表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スパイラル・チェイス  作者: 左門正利
◆ 進まない任務
12/36

◇ カーラ

 カーラは、がっくりと肩を落とし、仕方ないという感じで自分の連絡先をライオットに渡そうとする。


「このホテルに泊まっています。とても大事なお話ですので、できるだけはやく、お電話ください」


 ライオットはそれを受けとる直前、彼女の背後に鋭く目を光らせる。


「つけられてないよね?」


 カーラは後ろをふり返った。自分の跡をつけてきた人間はいないはずだ。


「大丈夫です」 


 ライオットは彼女に訊きたいことがあった。


「どうして君は日本にいるんだ?」

「休暇です。こういうときでないと、なかなかジムに会えないのです」

「巻物のことは、どこまで知っているの?」

「ほとんど知りません。ただ」


 そこまでいった彼女は、周囲を警戒する。


「ここでは話せません。あとは、わたしが泊まっているホテルの部屋で」

「それほど重要なのか?」

「はい。巻物が本物かどうかも、それでわかります」


 ライオットは一瞬、言葉を失う。


 ──巻物が、本物……って


 考えてもみなかった。なんの違和感もなく、てっきり本物に間違いないと信じていたのだが。


 ──偽物かもしれない?


 ここまで協力的だった彼女たちクノイチが、偽物の巻物を自分に渡すだろうか。まがりなりにも、自分は MI6 の諜報員だ。


 ──ジムは、俺になにを伝えようとしたんだ?


 困惑しているライオットに、カーラは「では、のちほど」といって去って行く。

 ライオットは彼女を呼び止める機を失い、自分から離れゆく彼女の背中を呆然となって見ているのだった。



 ホテルに帰ったライオットは、部屋に盗聴器がないか発見器を使って確認する。

 なにもないとわかると、すぐにロッドマンに連絡する。カーラのことを調べてもらうのだ。


「もしもし、ライオットです」

「なにかあったの?」

「あのあと、カーラという CIA の諜報員が、自分に接触してきましてね。それで彼女のことを調べてほしいのですが」


 電話をつないだまま、ロッドマンがカーラのことを調べる。


「カーラね、確かに CIA に在籍しているわ」

「写真を送れますか。顔が見たい」

「いいけど、あまり意味ないかも」

「どうしてですか?」

「彼女、変装の名人みたいよ」


 ライオットと会ったときの顔が、素顔とは限らない。


「ほかに彼女とわかる特徴は、ないんですか?」

「あるわ。右のお尻に、タトゥーを入れてる。そんなに大きくはないわね」


 ライオットの思考に、急ブレーキがかかる。そのタトゥーを確認するのに服を脱がして、さらに下着まで外さなければならない。

 ライオットは眉を寄せる。女性を口説くのが苦手な自分に、はたしてそこまでできるのか?


 ──まいったな


 ロッドマンの話は続く。


「タトゥーは、アルファベットのCの切れた部分を上にして、それに十字のクロスを重ねた模様ね。角度がちょっと右に傾いてるわ」

「わかりました。ああ、それで彼女は、いまどこに?」

「ちょっと待って」


 CIA のシステムに侵入するのは、難しいどころではないだろう。いったい、どうやってシステムに入り込んでいるのか。


「日本にいるわね。休暇らしいけど」


 カーラは本物である確率が高くなってきた。

 ありがたい情報に、ライオットはロッドマンに尋ねてみる。


「よく、CIA のシステムに侵入できましたね」

「そんなことしないわよ」

「え?」


 別の方法があるというのか? とても信じられない。

 だが、タネを明かせば、なんのことはなかった。


「 CIA の友人に訊いているだけよ」


 ロッドマンは、あっちの方にも顔が広いらしい。ピーターという CIA の職員が、可能なかぎりの情報を提供してくれるのは非常にありがたい。


 彼女に訊くべきことは、もうひとつある。


「クノイチから渡された巻物は、本当に本物でしょうか。偽物であるという疑いは?」

「もし、それが偽物なら、MI6 とクノイチとの信頼関係にかかわるわね」


 確かにそうだ。これは、気にする必要のない問題と思っていいだろう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ