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第18話 夏希と夕姫パイセン

《2週間前 カラオケ店 雷雷ライライ


 ……私、七星ななせ夏希なつき柊柊ひいひいや凪凪の親友。今日はマスドの時にあの2人が喧嘩した仲直り会とかで。私、柊柊、凪凪の3人でカラオケに来ているんだけど。


 ……あの2人また仲良く喧嘩し始めた。本当に昔から、親友同士で仲は良いのに喧嘩する。


「2週間! 2週間だけ。士郎を独占してあげるよ。ひーちゃん」

「ふ、ふーん。す、凄い自身だね。なーちゃん。でもいいの? 桐生君は私に告白して来てくれたんだよ。なーちゃんじゃなくて。わ・た・し・に・ねぇぇ──って何で私の頬っぺたを引っ張るの? なーちゃん!」

「それは告白する相手を間違えたからって士郎本人が言ってたでしょう! だから士郎はひーちゃんじゃなくて別の娘が好きでぇぇ──って何で私の頬っぺたも引っ張るの? ひーちゃん!」


 ……店内に木霊こだまする。2人の声に、私の隣に立つ店員さんが顔に青筋を立てている。


「おい。夏希。ひいらぎと凪はうちのバイト先で何、騒いでの? 他の御客様の迷惑なんだけどよう」

「……おお! 両者譲らず。柊柊ひいひいも凪凪も仲良いい~、流石の親友同士。そして、夕姫ゆうきパイセン。すまぬ」

「いや。私、アンタ等の小学校からの同級生なのだがな。何? アイツ等。桐生の取り合いしてんの? アホだね~、あんなレベルの奴彼氏にしたら大変なのにさ~」

「……うん。柊柊ひいひいも凪凪もどっちも真剣。」

「真剣ねえ~、桐生は難しいと思うけどね。色々……」


 ……何それ? 何でどこかふくみがある様に言うの? 夕姫ゆうきパイセンは。


「……ん? 何で?」

「だーかーらーねー!」

「いや、だってアイツ。スペックが…ん?」


 ……夕姫ゆうきパイセンは凪凪の叫び声を聞いて、凪凪へと照準を見定みさだめる。


「ひーちゃんがもっと大胆に攻めないから士郎が落ちないじゃないのかな? その羨ましい身体付きでさ!」

「なーちゃんがそんなに攻めるから士郎君に可愛い女の子耐性がついちゃったんじゃないの? なーちゃんが可愛い過ぎて!」


「何でアイツ等。ケンカしながら相手をベタ褒めしてるだ? 夏希」

「……うん。2人は昔から仲良しでライバルだから」

「あー、塾でも競いあってるもんねー、納得だわ…うん? 凪の様子が」


 ……凪凪の大声量が店内に響き渡って、遂に夕姫ゆうきパイセンの怒髪天が頂点に達して。


「だから! 2週間の執行猶予を上げる。それで士郎を落とせなかったら。今度は私のターンだから。今度は私が士郎と甘々で幸せな学園生活をレッツエンジョ……ギニャアアア!」

バコンッ!

「なーちゃん。しっかりしてえぇ! なーちゃんの頭に誰がチョップをしたの?……あっ!痛くない?」

「私だ。アホの娘ツインズ」

夕姫ゆうきちゃん?」


 ……流石、パイセン。貧弱貧弱な柊柊ひいひいには優しくチョップするだけだった。


「お前ら。私のバイト先でテンション上がり過ぎだぞ。勝負の約束もしたんならさっさと部屋を選んで、歌て来いや」

「……それは無理かも。凪凪の前後の記憶多分、脳天チョップされて吹っ飛んだ」

「え? 記憶が吹っ飛んだって何で?」「は? 何が吹っ飛んだって?」

「……柊柊ひいひい凪凪なぎなぎの2週間後の勝負の約束の記憶が吹き飛んだ」

「「……はい?」」



《2週間後 飛鳥学園》


 ……あれから早くも2週間たった。今は午後の男女別のクラス合同での体育の授業中。


 私、柊柊ひいひい夕姫ゆうきパイセンの3人でチームを組んで授業を受けている。


「そんで2週間前の約束があっという間に過ぎたと?」

「うん……」

「2週間も人前もはばからず。あれだけアプローチしたのに、桐生は素っ気なくなり始めたと?」

「うん……」

「ひー、それ脈無しだわ。諦めな。諦めて……桐生は凪に明け渡し…おい! 私の乳にいきなり顔をうずめるな。狂ったか?」

「狂ってないもん! それにまだ今日の放課後が残ってるもん。正気だもん!! 助けてよ。夕姫ゆうきちゃーん!」


 ……柊柊ひいひい夕姫ゆうきパイセンの大きな胸に、ダイブして抱き付いて顔をスリスリし始めた。


「助けるっていっても。私は部外者だろうに。それに凪側には、アスナと竜胆がサポートに付いてて、アンタには…」

「……キュピーン。恋のキューピットナッちゃんが付いております!」

「……………あー、終ったわ。アンタは負けるわ。柊」

「でしょう? 私、凄い不利でしょう。だから力を貸してよ。夕姫ゆうきちゃ~ん」

「確かに夏希じゃあ、人のやり取りの撮影しか頭にないから。そうなるか」

「うん。ナッちゃんは人の盗撮…撮影が趣味だから仕方ないけど。それ以外はいつもは助けてくれるけど。今日は駄目。夕姫ゆうきパイセンのお力も必要なの~」

夕姫ゆうきパイセン言うなつうの…」


 ……あれ? 私の評価、底辺過ぎないですか? 2人共。


「……ムカッ! なら今日の柊柊ひいひいと士郎の放課後デート。ちゃんと付いていってサポートとしてあげる2人が良い感じに出来るようにね」

「ナッ、ナッちゃん! 流石、私の1番の理解者で親友だね。ありがとう~」

「……………何でだろう。私、不安しかないわ。夏希が本気出すなんて」

「……パイセンは私を信用しなさ過ぎる。任せろい、こんな面白イベン…柊柊ひいひいの大切なデート。記録に残さないなんてありえないのだ」

「ナッちゃん。よく分からない。ありがとう~」

「いや! ちゃんと分かっとけよ! コイツ。アンタのデートでやらかす気満々なんだけど。そして、それを堂々と撮影する気でいるんだからさあ」


 パイセンは柊柊ひいひいの事を心配そうに抱き締める。おお、この2人絵になる。記録に残したい~!


「……フッ! 今の頭の中、お花畑状態になっている柊柊ひいひいに何を言っても無駄だぜ。パイセン」

「アンタも柊や凪くらいにぶっ飛んでるわな。思考が……」



《そして、放課後 学園入口前》


「それじゃあ。映画館見に行こうか。小鳥遊たかなしさん」

「う、うん! う、うわぁ~、楽しみだな……こちら柊。映画館に出発します。どうぞ~」


「……こちらコードネーム【夏】と」

「【パイセン】……何でコードネームがパイセン?」

「……これより2人のデートの撮え……サポートを全力でり…おこなう。どうぞ~」

「夏希。アンタ、自分が楽しみたいだけだろう?」


 ……こうして始まった。柊柊ひいひいと士郎のデートを、私は陰ながらサポートするミッションが始まった。



「あれは何をしているんでしょうか?」

「んー? 夕姫ゆうきパイセンと夏? 何でこそこそと」

「うん。行こう! 私達もこそこそとね。アスナちゃん。りんちゃん」


 ……後ろから聞き覚えがある声が聞こえた気がするけど。放置してた方が良い映像が撮れそうだから放置しよう。


 そして、柊柊ひいひい。今日の映画デートで士郎を落とせる様に頑張って、私も全力でサポートするから。

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