◇ 証明
ここでライオットは、ロッドマンの指示をあおぐ。
「カーラに会いに行ってもいいですか?」
「そうね。ジムにどんなことがあったのか、くわしく知っているかもしれないから、きき出せるならきいてみて」
「わかりました。あと、巻物を彼女に見せていいですか」
「なんで?」
「なにやら、ジムが知っている大事な秘密があるそうです。道端で彼女に会ったとき、ここでは話せないといっていました」
しばらく間をおいて、ロッドマンは答えた。
「その秘密が、ジムが殺された理由だとすると……わかったわ。一応、彼女に見せてみて」
「了解。またなにかあったら、連絡します」
「気をつけてね」
ライオットは通話を終えると、今度はカーラに連絡する。
「もしもし、カーラです」
「ライオットです」
「連絡がくるのをお待ちしていました」
「明日、会えるかな?」
「はい。夜八時ごろ、渡した連絡先のホテルへ来ていただけますか。巻物をお忘れなく。部屋は、502号室です」
「わかった。じゃあ、その時間に会おう」
彼女がカーラ本人である可能性は高い。ただ、彼女が本当にカーラ本人であるかどうか、確かめなければならない。
お尻にあるタトゥーは、ショーツを脱がさないと確認できないのが、やっかいだ。そこまで簡単に肉体関係が築けるのは、テレビドラマや映画の世界だけだ。
──どうすればいい?
なにも思いつかないまま、知らない間に眠りに入っていったライオットだった。
翌日、日中はあちこちブラブラしていたライオットは、夜八時まえにカーラが泊まっているホテルに到着する。
スーツの内側、左脇に銃を備えている。丸腰で事に挑むほど、のんきではない。
肝心の巻物は、銃とは反対の右脇にある。
カーラのいる部屋は502号室だ。ドアの前まで来たライオットは、ノックする。
ガチャッとドアが開くと、そのわずかな隙間からカーラが顔をのぞかせる。
「お待ちしていました」
そういうカーラは、浴衣を着ている。シャワーを浴びて、髪をドライヤーで乾かしたばかりのようだ。黒髪ではなく、ブロンドである。昨日は、かつらをかぶっていたのだろう。
「そちらへ」
ライオットは、いわれるままベッドに座る。
カーラは、冷蔵庫から缶ビールを二本とり出した。
「どうぞ」
一本をライオットに手渡し、自分が持っている缶ビールのプルトップを開ける。
彼女がひと口、喉に流し込むのを見たライオットは、自分もビールをぐいっと飲む。
カーラは思いついたように「そうだ」というと、バッグの中からナッツの入った小さな袋を出した。
ナッツはきらいではないライオットだ。
カーラはその袋に指を入れて、ひとつとって口に運ぶ。
「おいしいわ。食べてみて」
ナッツ入りの袋をライオットに差し出すと、彼もひとつとって口に入れる。
ナッツを噛みながら、ふと思う。
──きのうとは雰囲気がちがうな
先日会ったときは、かなり深刻な様子だったが、いまは別人のようにリラックスしている。
ライオットは缶ビールをベッドのライトの近くに置くと、確かめなければならないことを彼女に訊いた。
「自分は、君が CIA の諜報員であるカーラだという確信が、まだもてないんだ」
ライオットの本心をきいた彼女は、無言のまま次の言葉を待った。
「君が本物のカーラだという証拠が、その……」
「ああ、タトゥーのことね」
カーラはそういうと、大胆な行動に出る。浴衣の帯をほどくと、両手でその浴衣をバッとひろげた。
ライオットの目が点になる。彼女は素っ裸だ。形の良いバストがライオットの目を釘付けにし、彼の思考を停止させる。
そんな彼女は、浴衣を脱いでベッドに放ると、後ろを向いた。
右のお尻に、タトゥーがある。ロッドマンからきいたとおりの形だ。
彼女は微笑みながらいった。
「これでしょ?」
前にかがんで、まるで挑発するように、そのタトゥーを右手で下から上になでる。
これで彼女は、本物のカーラであると証明された。
だが──このとき、ライオットは自分に異変を感じた。




