幼馴染パーティを追放されたが、幼馴染と二人組を組まされた。
「じゃ、ライト。あなた私のパーティから追放ね」
事も無げにそう告げたのは、ライトの幼馴染のミル。
その横には、ニヤニヤとした意地の悪い笑みを浮かべるシェドがいた。
ふと通りがかった瞬間にそう告げられたライトは、訳も分からず「え……」と呟く。
「な、なんで……」
「当然じゃない?別にいなくても問題ないし、なんならシェドがライトより頑張ってくれるって言ってるしね」
「……」
そう淡々と告げられたライトは、無表情のまま、その場を立ち去る。
それに愉悦の笑みを浮かべたのがシェドであった。
周りのクラスメイト達も、「やっとか」「これでミルさんも本領発揮できるな」と笑っている。
(これで邪魔者はいなくなった!ミルは俺のものだ!)
ミルとライトは二人でパーティを組んでいたが、成績ではミルが圧倒的。
明らかにおんぶにだっこなライトに対して、クラスメイト達はあまりいい顔をしていなかった。
それがこの騒ぎに乗じてのパーティ解消。
加えての成績優秀者どうしのパーティ結成と来たら、喜ばしい事態でしかないだろう。
(いずれはミルとトップを狙い、そのままゴールイン。へへ、簡単なことだな……)
シェドはそうほくそ笑み、いつかの未来を夢見ていた。
その日の午後。
「じゃ、そうだな……ミルとライト。お前らで潜れ」
「はぁ!?」「えっ!」
担任から告げられたのは、新ダンジョンの探索。
今後の授業等にも活用していく予定であったダンジョンのテスターとして、二人は指名されてしまった。
それにはクラス中がざわつく。
「ライトと私はパーティ解散したんです!なんで二人で潜らないといけないんですか!!」
「お前ら、最優秀パーティだろ。それに、まだ解散手続きは取られてない」
「放課後にする予定だったんです!」
そう返すミルだったが、担任は全く聞き入れる気配がない。
「それでも今はお前ら二人がパーティだろう。さっさと準備しろ」
「それじゃ、先生!俺が!俺がライトの代わりにもぐります!」
「はぁ?なんでだ?」
担任がシェドの方を見ると、シェドは少しぎょっとしながらも説明する。
「俺がミルの新しいパーティメンバーだからです!だったら俺が適任でしょう?」
「だめに決まってるだろう?連携は?役割分担は?一朝一夕にできる事じゃない。今回は慣れたパーティでやってもらう方が確実に良い」
「ぐっ……」
先生に反論され、言葉を失うシェド。
クラスメイト達も、流石に何も言えないようだった。
その様子を見て、ため息をつくミル。
「しょうがないわ。あんたとは今日限りだからね、ライト」
ライトはこくりと頷くと、二人とも教室から出て行った。
担任はそれを見届けると、PCを用意して何やら作業を開始する。
いくつかの作業を終え、PCをテレビに接続すると、そこにはダンジョンの入り口が映し出されていた。
生徒たちは、不思議そうに画面を見る。
「先生、これは?」
「これは、ドローンカメラだ。近年、ダンジョンにおける指導方針において、こういったカメラで撮影し、教師が直接指導できるような状態ではなくとも、後からこういった映像を通して指導をしよう、という試みがあってだな」
「それでドローンを?」
「そうだ。最近はダンジョン探索の情報技術も発展してきていてだな、こういったドローンを安くで導入できるようになった、という訳だ」
そう担任が説明していると、ダンジョンの中に二人の人影が入ってくる。
ミルとライトだ。
「じゃあ、足引っ張んじゃないわよ!」
そうにらみつけるミル。
クラスメイトもそう思いながらテレビを見ていると、いつも無口でおとなしいライトが口を開いた。
「お前こそ、馬鹿みたいに突っ込むなよ!」
普段見ている人物からはでてこないような発言に、クラスは一気にしん、と静かになる。
「え、あれ、ライトだよな」
「入れ替わった?」
「二重人格か?」
そう少しクラスがざわめくと、もっとヤバい発言が飛び出る。
「それで今日はどうする?100層までどっちが早いか競争すっか?」
「……いいわね、望むところよ今日は私が勝つわ」
「なめんな2067戦1247敗が」
「あら、パワータイプの私に800回も負けてるあなたが弱いんじゃないの?」
「……よーいどん!」
「あっずるっ!!」
そう言った瞬間に二人の姿は掻き消える。
一瞬の出来事に、クラスメイト達は口を閉ざせず、担任もすぐにドローンを動かし始めた。
「くっそ、あいつら、とんでもないスピード出しやがって!……いや、もう追いかけるのは諦めて、100層で待つか」
そう言いながら担任はその場で呪文を唱え始める。
呪文を唱え終わり、「転移!」と叫ぶと、ドローンのカメラは先ほどの明るい入り口から一気に真っ暗な洞窟へと移動した。
「このドローン、試用品の一機目だからギリ100層のモンスターでも行けるはずだが……?」
一応モンスターに見つからないようにドローンを移動させつつ、待機する。
「しかし、あいつら、100層を突破しているとは……」
「俺ら、まだ20層で精一杯なのに……」
「確か、トップクランの人たちで200層だっけ?」
シェドは先ほど見た二人のでたらめさに唇を噛む。
自分ですら、パーティメンバーと一緒に50層程度が限界である。
それなのに、競争、と称して実質ソロで100をもぐろうとしているのだ。
「先生、流石に二人の冗談でしょう?多分10層も行ったら二人ともバテて……。見栄張ってるだけですって、カメラの前で」
シェドがそう言うと、クラス中にもそんな雰囲気が蔓延する。
「流石に100層はね……」
「ミルさん、あんな人だったんだ」
「ねー……」
そんなクラスの雰囲気を真っ向から否定する形で担任は首を振った。
「……それはないだろう」
「どうしてですか?だって100層は無理——」
「——二人にはカメラの存在を伝えていない」
「……え?」
担任の発言にクラス中がしんと静まり返る。
「最初は自然体で撮影するために、内密にカメラを回している。最初からすべて伝えて、テストにならなかったら問題だからな」
「それじゃ……」
「確実に二人は100までくるだろうな……っ!」
担任が突然画面に注目すると、そこに人影が映る。
クラス中がざわッとして画面を見ると、そこにはライトの姿があった。
ライトは軽い表情でそこらの石に座ると、徐に本を読み始めた。
「まじかよ、あいつ、ミルさんに勝ってるぞ……」
「成績悪いんじゃなかったのかよ……?」
そう言っていると、次にミルが部屋に飛び込んできた。
「負けたっ……!!」
「はい、どんな気持ちー?いらないって言った人に負ける気持ちー!」
「チッ!!」
ライトがミルを揶揄している。普段、絶対に見ない光景。
「じゃ、行こうか。……新ダンジョンとはいえ、あまり歯ごたえないね」
「まぁ、授業用にはいいんじゃないかしら」
「ま、そうだね」
そこから先も蹂躙、という言葉が似合うほどの無双が待っていた。
目の前にモンスターが現れれば、即座にライトかミル、どっちかの一撃によってモンスターはすぐに消し飛ぶ。
罠も、発動した直後に対処され、日の目を浴びることは無い。
100層というのは、一種の到達点である。
ここを事も無げに突破するような奴ら等、世界に100人もいないだろう。
二人はまるで散歩をするように層を踏破していき、とうとう120層に到達した。
「授業時間との兼ね合いなら、ここが限界かな……」
「そうね、ここのボスで終わりにしましょう」
そう言って、まるでボスを討伐することが決まり切っているかのような風貌で扉を開ける。
「おいおい、120層には……」
そう担任がつぶやくと、扉の先に、超巨体の手足が垣間見える。
クラスメイトは、全く想像もつかない扉の先を、固唾を飲んで見守る。
扉を開いた先、そこには真っ白な体にびっしりと生えた鱗。
その足の爪は、人はおろかこの学園でさえも豆腐のように切り裂き、
その眼つきは、見たものすべてに死を覚悟させ、
その体躯は、一瞬にしてクラスメイト達に絶対的な差を思い知らせた。
「竜……」
担任も冷や汗を流しながら画面を見つめる。
「エンシェントドラゴン……まごうことなき厄災だ……」
しかし、画面の中の二人はそんな相手を前にあくびをする余裕すらあるようだ。
「あいつ、硬そうね……」
「……俺の火力じゃめんどうだな」
「じゃ、いつものでいきましょう?どーせここのモンスター、倒しても何も残さないんだし」
「賛成」
そう言うと、ライトが消える。
エンシェントドラゴンは、消えた一人を気にすることなく、じっとミルを睨みつけている。
「あら?ライトを気にしないの?……じゃ、もう終わりね、あなた」
ミルがそう言うと、エンシェントドラゴンは自分が馬鹿にされたことに気づいたのか、その巨大な爪を振り上げ、ミルに叩きつけようとする。
しかし、エンシェントドラゴンの足は振り上げた姿勢のまま、微動だにしない。
「……!?」
すると、即座にもう一方の前足も何かに引っ張り上げられるように固定され、エンシェントドラゴンは、鱗のない腹部をさらすこととなった。
「まぁ、120層なんてこんなものよね」
ミルがそう言うと、自身の持っていた剣が爆炎を纏い始める。
爆炎は次第に大きくなっていき、やがてダンジョンの天井に届く規模のものとなっていく。
「なぁ、あれって……」
「ミルさんの炎魔法だよ、でもあんなに長い溜め……」
「あんなの格好の的だよ、でも、ドラゴンは動けない……?」
ミルはにやりと笑う。
途端に炎は剣に集約していき、真っ白な剣へと姿を変える。
「ま、これぐらいで十分でしょう。『エンゲージボルケーノ』」
真っ白な剣を構え、ミルは竜へと切りかかる。
竜はその絶望を前に必死に何かをしようと抵抗しているが、その体は全く動く気配を見せない。
やがて、竜の腹部に剣がまるでメスのようにさっくりとささる。
「——ふんっ!!」
そのままミルは上から下に剣を振り下ろし、エンシェントドラゴンを真っ二つにしてしまった。
エンシェントドラゴンはその傷口から爆発のごとく火が付き、そのまま燃え尽きてしまう。
すると、そこに姿の見えなかったライトが姿を現す。
「……相変わらずすっげぇ威力だな、それ」
「あんたもあれを微動だにさせない拘束術、どうなってんのよ」
「ま、俺一人でもやれたがな」
「私だって楽勝よ」
クラスメイト達はその映像をただひたすらに無言で見続けていた。
担任は、「なるほどな……」と呟く。
クラスメイトは先生のそのつぶやきに反応した。
「何がなるほどなんです?先生」
「あいつらの成績についてだ」
「え……?」
「やけにライトの点数が低いのが気になっていてな。今回その訳がやっと分かったという訳だ」
そういう先生に生徒たちは首を傾げる。
「まぁ、ちょうどいい機会だ。どうせ今度のテストから評価基準変わるから教えとくぞ。いままでのダンジョン試験ではどうやって成績を付けていたと思う?」
「……ダンジョンでの貢献度ですよね?」
「そうだ。お前達にはそう教えていたよな。じゃあ、貢献度はどこで計算していると思う?」
「それは、ダンジョン全体でどう動いたか……」
「残念、不正解だ。正解はな、『最後に戦ったボスにどれくらいのダメージを与えたか』だ」
「え?」
クラスが水を打ったように静かになる。
「いいか、ダンジョン試験の採点はその性質上、今までは機械的な尺度に頼るしかなかった。ずっとダンジョンでの活動を監視し、点数をつけることが難しいからな。その機械的な処理は『ダンジョンで最後に戦ったボス』にたいして行われる。そこまでの道中を踏破できた、ということだからな」
「もちろん、探索の専門家やヒーラーなんかには別の成績基準が与えられてたりもするが、基本的には与えたダメージで点数がつけられる。それが見てみろ、ライトのやつを」
「かなり特殊な魔法の使い方をしているな……しかも拘束技と来たもんだ。これじゃ、下手したらこのボスにダメージを与えてすらいないかもしれん」
それを聞いたクラスメイト達が、ごくりと唾をのんで担任に聞く。
「それじゃ、今までのライトの成績は……?」
「まぁ、確実に本来の実力よりもかなり下のラインで計算されてただろうな、まぁ、今後こういった形での試験になっていけば、間違いなく成績は上がるだろうな」
クラス全員が戦慄する中、探索を終えた二人が教室に戻ってきた。
「先生、終わったわよ」
「……終わりました」
その声に、全員がぐっと背筋が伸びた。
いままで行ってきた仕打ちが頭をよぎる。
「あーもう、今日は授業終わりだ。ご苦労さん。帰って良いぞ」
「え!じゃあ、シェド、一緒にパーティ申請……」
「すいませんでしたっす!兄貴!」
シェドはミルの横をスッと通り過ぎて、ライトの前で土下座をする。
あまりの素早さに、その場にいた全員がぎょっとしている。
ライトも、突然の土下座に目を白黒させている。
「今までの所業、申し訳ございませんでした!!どうか許してください!!」
「いや、……気にしてないって言うか……」
「靴舐めましょうか!?靴!」
「だ、大丈夫……」
そんな風に変貌してしまったシェドに戸惑うばかりの二人だが、それだけでは済まなかった。
「ライト君ってすっごく強いんだよね?」
「え、あ、いや……」
「ミルさんともパーティ解消しちゃうし、うちのパーティに入らない?」
「いや、ライト君はうちのパーティに入るの!」
「いやいや、私たちのパーティの方が……!」
突然女子たちに囲まれ、ハーレムのようなものを形成するライト。
戸惑ってはいるものの、ちょっとその気になっている。
ライトはミルに視線を送り、「どうだ!」と言わんばかりの表情を浮かべている。
ミルはカチンと来たものの、「ま、私もモテモテだし?」と男子たちに視線を送る。
先ほどまでの無双状態を見せられ、あんなのについていったら命がない、と確信した男たちはそっと目をそらす。
今までのちやほや具合とはうってかわっての塩対応。
ミルは訳も分からず叫んだ。
「なんでよーーーー!!!」
ちなみにライトは極度の人見知りです。
普通に話せるのは幼馴染のミルとだけ。
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