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スパイラル・チェイス  作者: 左門正利
◆ 進まない任務
13/19

◇ 証明

 ここでライオットは、ロッドマンの指示をあおぐ。


「カーラに会いに行ってもいいですか?」

「そうね。ジムにどんなことがあったのか、くわしく知っているかもしれないから、きき出せるならきいてみて」

「わかりました。あと、巻物を彼女に見せていいですか」

「なんで?」

「なにやら、ジムが知っている大事な秘密があるそうです。道端で彼女に会ったとき、ここでは話せないといっていました」


 しばらく間をおいて、ロッドマンは答えた。


「その秘密が、ジムが殺された理由だとすると……わかったわ。一応、彼女に見せてみて」

「了解。またなにかあったら、連絡します」

「気をつけてね」


 ライオットは通話を終えると、今度はカーラに連絡する。


「もしもし、カーラです」

「ライオットです」

「連絡がくるのをお待ちしていました」

「明日、会えるかな?」

「はい。夜八時ごろ、渡した連絡先のホテルへ来ていただけますか。巻物をお忘れなく。部屋は、502号室です」

「わかった。じゃあ、その時間に会おう」


 彼女がカーラ本人である可能性は高い。ただ、彼女が本当にカーラ本人であるかどうか、確かめなければならない。

 お尻にあるタトゥーは、ショーツを脱がさないと確認できないのが、やっかいだ。そこまで簡単に肉体関係が築けるのは、テレビドラマや映画の世界だけだ。


 ──どうすればいい?


 なにも思いつかないまま、知らない間に眠りに入っていったライオットだった。




 翌日、日中はあちこちブラブラしていたライオットは、夜八時まえにカーラが泊まっているホテルに到着する。


 スーツの内側、左脇に銃を備えている。丸腰で事に挑むほど、のんきではない。

 肝心の巻物は、銃とは反対の右脇にある。


 カーラのいる部屋は502号室だ。ドアの前まで来たライオットは、ノックする。


 ガチャッとドアが開くと、そのわずかな隙間からカーラが顔をのぞかせる。


「お待ちしていました」


 そういうカーラは、浴衣を着ている。シャワーを浴びて、髪をドライヤーで乾かしたばかりのようだ。黒髪ではなく、ブロンドである。昨日は、かつらをかぶっていたのだろう。


「そちらへ」


 ライオットは、いわれるままベッドに座る。


 カーラは、冷蔵庫から缶ビールを二本とり出した。


「どうぞ」


 一本をライオットに手渡し、自分が持っている缶ビールのプルトップを開ける。


 彼女がひと口、喉に流し込むのを見たライオットは、自分もビールをぐいっと飲む。


 カーラは思いついたように「そうだ」というと、バッグの中からナッツの入った小さな袋を出した。

 ナッツはきらいではないライオットだ。


 カーラはその袋に指を入れて、ひとつとって口に運ぶ。


「おいしいわ。食べてみて」


 ナッツ入りの袋をライオットに差し出すと、彼もひとつとって口に入れる。

 ナッツを噛みながら、ふと思う。


 ──きのうとは雰囲気がちがうな


 先日会ったときは、かなり深刻な様子だったが、いまは別人のようにリラックスしている。


 ライオットは缶ビールをベッドのライトの近くに置くと、確かめなければならないことを彼女に訊いた。


「自分は、君が CIA の諜報員であるカーラだという確信が、まだもてないんだ」


 ライオットの本心をきいた彼女は、無言のまま次の言葉を待った。


「君が本物のカーラだという証拠が、その……」

「ああ、タトゥーのことね」


 カーラはそういうと、大胆な行動に出る。浴衣の帯をほどくと、両手でその浴衣をバッとひろげた。


 ライオットの目が点になる。彼女は素っ裸だ。形の良いバストがライオットの目を釘付けにし、彼の思考を停止させる。

 そんな彼女は、浴衣を脱いでベッドに放ると、後ろを向いた。


 右のお尻に、タトゥーがある。ロッドマンからきいたとおりの形だ。

 彼女は微笑みながらいった。


「これでしょ?」


 前にかがんで、まるで挑発するように、そのタトゥーを右手で下から上になでる。


 これで彼女は、本物のカーラであると証明された。

 だが──このとき、ライオットは自分に異変を感じた。




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