表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スパイラル・チェイス  作者: 左門正利
◆ MI6諜報員ライオット
1/24

◇ 指令

「日本へ行って」


 朝一番に、MI6 の諜報員ライオットは長官室に呼び出された。

 そして、長官の椅子に座る小柄な女性ヘレンに、いきなりそういわれた。


 アジアに派遣されるなら、以前からいろいろな国とゴタゴタしている中国か、あるいはフィリピンだと思っていた。中東は仲間が多く出向いているので、今回はそっちへ行くことはないと予想はしていた。


 しかし


 ──まさか日本とは


 まったく予期せぬヘレンの言葉に、ライオットは仕事のできないサラリーマンのように、棒立ちになる。一八七センチの、でくのぼうだ。

 グレーのスーツがよく似合い、ブロンドの髪にしっかり(くし)を入れて整えた髪型は、どこから見てもサラリーマンだ。


「日本……ですか?」

「そうよ」


 ライオットは、眉をひそめる。


 わが国イギリスが絡んでくるような国際的に平和を脅かす問題が、世界でも治安の良い日本に起こるとは、ちょっと考えられない。

 その日本は、五月のゴールデンウィークにさしかかるところだ。


 ライオットがヘレンに理由をきこうとすると、彼女の方が先に口をひらいた。


「日本で受け取ってほしいものがあるの」


 見当がつかない。


「なんですか、それは?」

「巻物よ」


 ヘレンは、にっこりと微笑んだ。


 ライオットは、巻物というものを見たことがない。ヘレンは、その巻物になにが書かれてあるかまでは、話す気はないらしい。


 仕事柄、あまり知りすぎても困る場合があるのだ。敵に捕まったときなど拷問に耐えられず、あるいは自白剤により情報を漏らしてしまう恐れがある。

 しかし、最初から情報の詳細を知らなければ、どんな拷問を受け、また薬を使ったところで、話しようがない。


 ヘレンはすでに五十歳を過ぎているが、笑顔がとてもチャーミングだ。

 その顔に、三十歳を迎えるライオットは思う。


 ──長官が、あと二十五歳ぐらい若かったらなあ


 若いころは、男たちにかなりモテたにちがいない。いまではブロンドの髪も白髪がまじってきているが、それでも彼女は女としての可愛いらしさを感じさせる。


 ヘレンは、デスクの上に様々なものをならべる。


「まずパスポートね、飛行機のチケット、それから」


 彼女はメガネケースを右手にもって、顔をひきしめてライオットにいった。


「空港のロビーで、テリーから新聞を受け取ってちょうだい。新聞は、このケースに入っているメガネをかけて読んでね。わかった?」


 それがなにを意味するかを理解したライオットは「はい」と答えた。くわしい指示は、空港で渡される新聞に記してあるのだ。

 ただし、特別仕様のメガネでなければ、その文字は見ることができない。


 ライオットは、ヘレンに尋ねる。


「自分の他にも、日本に仲間がいるのですか?」

「あなたより先にジムを送っているわ」


 もう一人いる。


「あと、日本にはロッドマンがいるから、なにかあったらそっちへ連絡して」


 ジムとは面識がある。遊ぶことが大好きな、中年太りの人懐っこい顔をした男だ。

 だが、ロッドマンという同僚は知らない。


 ヘレンは、ライオットにロッドマンの連絡先を渡した。

 ライオットは思う。


 ──どんなヤツなんだろう?


 彼は、とりあえずデスクにある品々をスーツのポケットに突っ込んだ。


 ヘレンが、ライオットを見上げて笑みを浮かべる。


「それじゃあ、飛行機に間に合うように、遅れないでね」

「了解しました」


 ライオットは長官の部屋を出ると、歩きながら思った。


 ──あの笑顔で、やる気を出させるんだよなあ……恐い武器だ


 ライオットから見れば、ヘレン長官の笑顔は無敵である。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ