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5話:集合


 セリこと、稲葉なずなは18歳の大学1年生である。

 この春から、都内の大学に通うこととなり、独り暮らしを始めるようになった。


 VRゲームサークルに所属し、バイトに勤しむ日々を過ごしていた彼女は、5月の始めにとある広告を見る。


 『Mechanical Microcosm』。


 ゲーム制作会社ファーフロントの5年ぶりの新作。宇宙空間を舞台に機械生命体を相手に戦う兵士となるゲームに、正直なところセリは心惹かれなかった。


 まあ、それも仕方のないことだろう。

 セリが普段楽しんでいるジャンルは、野菜を栽培したり動物を育てたりするような牧歌的なシミュレーションだ。これまで彼女はアクションゲームを避けてきたし、SFチックな世界観に触れるのはかつて読んだ銀河鉄道の夜以来となる。


 そんな彼女が『Mechanical Microcosm』に手を伸ばすこととなったのは、同じサークルに所属している同級生の誘いであった。

 その同級生はロボゲー好きなのだ。ファーフロントはロボットが登場するゲームを多く開発しており、そのために最新作の『Mechanical Microcosm』に目を付けていた。そして、それを一緒にやろうと勧めてきたのである。


 購入に3000円、月の利用で500円。

 このVRゲーム全盛の時代にだいぶ攻めた料金設定だ。ここに課金要素まで盛り込むというのだから、ゲームの出来を過信しているとセリは感じていた。ヒットシリーズの続編とかの価格帯なのだ。

 しかし痛い出費であるが、友人たちに流されてセリは購入を決めた。早期購入特典が付いていたのはお得に感じたが、それくらいなければ困るとも思う。




 本サービス開始までのメンテナンス時間を利用して、セリはその友人たちと連絡をとることにした。

 現在の状況を報告し合うのだ。


 『MM』を離れ、セリはメッセージアプリを立ち上げる。

 サークルメンバーと作ったグループを覗くと、既に書き込みがされていた。





サラ:MMムズいんだけど


ののは:それなー。敵エグくね?


柚柚華:私早くロボに乗りたいのだけど


サラ:ゆゆ、そればっかじゃん。ウケる


柚柚華:そのために始めたのだからしょうがない


なずな:みんなイベントどうでした?


ののは:お!なずちゃんおそーい


サラ:ウチはダメダメ。逃げてたら終わったわ


柚柚華:即席パーティで2体倒したよ


ののは:おーすごーい!あたしはソッコーつぶされちゃった


なずな:リスポーンする時怖いですよね


ののは:ねー。で、なずちゃんは?


サラ:いや、今死んだって言ってたじゃん


なずな:ペア組んだ人が強かったです。7体かな?倒しました


柚柚華:え?


サラ:マジ?


ののは:ちょ、つよくね?いいなー


サラ:いやいや、強すぎでしょ。ペアでそれ?


なずな:はい。2人で頑張りました


柚柚華:私の戦果が霞む……


ののは:いや、ゆゆちゃんもすごいよ!あたしなんて戦ってないし!


サラ:それな。なずなのがおかしいだけだから


なずな:わたしは足引っ張ってたので、すごいのはミーハさんですよ


柚柚華:むふー。満足した


サラ:そのミーハさんってのとなずなは一緒にいんの?


なずな:あ


ののは:あー、ダメだよー!なずちゃんうっかりしたなー


柚柚華:この調子でゲームしてないか心配になる


サラ:ほんとそれ。で、イケメンなん?


なずな:カッコいいお姉さんです


ののは:ほらー、言ったそばからー!


なずな:ええ!?


柚柚華:私が守らないと(使命感)


サラ:なんだイケメンならよかったのに


柚柚華:少しは心配しろ


ののは:さっちゃんも大丈夫かよ


柚柚華:ダメそう


サラ:どこがよ


柚柚華:で、合流どうする?


なずな:あ


ののは:あー、なずちゃんまたなんかやったん?


サラ:集まんのデカイ水晶前でいいっしょ


サラ:なずな?


なずな:さっきミーハさんとパーティ組む約束しちゃって……


ののは:ああー


柚柚華:これはゾッコン。私たちを忘れている


ののは:どうしよっか


サラ:そのミーハさんも連れてくればいいじゃん


柚柚華:たしかに


ののは:さっちゃんたまに頭いいよね


サラ:なんだその反応!


なずな:ありがとうございます!聞いてみますね!


ののは:あ、それ言ったらゆゆちゃんのパーティはいいの?


柚柚華:問題ない


柚柚華:男ばかりだけどみんな頼りない


柚柚華:あと直結厨


サラ:あー、ないわ


ののは:うわー


なずな:それはちょっと……


柚柚華:だからフレンド登録する前に逃げた


ののは:それがいいねー


サラ:イケメンいた?


柚柚華:中身がない


ののは:バッサリじゃん


サラ:ならいいや


ののは:こいつはホントにもう……





 サラの発言に心配になりながら、セリはメッセージアプリを閉じた。

 あの友人はそのうち悪い男に引っ掛かるのではないか。そんな心配が仲間内で共有されているのだが、しかしなんだかんだ鼻が利くのでそう悪いことにはならないような気もする。

 しっかりしているのかしていないかよく分からない友人は、今日も平常運転であった。





⚫このメンツで銀河鉄道の夜をSFだと思っているのはセリだけ



⚫サラ

→面食い。要求が高いため、生まれてこの方彼氏なし。若干、言葉が強いため女子グループで浮きがち。サークルの男どもは全部案山子だと思っている。


⚫柚柚華

→ロボ好き。サークルメンバーに『MM』を勧めた。コクピットには脱出機構を備えていて欲しい派。実は彼氏持ち。


⚫ののは

→サラと高校からの付き合い。喋りは緩いが成績は良い。面倒見も良いからかモテるのだが、あまり恋愛に興味がない。最近の悩みは大学に入学してから運動不足なこと。

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