第2話 飛鳥学園でビッグカップル誕生?
《次の日の朝 登校中》
「おはよう。桐生君。今日もカッコいいね」
「ああ、おはよう。小鳥遊さん。今日も君は美しいね」
「あ、ありがとう……嬉しいな。エヘヘ」
天使か? 天使が朝から満面の笑顔で俺に微笑んでいるのか?
いや。落ち着け俺、この娘は小鳥遊 柊さん。
昨日、俺が間違って告白して──付き合う事になった彼女さんだ。
……どうしてこうなった?
「それじゃあ。学園まで一緒に行こうか? でも嬉しいなぁ。桐生君みたいな。カッコいい人とお付き合い出来るなんて」
「俺がカッコいい? 小鳥遊さんは人を褒めるのが上手いね」
「上手い? 何で?」
「いや、俺はね。毎日の様に馬鹿だのアホだのヘタレだの言ってくる幼馴染みがいてさ。自分に自信が……ガゴァ?!」
「おはよう! 士郎~って! 今日も朝からしけたお顔をして下りますね~、私の不出来の幼馴染み様は……って? 何でひーちゃんとアンタが、朝から一緒に入るのよ?」
「な、凪。お前、朝から俺の脇腹にカバンをおもいっきり打ち込むなよな」
艶やかな赤みががかった髪色に、活発そうな猫目と整った幼げな顔が印象的な美少女。朝比奈 凪が、地面にうずくまる俺を見下ろしていた。
「何、言ってんのこれ位。打たれ強いアンタには…てっ! だから何で私の小学校からの親友のひーちゃんと釣り合わないアンタが一緒に居るのよ?」
コイツ。俺を密かに釣り合わないとか言ってデイスりやがったな。
昼休みの食堂でお前のランチに七味を大量に投入してやるから覚えてろよ。凪~!
「何よ。その反抗的な目は……お仕置きするわよ?」
「ひぃー! や、止めろ! こんな場所でぇ!」
凪は自身のカバンの中から硬い何かを取り出そうとしたが、俺の悲鳴を上げて、それを静かにしまった。
「ナギ。あんまり私の彼氏を苛めないでくれるかしら? 流石の私でも怒るわよ」
小鳥遊さんはそう言うと俺の右腕を掴み。抱き付いて来た。
「……はい? 士郎がひーちゃんの彼氏? 意味が分からないんだけど」
「紛れもない事実よ。私、桐生に昨日の放課後。熱烈な告白を受けたの」
「は? 熱烈な告白? このヘタレの士郎が?」
ヘタレ言うな。とっ、心の中でツッコミ。
「ええ、あの告白には魂。凄く熱意が込められていたわ。凄く」
ああ、それは俺が大好きな凪に伝えた筈だっただが。何故にこうなった? まさか夏の奴。連絡する相手を間違えたりしたんじゃないだろうな?
▽
《昨日の夜、夏希の家》
「……あっ! しまった。体育館裏に来るインサタ。凪ちゃんじゃなくて、柊に送ちゃってた? 不味い。もしかしてこのやり取りって」
カチッ……!
「してくれぇ!」
「……士郎が、間違って柊に告白してた場面だったって事? ヤバい。士郎に明日、屠られるうぅぅ……でも。もしあの士郎と柊が本当に付き合う事なったとしたら。ビッグカップル誕生?」
▽
「まさかな……いや、あのアホの娘。夏なら、やりかねないな」
「ど、どど。どういう事よ。士郎! アンタみたいなイケメン……じゃなくて。フツメンが、こんな可愛いヒーちゃんと付き合うなんてええ!」
「いや、どうもこうも。本当は俺は凪にだな……おっと!」
俺が昨日の放課後の事を凪に説明しようとした瞬間。小鳥遊さんにおもいっきり抱き付かれた。
「フ、フ、フー。もう。遅いのよ。ナーちゃん。桐生君はもう。私の彼氏なの。それに私はあれだけ、さっさと告白ちゃいなさいって言ってたのよ。N・T・Rされる前にね 」
この娘。朝から何、とんでもない事をさらっと言ってんだ? 同人かなんかの見すぎだろう。
「ね、ねえ、あれ……桐生様と柊先輩じゃない?」
「嘘? 抱き合ってる。熱々ー!」
「は? 飛鳥学園のマドンナ。小鳥遊さんが……桐生 士郎とぉ?!」
「う、嘘だろう?」
学校への登校時間が近づくに連れて、飛鳥学園の生徒達が増える=俺と小鳥遊さんとのこの光景&関係も、黄色い電気ネズミの電光石火の様に、学園中に素早く広まって行く。
「ま、不味い。小鳥遊さん。ちょっとここでこれ以上、抱き合うのは不味いって!」
「……あら。そう? じゃあ続きは放課後ね」
「ほ、放課後? 何をする気だ!」
「フフフ、何をしましょうか? ねえ? ナーちゃん」
小鳥遊さんは凪に挑発する様な言い方で、語りかけた。
「し……」
「し? 何だ? 大丈夫か? 凪」
「知らないわよ! このイケメン鈍感幼馴染みがぁ!!」
「ガハァ?!」
凪は俺の腹部にカバンをフルスイングすると。半泣きになりながら学園の方へと走って行った。
「ニヒッ! 今日は私の勝ちね。 ナーちゃん」
そして、小鳥遊さんはというと、何故か去って行く凪を見て不適な笑っていた。