94話 アオイのあり方
「私はそれからルークの打倒ばかり考えていた。シーマを取り戻すために。それから私はアオイ達と行動をともにした。
でもルークを打倒した今もシーマは帰ってこない。あの時、スガル平地での闇魔法はシーマの力だと思うの。魔団にあやつられているのか?自分の意思か?わからないけどシーマは生きていると思う。」
魔国の女王は我が子の行方を知らなかったが、生きていることを疑っていなかった。
「つらい話をありがとう、ダスティス。でも混沌の魔団の目的が魔大陸の封印だとするとなぜシーマを巫女として使わないのかな?」
ヒスイもシーマの話を聞いて思った疑問だった。
「でもその動きはないの。混沌の魔団、いえブエノスの目的がルークとは違っていたら?私はそう思えてならないの…。」
ヒスイは不安気なダスティスの気持ちを測りかねた。大切な者、国を守りたい気持ちと女王としての責務、そして読みきれない混沌の魔団の目的。
(私はダスティスさんのように強くあれるだろうか?)
「ダスティス。でも私達の目標はルークの業をこの魔大陸から解き放つこと。魔団が何を企んでいるかはわからないけど、
それは変わらないでしょ?それに魔団にシーマの痕跡があるなら、私は全力でシーマを取り戻すよ。」
「ありがとう、アオイ。」
ダスティスは目に涙を溜めながら、言葉をつないだ。
「アオイにはシーマの話をできなかった。ルークの娘であるあなたに…。初めてアオイに会った時、私はあなたのことを殺したいほど憎かった。シーマを拐かしたルークの娘であるあなたが…。
でもね、娘としてルークのことが大好きだったのに、苦しみながらルークを打倒しようとしていたアオイにわたしの事情を言いたくなくなったの。
すぐにアオイのことが友達として好きになったから。
また新たなルークの業としてシーマのことを背負ってしまうとわかっていたから。ごめんなさい。」
ダスティスはそこまで言うとポロポロと涙をこぼした。
「ダスティス、ありがとう。でもね、私はルークの業は全て背負わなければならない。シーマのこともそうだ!私は命に変えてもシーマを助ける!じゃないと私は死にきれない!!」
アオイはこぶしを握りながら叫ぶように言った。
「違うの!アオイ!違うの…。」
そして、
『パン』
アオイはヒスイに頬を叩かれていた。
「アオイはダスティスさんの気持ちがわからないのですか?
何度も言います!あなたはアオイであってルークではない!
ダスティスさんはあなたにシーマのことを背負ってほしくなかったんです。あなたに自暴自棄になってほしくなかったんです。責任を感じてほしくなかったんです。
シーマのことは皆んなで探しましょう。皆んなで助けましょう。あなた1人が背負うことではない…。」
ヒスイはもう一度アオイの頬を叩いた。
「それに命を大事にしない人はきらいです…。きらいです、アオイ…。」
その日、アオイは与えられた自室にこもっていた。ヒスイの言葉が身に染みていた。
(ああ、私はやっぱりルークにとらわれているなぁ…。)
そして、過去のことに思い至る。
(魔大陸の封印をスガル平地に施したのはシーマなのか?私は闇の対極にある光の魔素が強いから巫女にはなれなかった。巫女の"なりそこない"だ。だとしたらシーマは私の身代わりじゃないか!)
アオイは苦悩していた。ヒスイの言うことはもっともだと思う。ダスティスの気持ちもありがたいと思う。だけど…。
(私はどうすれば良い…?)
『コンコン』
ノックの音が聞こえ、
「アオイ、よいかな?」
ダスティスの声が聞こえてきた。
「うん、良いよ…。」
「アオイ、話をしたくて…。」
「うん…。」
「ヒスイさん。泣いてたよ…。」
「そうか…。」
「アオイってバカなの?」
ダスティスのきつい目線がアオイをとらえた。
「何で混沌の魔人のことになると自分の気持ちが優先されるの?」
「自分の気持ち?」
「そうだよ。あなたはルークの業を背負って気持ちよくなっているだけ!自慰と一緒じゃない?そんなんじゃ皆んなを不幸にするよ。お願い…。あなただけが背負うことじゃない。わかってよ…。」
ダスティスは頬を伝う涙を隠さずにアオイを見つめていた。
「ちゃんとヒスイさんと話をしなさい。わかったわね?」
ダスティスはそれだけ言うと部屋を出て行った。
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