「いや、自分は……」


 手を振って断ろうとするライオットだが、オヤジは強引に押しつけてくる。


「遠慮するなよ。飛行機に乗るんだろ? 空の旅は、けっこう暇だろうが」

「はあ」


 けっきょく、ライオットはオヤジから新聞を受け取るのだった。


 ──不自然に思われることはなかった……よな?


 つまり、このオヤジがテリーである。二人で演技をしていたのだ。



 飛行機に乗り込むまで何事もなく、午後二時前に飛行機は離陸し、ライオットは機上の人となった。


 座席はエコノミークラスだ。たまにはビジネスクラスを満喫したいと思いながら、あきらめたように自分の席に落ちついた。

 窓側の席に座るライオットのとなりは、空席である。


 ライオットはスーツのポケットから、ヘレンから預かったメガネを取り出した。そのメガネをかけて、テリーからもらった新聞に目をとおす。


 一般人であれば、ごくふつうの新聞に見えるだろう。しかし、いまライオットがかけているメガネ越しに見ると、新聞に書いてある黒い文字は消えて、赤いアルファベットの文章が浮かんでくる。


 そこには、任務の詳細が記されている。


『日本の成田空港に到着すると、ヒトミという日本人が待っている。彼女は「クノイチ」と呼ばれる忍者の末裔で、彼女の属する「ハルカゼ」という組織が、巻物を渡す手筈になっている』


 ライオットの名前は、すでに伝えられているようだ。まあ、そうだろう。


『ヒトミに会えば、彼女が案内するので従うように。なお、宿泊先は「ニッポンフジヤマ・ナンバーワンホテル」に予約をとってある』


 ホテルの名称が長いと思いつつ、さらに続きを読む。


『仕事のための荷物をホテルへ送っている』


 新聞には荷物のリストが記載されており、ひとつひとつ確認する。よほどのことがなければ使われないものが多い。

 仕事が順調に進むようであれば、すべてが不要なものとなるだろう。


 ──おそらく、必要ないだろうな


 ライオットはそう思いながら読み進める。次に書かれているのは、任務の中核に迫る部分だ。


『日本には、すでにジムを派遣している。巻物を「ハルカゼ」から受け取り、これをジムに渡すのが、君に課せられた任務である』


 巻物をイギリスまで持って帰るのは、ジムの役目だ。


 新聞には、ジムと落ち合う場所と日にち、時刻が記載されており、ライオットはそれを暗記する。

 ひととおり覚えるべき情報を記憶したライオットは、メガネをスーツのポケットに入れて新聞を片づけた。


 ──今回の任務は、簡単に終わりそうだな


 楽観した想いを抱きながら、目を閉じる。


 三年ぶりの日本だ。いや、四年ぶりか?

 当時とくらべて、街の様子などは変わっただろうか。


 案内役のヒトミはどういう女性なのか、さっぱりわからない。ニンジャ、クノイチ……女だといっても、相当な訓練を積んでいるのだろう。


 ジムに会うのも、二ヶ月ぶりだ。あいつはまた、現地で遊びまくっているのではないか。


 様々な思惑が頭の中をめぐる。


 ライオットは、いつしかまどろみのなかで、眠りの世界へ入ってゆく。十二時間近くかかったフライトはなんの問題もなく、ぶじに日本に到着するのだった。




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