表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スパイラル・チェイス  作者: 左門正利
◆ 進まない任務
16/24

◇ 面会

「……ん」


 目を覚ましたライオットは、まだ夢を見ていると思った。


 ──ここは


 まわりを見ようとして顔を右に向けたとき、自分のすぐそばに白衣を着て後ろを向いている女性がいる。


 彼女は、ライオットが意識をとりもどした気配を感じて、ふり向いた。


「あ、目が覚めましたか?」


 そういうと、あわてたように部屋から出ていってしまった。日本語だった。彼女は日本人のようだ。


 ライオットの右手の人差し指の先に、クリップのようなものをはさんでいる。医療機器のセンサーだ。

 胸にも、コードの付いた小さな吸盤のようなものが貼り付けられている。

 左腕には、点滴の針が刺さっていた。


 唖然となった。


 ──病院か?


 ライオットは思った。自分は病院のベッドに寝ているようだ。そういう事実は把握できるが、いったい自分になにが起きたのか、まったく覚えていない。


 病室に、誰かが入ってきた。医師と二人の女性だ。学生らしい女の子とポニーテールの若い女性が、ベッドのそばまで来る。

 ライオットは己の記憶をまさぐる。


 ──彼女たちは、見たことがある……いや、会ったことが……自分といっしょに……


 女の子が、ライオットに声をかける。


「大丈夫ですか、ミスター・ライオット」

「………」


 その子の名前が思い出せない。医師が、彼女たちに伝える。


「記憶が混濁しているのでしょう。彼と話すのは、もう少し時間が経ってからの方が良いですね」


 ポニーテールの女性が、女の子にいった。


「きょうは、話もできそうにないな。行こう、ヒトミ」

「わかったわ。ナナセ姉さん」


 ライオットは、まどろむ頭の中で、いままでの記憶から彼女たちを探そうとする。


 ──ヒトミ……ナナセ……


 しかし、なにも思い出せないまま、ふたたび眠りに落ちるライオットだった。




 翌朝、ライオットは目覚めると、天井を見て愕然となる。


 ──ホテルじゃない?


 首をあちこち動かして、自分の身体と部屋を見たとき、思考がふっ飛んだ。自分のなかの時間までが止まってしまった。


 ここは病院だ。自分は病院のベッドに寝ている。集中治療室だ。そこまでは認識できた。


 ──ええと……


 自身になにが起きたのか、必死で思い出そうとする。


 不意に、女性の声が響いた。


「あ、起きました?」


 彼女は、この病院の看護師のようだ。そう思っていると、誰かが病室に入ってくる。


 白衣を着た医師に続き、二人の女性がライオットの方へ歩いて来る。二人とも、知っている顔だ。


「ヒトミ、ナナセ」


 ライオットは「あれ?」と思った。このシーンは、以前に見たことがあるような気がする。


 ──デジャブ?


 彼女たちは、名前を呼んでくれたライオットに微笑んだ。ヒトミがホッとした顔になる。


「良かった、記憶がもどっているみたい」


 しかし、ライオットは自分がなぜ病院のベッドに寝ているのか、さっぱりわからない。


 茫然自失に陥っているかのようなライオットを見たナナセが、ヒトミにいった。


「いや、まだ完全には治っていないようだ」


 ナナセはライオットに顔を近づけると、英語で話す。


「わたしたちと京都へ行ったのを、覚えていますか?」

「京都……」


 しばらくして、ライオットはうなずいた。


「ああ、覚えている。確か、新幹線で行ったんだ」

「そうです」

「京都駅で降りて、車でけっこう走ったな。山奥の村に、アンティークな家があった」


 ナナセが首を縦にふる。


「そこで、キモノを着たきれいな人に会って……ええと……」


 大事なことを、どうにか思い出した。


「そうだ、巻物! 巻物を受けとったんだ」


 ナナセとヒトミは微笑んだ。ナナセは、さらに訊いてみる。


「そのあと、どうなったか思い出せますか?」

「確か……」


 ライオットの記憶が、徐々によみがえる。


「東京にもどって、ジムと連絡をとったんだ。あいつと会う場所と時間を確認して、次の日に、会いに行ったんだ」


 そしてジムに──


「あれ?」


 ジムに会った記憶がない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ