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消え去る物語  作者: 斉藤
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最後の生


---


## 第三部 **痕跡**


### 最後の生


――名の残らぬ者


彼は、もう特別な立場では生まれなかった。


才能は平均的。

運も、突出してはいない。

宝くじも、奇跡も起きない。


ただ、

なぜか彼の周囲には

人が集まった。


相談というほど深刻ではない話。

愚痴でも、野心でもない曖昧な迷い。


彼は助言しなかった。

答えも出さなかった。


ただ、

「やるなら、最後までやれ」

「倒れても、立つ気があるならいい」


それだけを言った。


彼は金を持っていなかった。

権力も、肩書きもなかった。


だが、

人は彼の前で

嘘をつきにくかった。


何かを始める者は、

なぜか彼に報告に来た。


成功しても、

失敗しても。


彼は祝福もしなかった。

責めもしなかった。


「そうか」と言うだけだった。


年を重ね、

静かに老いた。


死ぬ前日、

彼は自分の人生を振り返った。


大きな達成はない。

英雄譚もない。


だが、

不思議と満ちていた。


死後、

魂は解体されなかった。


昇格も、転生も、

もう必要なかった。


彼は、

世界の「前提」になった。


彼が関わった者たちは、

次の誰かに

同じ態度で接した。


見返りを求めず、

支配もせず、

立ち上がる力を信じる。


それは思想にも、

宗教にもならなかった。


ただの「空気」になった。


後世、

歴史書に彼の名はない。


だが、

ある時代から

不思議な変化が記録される。


・再起する商人が増えた

・失敗が致命傷になりにくくなった

・無名の支援が各地で行われた


理由は、誰にも分からない。


それでよかった。


世界は、

彼を必要としなくなったからだ。


---


### 終章


消滅者は、

自分を選ばなかった。


残存者は、

自分を引き受けた。


そして彼は、

**世界に選ばれない存在**になることで、

世界を変えた。


それが、

最後の役割だった。



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