四回目の生
## 第二部 **残存者**
### 四回目の生
――継承者
四度目、男は店長の子として生まれた。
特別裕福ではないが、
暮らしに困ることもない家庭。
数字と人の流れが、
日常の中に自然にあった。
彼は成長するにつれ、
不思議なほど物事がうまく運んだ。
学業、就職、昇進。
躓きは少なく、
人は彼を「運がいい」と呼んだ。
だが彼自身は、
胸の奥に空洞を感じていた。
満たされない。
理由のない欠落。
(俺は、何かを忘れている)
そう思い続けていた。
ある日、
宝くじに当たった。
一億円。
騒ぎ立てる周囲とは裏腹に、
彼は静かだった。
(また、当たった)
説明のつかない感覚。
初めてではないという確信。
そして、
もう一つの変化が現れた。
人を見ると、分かる。
失敗しても、
何度でも立ち上がる者。
才能だけでなく、
折れない部分を持つ者。
彼は迷わなかった。
金は、手段だった。
返済を求めない。
配当も取らない。
だが、形だけは「投資」にした。
それは、
与える側と受け取る側が
対等であるためだった。
全額投資。
すべて寄付。
成功する者もいた。
消える者もいた。
だが、
立ち上がる者は、必ず次へ進んだ。
彼は干渉しなかった。
支配もしなかった。
ただ、
「信じて任せる」ことを選んだ。
家庭を持った。
伴侶は、
彼の静かな優しさを理解し、
問い詰めることはなかった。
子どもたちは、
安心して失敗できる場所で育った。
彼は、
ようやく思った。
(ああ、これでいい)
死の間際、
心の穴は消えていた。
埋めたのは、
金でも称賛でもない。
**誰かが立ち上がる瞬間を、
信じて待った時間**だった。
死後、
彼の魂は
もはや「残存」という言葉では
呼ばれなかった。




