70話 ハイエルフ
一行は小道沿いに森へ入っていく。さすがにエルフは森に精通していた。迷いなく進んで行く。数回、魔物に遭遇したが難なく撃退できていた。
「あと半日ほどで精霊女王の領域に入ります。」
異変を感じたのはミミが宣言してから数刻後のことだった。
「アオイ、囲まれているぞ。」
「アルデイ、さすがだね。私にはわからなかった。」
「俺は魔素そのものを操れるからな。感度が良いのだろう。だが正確な位置まではわからんぞ?」
エルフの風の使い手にも囲まれていることは感知出来ないようだった。
「闇の魔法なんだけど、使ってみようかな。皆んな、ちょっと動き難くなるんだけど。」
アオイはそう言うと重力場を自身を中心に展開した。アオイが重力場を展開した所にいる皆が身体が重くなるのを感じていた。
「アオイ、どうです?」
「うん、11人いるね。どうしようか?1人捕まえてみようか?」
アオイ達を囲んでいたのはハイエルフと呼ばれる種族だった。精霊女王アンナの手のものである。大森林の領域への侵入者を警戒しての行動であった。 敵対行動がなければ、特に手を出さず、見張りに徹するつもりだったのだが。
「闇の魔法を使う者がいる!」
ハイエルフにとって闇の魔法は500年前に滅びた魔法国が発展させ、その力で自滅した忌まわしい力だった。ハイエルフ達は長い寿命がゆえにこの事実は記録ではなく、記憶として染み込んでいた。
しかも風魔法による隠形を見破り、位置を把握しているらしい。ハイエルフ達は恐怖した。
そしてその恐怖ゆえ、1人のハイエルフが暴走した。この中では若い女性のハイエルフだった。
短い剣を手にものすごいスピードで木の上を移動し、アオイの頭上から斬りかかった。
アオイは虹丸を抜くと頭上から襲ってきた剣撃を弾いた。ハイエルフは弾かれた勢いで木の幹を蹴り上げると再度アオイに襲いかかった。
アオイの腹部を狙って剣を一閃する。アオイはバックステップで攻撃をかわすと左手で雷撃を作り出し、ハイエルフにぶつけた。ハイエルフはまともにこの攻撃を受けると痺れて動けなくなった。
「私達に敵意は無い!アンナに会わせて欲しい。」
アオイはそう言うと桜紋のパスを掲げた。
しかし、特に反応は無い。ヒスイがぼそっと、
「やっぱりそのパス、全然知られていないじゃないですか…。」
と不満気に言った。
「ダメだ…。戦闘になる。ヒスイ、アルデイ。殺さないでね。ミミ、防御に徹しながら後退して。」
ヒスイとアルデイは静かに刀を抜いた。
ハイエルフ達は戰慄していた。
(マオがあっさりとやられるなんて…。)
マオは使い手としての技術は甘いが身体能力が高く、剣術には定評があった。
(遠距離から一斉に魔法でたたみかける!)
ハイエルフの小隊のリーダーであるバジルはそう決断し、配下に指示をだした。
ハイエルフ達は静かに素早くアオイ達から距離を取った。主にアオイを狙って魔法が放たれた。風と水が暴力となって吹き荒れた。
アオイがヒスイの側に飛び込んでレジストする。
「ヒスイ!」
アオイの掛け声でヒスイはミニレムを3体作り出すとアオイの支持する方向に走らせた。
「ヒスイ、今!」
駆け出したミニレムはアオイの掛け声とともに爆散した。ミニレムの破片はハイエルフ達を無力化していた。
「6人倒れた!」
その間にアルデイが3人のハイエルフを峰打ちにしていた。
バジルは戦慄していた。こうもあっさりと小隊を無力化させられるとは!
「我々の負けだ。部下の命は助けてほしい。」
バジルは木陰から姿を現すと持っていた剣を放棄した。
「いやいや、私達も争う気は無いよ。アンナに会わせてほしいだけ。」
「いや、しかしそれは…。」
「アンナ!どうせ見てるでしょ。アオイだよ。竜の魔装を返してもらいに来た!」
アオイは空に向かって叫ぶとバジルを振り返った。
「反応があるまで、ちょっと待ってても良い?」
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