85話 大森林の夜
それから5日間。
ヒスイはドワーフ、ハイエルフ、エルフ達とゴーレムの製造からメンテナンス、運用までをマニュアル化した。
また、王都からも地の使い手が数名、大森林へ派遣されることになった。ジム、ドワーフ達と連携できると心強い。
バールミン領からは魔石を取り扱う商隊が大森林へ向かうとの連絡もあった。オンジンやバールミン侯爵が尽力したらしい。商隊の護衛にゴーレムも動員されることになった。ミミ達エルフからも護衛任務に希望する者がいた。
特にミミ達の一族はワイバーンの扱いに長けており、その腕前はアルデイも認めるほどだった。
エルフのゲートはアンナが調整していた。このゲートは古代エルフから代々伝わる空間魔法の集大成である。空間操作までできる風の使い手が操作すると世界中の望む場所へ対象を転移させることができる。エルフの血を注ぐ者が一緒に転移しないと座標が定まらないという制約があったが。どうもエルフの特殊な波動を目印にして使い手は送りたい場所へ転移させているらしい。
エルフがいないとどこに転移するか?わからなくなり迷子になってしまうと言うことだった。
「アオイ、また来てよ。」
アンナがさみしそうにアオイの肩にそっと手を置いた。
「うん、魔大陸を解放したら必ず。」
「ヒスイにも本当に世話になったよ。2人で必ず来てね。」
「うん、必ず。」
明日は大森林を旅立つ日。
その夜、アオイとヒスイを送り出す宴が大々的に開かれた。お酒は大森林で採れたりんごを発酵させて蒸留したフルーツブランデーやはちみつ酒、ワインが振る舞われた。
ミミ達、エルフを始め大森林に住む多くの種族が自分達の自慢の民族料理を振る舞っていた。
エルフは野草を使った地味深いスープやサラダ、ドワーフは肉を豪快に焼いたワイルドな料理、オーガ族は野趣あふれる肉と根菜のシチューなど。アルデイも川魚の腹に香草を詰めて網で焼いた料理を振る舞っていた。
「アンナ、ありがとうね。すごく楽しいよ。」
ヒスイはドワーフやハイエルフ達に囲まれて離してもらえてなかった。常に輪の中心で笑顔を見せていた。
「アオイ、あなたはルークの事になると命も賭けようとするでしょ。私はそれだけが心配。」
アンナは皆の楽し気な様子を眺めながらボソッとつぶやいた。
「今はヒスイがいるから…。そんな事は…。」
アンナはその後に『しないよ。』と言うアオイの言葉を期待したが、アオイから続きの言葉はなかった。
「まあ、良いけど。ちゃんとここへ帰ってきなさいよ。」
アンナはアオイと一緒に満天の星空を眺めながら魔国に居るダスティスのことを思っていた。
(あいつも人の想いを背負いこむ奴だからなあ…。2人で無茶しないでね。)
お読みくださりありがとうございます。『いいね』『ブックマーク』をありがとうございます。励みになります。これからもアオイとヒスイをよろしくお願いします。




