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消え去る物語  作者: 斉藤
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第二部 **残存者**


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## 第二部 **残存者**


### 一回目の生


――坊主


男は寺に生まれた。

正確には「預けられた」。


幼いころから経文を覚え、

礼儀を叩き込まれ、

人前では穏やかに笑うことを教えられた。


だが彼は、信じてはいなかった。


信仰も、悟りも、救いも。

それらは「使える道具」だと理解した。


彼は着飾った。

衣は清らかに、

言葉は柔らかく、

説法は耳障りがよかった。


金は集まり、

信者は増え、

同じ寺の僧たちは陰で囁いた。


「詐欺坊主だ」

「成り金坊主だ」


だが表立っては誰も責めなかった。

彼の説法は“効いた”からだ。


夜になると、

彼は寺を抜け出した。


女を抱き、

酒を飲み、

欲を否定せずに満たした。


罪悪感はなかった。

彼はこう考えていた。


「坊主だろうが、人間だ」

「表と裏を使い分けられるのが賢さだ」


信者が救われたと泣けば、

彼は静かに頷いた。


(救われた“気”になっただけだ)


そう思いながら。


---


彼は長く生きた。

破滅はしなかった。

告発もされなかった。


老いて、床に伏した夜、

弟子が言った。


「師よ、あなたは立派でした」


男は笑った。

少しだけ、正直に。


「そう見えただけだ」


死後、

魂は消えなかった。


評価も、断罪も、

まだ下されなかった。


なぜなら彼は――

**自分が欺いていることを、知っていたから**。


言い訳もしなかった。

他人のせいにも、しなかった。


ただ、

「自分はこういう者だ」と

理解したまま死んだ。


だから彼は、

まだ次へ送られた。



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