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転生したら欲しがり妹だった~王国一の欲しがり妹の異名を持つ幼女になってしまった件

作者: 山田 勝

「今だけ。特別にウェンリー家の皆様にお話をお持ちしました!必ず儲かります」


 王都から紹介状をもらって訪ねて来た小太りのおっさん。ポーリー卿が当家の食事会で力説している。

 何でも必ず値が上がる商品を知っているそうだ。投資しないか?と言う事だ。

 さすがに、お父様とお母様は首を縦に振らない。中堅の伯爵家で領地経営に専念する家柄だ。


 しかし、この男、胡散臭そうだが、数々の家が金を出しているそうだ。

 何かあるはずだ。



「ほお、可愛いお嬢様たちですね。さすがウェンリー家の美人姉妹です。名は王都の社交界で轟いておりますぞ」


「え、そんな王都の社交界で有名なのですか?」

「まあ、田舎の伯爵家なのに・・・」


「王都の貴公子の間で有名ですよ。そうだ。お嬢さんたちに金貨をあげよう。これでドレスを買いなさい。投資で成功をすればお嬢様にドレスを買い放題ですよ」



 ・・・これか、褒めて欲しいところを褒める。ベタだな。そして、子供に金貨をあげて財力を示すのか。

 お金の前では人は本性が出る。子供ならなおさらだ。

 子供に金貨の小袋、突然の事に両親は固まっている。


 お姉様は、「いえ、これは、頂けませんわ」と両親をチラチラ見る。


 だから、私は。


 プィ!と明後日の方向を見て。


「また、金貨なの~」


 とぼやいた。


 すると、ポーリー卿の顔は・・・動揺しているな。



「これ、メアリー、失礼ですよ!」

「客人も子供に金貨は少々不躾ではないですか?今日のところはお帰り下さい」



 それから、私は領地内の商会に行き。黄銅鉱を買った。お小遣いで買える範囲だ。


「え、これは二束三文だぜ」

「くだしゃいなの~」

 拳ぐらいの大きさの物を3個ほど手に入れて、しばらく、庭でお手玉をした。

 愚者の金と呼ばれるもので、金にそっくりだ。


 愛猫のニケちゃんも猫パンチをしてくれる。良い具合におはじきになっているな。


「ミャ!ミャ!」

「ニケちゃんお上手なの~」



 それを数週間やっていたら、また、ポーリー卿がやってきて、門の前でピタと止って凝視している。


「お、お嬢さん。それは、珍しいオモチャだね」

「珍しくないの~、山の中にゴロゴロ転がっていたの~」


 これは嘘ではない。我が領地からごくわずかな銅が採れるのだ。




 それから、ポーリー卿は我家を超大金持ちと錯覚して、逆に我が領地に投資を持ちかけた。


「伯爵!鉱山開発させて下さい!」

「え、銅しか出ませんよ・・・・」

「いいから、費用は全部出します。儲けは折半で!」


 本当の儲け話は誰にも話さないものだ。ポーリー卿は今まで貯めた金を放出して、一時期、我が領地は潤った。


 鉱山開発の道まで作りインフラを整備して領地の人を雇った。


 しかし、当然の結果、何も起きなかった。

 ただ、鉱泉が見つかり。温泉街が一つ出来ただけだ。



 これでポーリー卿は破産した。

 さすがにやりすぎたか?


 ポーリー卿は、妖しい幼女に騙されて言われるままに金を出した。

 魔性の欲しがり妹メアリーとして王都の社交界に名が広まり。

 王女殿下の耳にまで入ってしまったのだ。


 王女殿下から招待状が届き家族で王都まで行った。




 ☆☆☆王宮



「そなた。欲しがりをしてみせよ」


 呼ばれた用は、私を欲しがり妹として見物をするためだ。

 王城のロビーに呼ばれた。



 ククククッと王女殿下のご学友達は口を扇で隠して笑いをこらえている。

 欲しい物?この世界にはないな。

 ドレスも何かカーテンの生地みたいで嫌だな。



 だから、言ってみた。


「麦が欲しいの~!麦畑の中で一本だけ飛び出た麦が欲しいの~」


「「「「プゥ~クスクスクスクス~~」」」



「まあ、詐欺師を返り討ちにした知恵者幼女と評判でもあったが、噂とはこのようなものじゃ。実態は田舎貴族の令嬢でしてよ。用意してあげなさい」


「はい、王女殿下、分かりました」




 これで、私はお役ごめんになった。

 お父様とお母様、お姉様と王都観光をして領地に帰った。



 そしたら、すぐに、王国騎士団が全国の麦畑を探すようになった。

 農民達にも聞き込み調査が行われたが芳しくない。


「いや、一本麦は、昔話レベルの話ですね。畑の中から一本だけ飛び出た麦は大事に育てろと爺さんにいわれたが・・・100年は現れていません」

「ええ、新しい麦との言い伝えです。凶作や台風の時に現れるとの噂です」


 それでも何とか、取り寄せたらしい。本当はなくて外国から取り寄せたらしいがそれで良い。目的は別種の麦だ。


 王都に呼ばれて謁見をした。



「北方の麦ですわ!この第一王女クラウディアの実力を思い知って?!」



「ウエ~ン、思い知りまくったの~、メアリーの完敗なの~」

「なら、王国一の知恵のある令嬢は?」

「クラウディア王女殿下なの~」

「宜しいですわ。身の程をわきまえなさい」

「はいなの~」



 麦をもらって、ホクホク顔で帰ろうとしたら、まだ、言う。



「メアリーよ。満足をしたか?その麦で何をする?」



「満足なの~、これで領地の麦と交配させて良い麦を作るの~!」



「次はお金でなんとかなる物を欲しがることね。何が欲しい?殊勝な心がけに免じて物を贈りましてよ!」


 何だ。おねだりの催促か?


 なら、

「なの~、馬鹿には見えない動物が欲しいの~」


「ほお、分かった。御用商人に取り寄せさせよう」




 これは簡単に手に入ったらしい。


 王宮の一室に空の檻がある。妖しげな褐色の商人から買ったらしい。



「どうです?メアリー、見えまして?!」

「見えないの~!」



 すると、王女殿下は高笑いを始めた。


「オ~ホホホホホホ、この動物は馬鹿には見えない加護がついているとのことよ。これで私の勝ちだわ!」


「参りましたの~!見えなから飼えないので王女殿下にお願いするの~」


 そうだ。それで良い。これでメアリーに関心は持たれないだろう。

 私はすぐに帰り。麦の交配を農民に依頼した。良い麦が出来たらめっけものだ。





 ☆☆☆王女視点



 フ、やっと、メアリーをギャフンと言わせたわ。もしかして、才女かもしれないとの噂が立ちましてよ。

 王国一の才女は私なのに・・・


 でも馬鹿では見えない動物はかなりお高くなりましてよ。


 私こそ、王国一の知恵者令嬢だわ。


「この子にご飯をあげなさい」

「王女殿下、見えません・・・・」

「まあ、そうね。馬鹿には見えませんものね」


 そして、学友にも見せたら、ほとんどが見えると言う。

 使用人の中にも見えると言う者が多数いる。世話は何とかなったわ。



 誇らしい気持でいたら、公爵令嬢ソシリア様が妙なことを言う。


「見えませんわ」

「そんなはずはございませんわ」


 彼女は私の唯一の友達よ・・・おかしいわ。


 学友の末端の伯爵令嬢に聞いても「見えません」という。


 あげくの果てには、


「姉上・・・僕には見えません」


「クラウディアよ。余にも見えないぞ」

「そうよ。クラウ、騙されたのではなくて?」



 ガーン!


 大好きな家族も見えないだなんて・・・

 実は私は見えていなかった。



 まさか・・・


「うむ。見えると言った者はクラウディアに対して誠実ではない者だ。付き合いを止めた方が良いかもな」



 勝負になっていなかったわ。欲しがり妹メアリー、何て幼女、私は・・・・



 メアリーの領地に訪れた。



 ☆☆☆ウェンリー家




「負けたわ。貴方は王国一の欲しがり妹だわ。貴方は私の心を欲しがっていたのね」


「なんなの~!違うの~!」


 王女殿下が我が屋敷に来て何か感動している。


「私の学友になることを許しましてよ」

「メアリーは6しゃいなの~!」


 何か変なお姉さんだが憎めないな・・・・



「この第一王女クラウディアが許可しますわ。『王国一の欲しがり妹』の称号をあげましてよ」


「いるか~なの~!帰るの~!」


「メアリー、王女殿下に失礼ですよ」


全く、変な称号の付与にさすがに怒った。私は転生者だった。二度目はスローライフで余生を送りたい。


とにかく、温泉まんじゅうをお土産に持たせて帰ってもらった。



・・・この王女殿下が持ち帰ったメアリー発案の温泉まんじゅうが王都で流行し領地が栄えるようになる。メアリーの意に反して王国中で目立つことになるのはまた別の話だ。








最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
対抗心の強い王女、それでもちゃんとした「見えない」といってくれる友人がいたんですね。 麦に関して、今後ありがたく思える展開が発生するのかな? 変な称号はいらないけど、一生ついて回りそう。
温泉まんじゅう草 伏線?回収w
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