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(短編)(仮題)異世界で死にかけた少年と入れ替わった独身アラフィフサラリーマン、スキルが『絶対無敵ロボ アポロンカイザー』だった(応募用)

作者: Y.A

この短編は、バンダナコミック 縦スクロールマンガ原作大賞「メカ・ロボット篇」に応募するため、連載作品「(仮題)異世界で死にかけた少年と入れ替わった独身アラフィフサラリーマン、スキルが『絶対無敵ロボ アポロンカイザー』だった」を短編にしたものです。

『機械大人『ドグー』よ! 地球に生息する下等種族共を一人残らず殲滅するのじゃ! 低能で汚い下等種族には過ぎた美しい惑星を、銀河系征服のための本拠地とするために!』


「地球防衛隊の全機! 住民たちの避難が終了するまで、機械大人と機械魔獣たちの侵攻を阻止するんだ!」


『ふんっ! そのような玩具では妾が生み出した機械大人には勝てぬぞ。このドグーは、妾の最高傑作なのじゃから。妾の邪魔をするのであれば、先にお前たちをあの世に送ってやろう。そのガラクタを棺桶としてな!』


「全機! なにがなんでも、町への侵入を防ぐんだ!」


「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」


 挑発的で甲高い声と女性の声が広範囲に響くのと同時に、土偶に似た機械の巨人が、同じ機械の獣たちを引き連れ、人間の町を破壊しようと侵攻を始めた。

 それを阻止するべく、地球防衛隊が速やかに戦闘機部隊を発進させる。

 指揮官先頭をモットーとするがごとく、進行上の建物やインフラを破壊しながら町を目指す機械の巨人は、宇宙より飛来した全銀河全滅団の首領女帝アルミナスが生み出した機械大人だ。

 それが数十の機械の獣たちを率い、人間の住む町を破壊しようと移動を始めている。


「攻撃開始!」


 隊長の命令で、各戦闘機が機械大人と機械魔獣に対し、ミサイルと機銃で攻撃を開始した。

 だが、そのどちらもほとんど損傷を与えられない。


『下等生物が持つ石器のような武器に、偉大なる妾が生み出した機械大人と機械魔獣軍団が負けるはずがないではないか。愚かしいまでの無駄な抵抗じゃ。ドグーよ! 先にうるさいハエどもを叩き落してしまうのじゃ』


 女帝アルミナスの命令に従い、機械大人ドグーは目から発射したレーザーで戦闘機をすべて落としてしまった。

 残念ながら現代の地球の科学力では、機械大人に対しまったく歯が立たなかった。


『これで邪魔者は消えた。さあ、ドグーよ! 人間を皆殺しにし、町を破壊してしまうのじゃ! すべて壊してから、妾に相応しい世界征服の拠点を築こうぞ』


 いまだ町の住民の避難は完了しておらず、頼みの戦闘機隊は一瞬で全滅してしまった。

 もはや、機械大人と機械魔獣軍団による町の破壊と、多くの犠牲者が出ることは避けられないと、全員が諦めかけたその時……。


「女帝アルミナス! そして、機械大人! 町を破壊することは、この俺が許さない!」


 突如上空より、若い男性の声と共に機械の巨人が飛来し、町と機械大人の間に割って入った。


『貴様は岩城正平! またもアポロンカイザーで邪魔をしおってぇーーー!』


「私もいます!」


『くっ! アンナ・東城とビューティフォーまで!』


 そしてもう一体。

 グラマーな女性をモチーフにした機械の巨人も飛来し、二体で町への侵攻を阻止する形となった。


『いつもいつも、一番いいところで妾の邪魔をしおって! ドグーよ! 先にこの二体のガラクタを破壊してしまうのじゃ!』


「やれるものならな! アンナ!」


「任せて、ショウヘイ!」


 絶対無敵ロボ アポロンカイザーとセクシーレディーロボ ビューティフォーを操る二人は、そのまま機械大人と機械魔獣軍団との戦闘に入った。


「いくぞ! カイザーアイビィーーーム!」


「ヘッドレーザーーー!」


 まず二人は、機械魔獣の数を減らそうとした。

 古代アトランティスの超科学の遺産である二体の巨大ロボより発射されるビームとレーザーを食らった機械魔獣が、次々と破壊されていく。


「カイザーガン!」


「ダブルブゥーーーメラン!」


 さらに、絶対無敵ロボ アポロンカイザーが背中のランドセルから取り出した銃を連射し、セクシーレディーロボ ビューティフォーが、装備しているブーメランで機械魔獣たちを斬り裂いていく。

 わずか数分で、機械大人が率いていた機械魔物軍団は全滅してしまった。


「残るは、その機械大人のみだ!」


『くっ! ドグーは、これまでお前たちが倒してきた機械大人とは性能がまるで違うぞ! 今日が、お前たちの命日となるのじゃ!』


「女帝アルミナス、俺たちは負けない! いくぞ、アンナ!」


「任せてください、ショウヘイ!」


 女帝アルミナスが新たに生み出した機械大人ドグーと、絶対無敵ロボ アポロンカイザーとセクシーレディーロボ ビューティフォーとの死闘が始まる。

 はたして二人は、女帝アルミナスが率いる全銀河全滅団を殲滅することができるのであろうか?





「ふわぁーーーーあ。もうこんな時間かぁ……。続きを見たいが、明日も早いからなぁ。寝るか」


 夜の自室で、これでもう何周目だろうか?

 大好きなアニメ『絶対無敵ロボ アポロンカイザー』のブルーレイを見ていた俺は、明日に備えて寝ることにした。

 せっかくいいところだったんだが、続きは明日の夜のお楽しみってことで。


「いやあ、何度見ても絶対無敵ロボ アポロンカイザーはいいよなぁ これこそがロボットアニメの最高傑作だと思うんだよねぇ」


 子供の頃からもう何度も見ているが、いつ見ても素晴らしいアニメだ。

 そう思いながら布団に入り朝七時の起床に備える……すぐに寝入ってしまい、それから夢も見ず、スマホから流れるけたたましいベルで目を覚ました。

 周囲を見渡すと部屋が大分散らかっており、だが俺は独身で、掃除をしてくれるパートナーも存在せず、貴重な休日を使って掃除をしなければならない。

 その前に今日はまだ水曜日で、休日まで大分日が残っているのだけど。


「今日も仕事かぁ……朝食は……コンビニでなにか買うか」


 急ぎ身支度をして自宅マンションを出た俺、冴島誠一さえじま せいいちであったが、まさか自宅を出た直後にあんなことになってしまうなんて……。


 きっと神様ですら、こんな未来は想像できなかったと思うのだ。

 こんなことなら、徹夜してでもアニメの続きを見ておけばよかった。

 それだけが唯一の心残りだ。


「うわぁーーーーーー! どうして急に俺は空中に? あっ!」


 通勤の途中、近道をしようと思って裏道に入ったら突然足元に穴が発生し、俺はその穴を回避することができず、そのまま穴に落ちてしまった。

 こんなところに落とし穴を掘るなんて、イタズラにしては度が過ぎていると思った直後、俺は暗い穴の中ではなくどういうわけか空中に放り出され、そのまま地面へと落下していく。

 辛うじて視界に入ったのは、馬とその近くの地面に倒れていた金髪の美少年であった。

 『もしや落馬したのか?』などと少年の心配をしている場合ではなかった。

 落下中の俺はなにもできないまま、物理的法則に従って地面に倒れていた少年に激突してしまう。

 運悪く少年と激しく頭をぶつけ合った俺は激痛と同時に、目の前で火花が飛び散ったのが見えたような気がした。

 そして頭をぶつけ合った衝撃により、意識を失ってしまう。


「……はっ! ここは?」


 どれくらい意識を失っていたのだろうか?

 目を覚ました俺は、まずは自分の体の状態を確認し、激突した頭が痛い以外は異常がなさそうなので、まずは立ち上がって周囲の状況を確認する。

 すると、少年が落馬したため人が乗っていない馬が近くで草を食んでいた。

 どうやらかなり調教された馬のようで、その場から逃げ出さなかったようだ。

 かなり人に慣れている馬なのだろう。

 突然町の裏路地から、落馬して地面に倒れていた外国人の少年と頭をぶつけ合ってしまった。

 なんとも不思議な現象だが、まずはここがどこなのか確認しないと。

 周囲を見渡すと自然が多いので乗馬クラブのコースである可能性が高いが、どうして俺が突然そんな場所に移動してしまったのか……とにかく謎が多いな。


「俺が落ちた落とし穴も突然できたからな。どういうことなんだ?」


 色々と不思議なことがあるが、まずは現状把握だ。

 すぐに周囲の状況を確認すると、俺のすぐ横にスーツ姿の五十歳前後と思われる、白髪混じりの少しメタボなおじさんが倒れており、俺と激突した少年の姿が見当たらないのは不思議……。


「あれ? どうして俺によく似たくたびれたおじさんが、俺のすぐ横で倒れているんだ? 落馬して倒れていた少年は?」


 俺は目の前で倒れているのに、なぜか激突した少年の状態を心配している。

 このおかしな状況になかなか理解が追いつかないでいたが、しばらくしてようやく合点がいった。


「……俺が少年になっているのか?」


 落馬して倒れていた少年と頭をぶつけ合った際に、意識が入れ替わってしまったのか?

 まさか、そんなアニメみたいなこと……。

 でもそうでなければ、俺が倒れている俺を見れるわけがない。

 だとすると、勝手に人の体を乗っ取って悪いとは思うが、今はそうも言ってられない。

 倒れているオジさんは俺だから、そのスーツのポケットから、勝手知ったるスマホを取り出し、自由に使っても問題はないはずだ。

 スマホのカメラで自分の顔を確認すると、そこには十二~三歳ほどと思われる金髪の美少年が写っていた。

 この少年は落馬したらしく、馬の横で地面に倒れていたが、突然上空から落下してきた俺と激突し、可哀想にオジさん……俺のことだけど……はまったく動かない。

 スーツのポケットからスマホを取るついでに、倒れたまま目を覚まさないオジさん(俺)の状態を調べてみたがまったく息をしておらず、続けて心臓の鼓動と脈拍を調べてみたが、やはりこれも完全に止まっていた。

 その体に目立った外傷や出血はないが、オジさん……俺のことだが……は少年と頭をぶつけたショックで死んでしまった?

 いや、先ほどの状況を思い出すと、落馬した少年は倒れてピクリとも動かなかった。

 俺と激突する前に死んでいたか、今にも死にそうだったが、俺と頭をぶつけた際に少年の体に俺の意識が乗り移ることで生き返った?


「逆に俺の体には死んだ少年の意識が入り込み、俺の肉体は死んでしまったのか……」


 なんともややこしい推察だったが、ここはどこなのかも、俺の意識が乗り移った少年が何者なのかもわからず、それがわかったところでどうにもできないというのが現状だった。


「悪いことした? いや、少年は落馬して死んでいた、もしくは死ぬ寸前で俺の体に意識が乗り移ってしまったから、体が死んでしまった俺も被害者で……。俺はこれからどうすればいいんだ?」


 突然地面に開いた穴に落ちたと思ったら、よく知らない場所の空中に放り出され、落馬して死にかけていた少年と激突し、目を覚ましたらお互い入れ替わっていたなんて。

 しかも、俺の体に意識が移った少年は、俺の体と共に死んでしまった。

 蘇生させようにも周囲を見渡すと自然しかなく、さらにスマホで救急車で呼ぼうとしたら通信圏外だった。

 ネットも繋がらず、Wifiにも繋げず、今気がついたが、俺はとんでもない田舎にいるようだ。


「どうやって、通勤途中の町の裏路地から自然しかない田舎に? そもそもここは日本なのか?」


 俺の意識が乗り移った少年は金髪で、あきらかに日本人ではない。

 最初は日本に観光に来た外国人だと思ったのだが、どうやらここは日本ではないようだ。


「どうしよう……」


 目の前に倒れている自分の死体を目の当たりにし、これからどうすればいいのか考えがまとまらずその場に立ち尽くしていると、遠方から人を呼ぶような声が聞こえてきた。


「ダストン様ぁーーー! ご無事ですかぁーーー?!」


 声がした方を見ると、中年男性が馬を走らせてこちらに近づいてくる。

 やはり彼も西洋人によく似た特徴を持っており、だがもう一つ不思議なことが増えた。

 なんと彼は、とても流暢な日本語を話していたからだ。


「ダストン様、この黒い髪の男性は……もしや! 刺客なのですか?」


「……あの……。ダストンというのは、俺のことですか?」


 俺の意識が乗り移った金髪の少年の名前がダストンなのはわかったが、その他のことがまったくわからない。

 こうなったら、馬から落ちたショックで記憶を失ってしまったことにした方が、俺の正体がバレなさそうだ。


「ダストン様、もしや落馬した際に、強く頭を打たれたのですか? その男と激突してしまったのか!」


「みたいだな。でも俺は、なにも思い出せないんだ……」


 頭を抱えて苦悩する芝居をして、記憶喪失が事実であるかのように見せる。


「そっ、そんな……。ああ、お館様にどう説明すればいいのか……。ええい! この痴れ者が!」


 ダストン少年の従者と思われる中年男性は、死んでいる俺の体を蹴り始めた。

 俺……冴島誠一のせいで、ダストン少年が記憶喪失になってしまったことにしているので、お館様とやらに叱られてしまうからであろう。


「(しかしながらお館様? 侍? 西洋人っぽいから貴族かな? ダストンは貴族の息子なのか?)」


「このような男は、バルザーク伯爵領には住んでいません。どうやら、ご一族の方々を狙った刺客である可能性が高いようです」


「そうなんだ。じゃあ、俺は運がいいんだな。殺されずに済んで」


 俺が暗殺者だなんてあり得ないのだけど、変に庇うと怪しまれる。

 そういうことにしておいた方が都合よさそうだ。


「ところで先ほどから、俺……ですか? これまでは自分のことを僕とおっしゃっていらっしゃったのに……。どうやら本当にダストン様は記憶喪失のようですな」


「俺はバルザーク伯爵家の人間なの?」


「はい。ダストン様は、このバルザーク伯爵領を治めるお館様の跡取りでございます。そうだ! ダストン様はこの刺客のせいで落馬をし、頭を打たれたのでしたね。すぐに医者を呼んで参ります。この場から動かず、しばらくお待ちを」


 従者と思しき男性は、俺を置いて医者を呼びに行ってしまった。

 もし他にも刺客がいたらどうするんだろうと思いつつ、当然そんなものは存在しないので、俺は従者が戻ってくるのを待つことにした。


「しかし、これからどうしたものか……」


 とは言いつつも、今は記憶喪失になったバルザーク伯爵家の嫡男ダストンのフリをするしかない。

 しかしながら、会社に通勤しようと思ったら突然異世界に飛ばされてしまい、さらに他人と入れ替わってしまうなんて……。

 俺が絶対無敵ロボ アポロンカイザーのみならず、WEBに大量に掲載されている異世界系作品も嗜んでいなかったら、絶対に事情が飲み込めずに混乱していたはずだ。


「俺、呆気なく死んでしまったなぁ……」


 いや、正確には俺は死んでいないのか。

 俺と意識が入れ替わってしまったダストンが死んでしまったのだ。


「考えようによっては体も若くなったし、イケメンだし、貴族の跡取りと体が入れ替わったので悪くはないんだけど……」


 運悪く、俺と意識が入れ替わったばかりに、冴島誠一の体で死んでしまったダストン少年に悪い気がしてしまうのだ。

 とはいえ、彼は元から落馬していて死は避けられなかったようだし、いきなり地面に開いた穴に落下して異世界に飛ばされ、第一異世界人であるダストン少年と頭をぶつけて体が入れ替わるだなんて。

 不可抗力としか言いようがなかった。


「とにかく、ダストンが記憶喪失になったという嘘は信じてもらえたようだ。この世界の情報は、ダストンとして生活しつつ追々覚えていくしかない。その前に……」


 俺は自分の死体から、サイフ、腕時計も回収して懐に仕舞った。

 ダストン少年や従者の姿格好を見ると、これらの品が世間に普及しているほど発展している世界には見えなかったからだ。

 なにより、この死体の正体がわからない方が刺客に見えるというのがあった。


「(どうせスマホは、電池が切れればただの板になるし、財布も日本のお札が使えるわけでもない。会話が日本語だから免許証や社員証の情報を読まれてしまうかもしれないし、カバンは……」


 カバンを懐にしまうのは難しいが、どうせ安物だし、中には一生懸命作ったプレゼンの資料だけ……ああ、せっかく苦労して作ったのに、会議で発表する前に死んでしまうとは……。


「ダストン様ぁーーー!」


 それからすぐに、先ほどの従者の男性が数名の応援を連れて戻ってきた。


「この男、着ている服が少し変わっていますね。そして、身分を特定できそうなものは持っていないようです」


 しがないサラリーマンなので安物のスーツだけど、彼らは初めて見たようで、だからこそ俺をよそ者だと断定したみたいだ。


「(それはそうだ。俺が全部回収しちゃったから)」


「カバンに入っている紙ですが、随分と白くて綺麗ですね。こちらの紙はツルツルしていて、随分と沢山の色を使って印刷されています。これほどまでに高度な印刷技術となると、他国がこのバルザーク伯爵を混乱させようと刺客を送り込んだことは明白です。これらの紙にはビッシリと文字が書いてあるのですが、これまで一度も見たこともない文字です。これは高度な暗号でしょう」


 俺が持っていたカバンの中身を従者たちが確認し始める。

 それにしても不思議なのは、会話は日本語が通じるのに、俺が苦労して作り上げたプレゼンの資料と、うちの会社で取り扱っている商品が印刷されたパンフレットに書かれた日本語を彼らは読めないという点だ。

 高品質の紙を珍しがり、高度な印刷技術に驚き、そこに書かれた謎の文字日本語は暗号書なのだと勝手に誤解してくれた。

 そしてそのことでわかったのは、ここは日本ではないということだ。


「この男の死体は、あとで無縁墓地に埋めてしまおう。ダストン様、私の前に乗ってください。ハミルトンは、ダストン様の馬を屋敷まで連れて帰ってくれ」


「わかりました」


「さあ、お屋敷に戻りましょう」


 こうして、体はバルザーク伯爵家嫡男ダストン、中身は現代日本のアラフィフ独身サラリーマン冴島誠一である俺は、記憶喪失のフリをしてお屋敷へと向かうのであった。





「そんな経緯で、異世界の貴族の少年ダストンになってしまった俺だけど……」


 このままバルザーク伯爵家を継げると思ったのに、まさか実家から追い出されてしまうとは……。

 仕方なく俺は商都アーベンでハンターとなり……しかしながら、どうして自分が実家から追放されてしまったのか。

 中身がいいおっさんなので、理解できなくもなかった。

 この世界では、十三歳になると教会で行われる『成人の儀』でスキルを授かる。

 バルザーク伯爵家の当主は、代々『火魔法(中)』か『火魔法(大)』を授かるはずなのに、俺はなぜかおかしなスキルを得てしまった。

 これも、中身が現代日本のアラフィフサラリーマンだからかもしれないが……。


「今日も頑張ろう。『ステータスオープン』!」


 すると、俺のステータスとスキルが表示される。



ダストン・バルザーク(13)

レベル28

スキル

絶対無敵ロボ アポロンカイザー

解放

カイザーパンチ

カイザーキック

無限ランドセル



 無事にステータスが出たので、今日も始めよう。


「カモォーーーン! アポロンカイザーーー!」


 アニメ『絶対無敵ロボ アポロンカイザー』の主人公、岩城正平の動きと掛け声を真似しながら、近くにいるスライムに鋼鉄のパンチ……実際にはただの人間のパンチを叩き込む。

 するとスライムは、水風船のように弾けて消滅してしまった。


「やはり、スライムの粘液は手に入らないか。おっと、魔石発見」


 このスキルのおかげで俺は、大好きだったスーパーロボット並に強くなってしまった。

 唯一の欠点は、アニメのとおり過剰なアクションと掛け声が必要な点だが、それを除けば悪い話ではない。

 そして俺は、この異世界人には理解不能なスキル……だから俺は実家を追い出されたのだけど……を極めたら、本物の絶対無敵ロボ アポロンカイザーに乗ることができるのではないかと思い始めた。


「頑張ってレベルを上げるぞ! もっと強い魔獣を狩ろう」


 新しい人生の目標ができた俺は、レベルを上げるため魔獣を倒し続ける。

 どのくらい強くなれば、俺は本物の絶対無敵ロボ アポロンカイザーに乗ることができるのだろうか?

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