表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/35

エピローグ3・灼熱の楽しさ

毎日が灼熱だった。

空調は全開。それでも溢れんばかりの人が飛び跳ね、汗を流して酒を煽って飛び回っている。

ステージに備え付けられた何世代か前の白熱灯はケバブの様にジリジリ焼かれ、それに負けるかとマイクを握る。

「夢をー乗せてー!」

大型アンプから声が響き渡ると客も負けじと熱量を返す。

流れる汗も気にならない灼熱の楽しさが音楽を加速させる。

音楽は佳境。

サビに入る前、ステージは最高潮になり――

――ゆっくりとフェードアウトしていく。

やり場のない熱を持て余した客は困惑の表情でステージを見ると、ボーカルの金髪が一歩前に出る。

「ライブツアーファイナル。皆さんのおかげでここまで来れました」

「とっても幸せな三日間でした」

「ありがとうございました!」

ペコリと頭を下げると、ステージを盛り立てるヤジと歓声が飛んだ。

下げた頭が微笑んでいる事はここに居るファンのみんなが知っていた。

「最後の1フレーズ――」

「――私と一緒に歌おうぜ!」

おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!

歓声に呼応するようにドラムが叩かれベースが音の道を作りトロンボーンが交信する。

ギターが音の道をなぞっていく。

灼熱の歌声を乗せて、楽しさが伝染する。

胴上げされた人が右へ左へあちこちに流れていく。

自分達で作った歌を、みんなで楽しむために演奏できるほんの数秒は最高の幸せと小さな嫉妬。

今まで散々歌っておきながら、やっぱりこっちにマイクを持って来いと子供じみた嫉妬。

私だって、歌いたいんだ――!

観客が1フレーズ終わったところで自分のマイクを奪い返すように握った。

「そして輝け明日の星!」

「太陽が寝てる今こそが俺達の時間」

「星と星が煌めく夜空はみんなの夜空」

「流れ星に乗せるのは俺達の音楽」

「届け別の世界へ、流れろどこまでも」

「夢を乗せて!」

会場が熱に包まれる。

音楽が楽しいという想いが交差して交わる。

「ありがとうなーーーーー!」

最高潮から、さらにエンジンを踏み入れる。

(――見てるか色助)

未来の国宝だが世界の頂点だが知らねえが、どうだ! すげーだろ!

湧き上がる歓声を身体いっぱいに受け止め、両手を挙げて応える。

負けねえぞ!

音楽ってのは、楽しいんだよ!

毎週火曜日・金曜日・日曜日に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ