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消え去る物語  作者: 斉藤
3/8

二回目の生


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## 第二部 **残存者**


### 二回目の生


――武士


次の生で、男は武士として生まれた。


名家ではない。

だが貧しくもない。

主君に仕え、禄を受け、

刀を帯びるだけの立場。


彼は目立たなかった。


忠義に燃えることもなく、

私欲に溺れることもなく、

戦では前に出ず、

逃げるほど臆病でもなかった。


与えられた務めを果たし、

規則を破らず、

空気を読み、

問題を起こさなかった。


誰かが出世すれば、祝った。

誰かが失脚すれば、距離を取った。


内心では、こう思っていた。


(深く関わらなければ、痛い目は見ない)


正義を語らず、

悪を糾さず、

沈黙を選んだ。


家族を持ち、

子を育て、

静かな日々を重ねた。


彼は人を傷つけなかった。

だが、救いもしなかった。


戦が起きた年、

彼は命令通りに動いた。


敵を斬ったが、

恨みはなかった。

守ったが、誇りもなかった。


すべては「役目」だった。


老い、床に伏したとき、

彼は自分の人生を振り返った。


後悔は、なかった。

達成感も、なかった。


ただ、こう思った。


「波風は立てなかった」

「悪くはなかったはずだ」


死後、

魂は消えなかった。


だが、

軽くもならなかった。


裁きは下らず、

称賛もなかった。


彼は「普通」のまま、

次へ送られた。



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