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52話 覚醒

書いていてヒスイが可哀想になりました…。

 ヒスイは屋敷の庭にすももが実っていたのを見ていた。ヒスイの母はヒスイが風邪を引いた時にすももの果汁にはちみつを入れた飲み物を作ってくれた。


(そうだ。アオイにあれを作ってあげよう。)


 ヒスイは屋敷の庭ですももを摘むことにした。


(アオイ、ちょっと待っててね。)


 それは偶然だった。屋敷の庭ですももを摘んでいるヒスイをジュールは見つけてしまった。


(あいつは!!)


 忘れもしない!ジュールにとてつもない屈辱を与えた小娘の片割れ!


(見つけたぞ。もう1人はどこだ?)


 ジュールは風魔法を使って周辺を探知した。


(何だ?魔素がほとんど残ってないじゃないか!小娘、俺が殺してやるぞ!)


 ジュールはアオイを探知した場所へ風魔法を使って高速で移動した。そして空気の弾丸を作り出すと窓を壊して部屋に飛び込んだ。


(魔法?アオイの部屋に!)


 ヒスイはすぐに気配を察して駆け出した。だが、ジュールの方が一瞬早くアオイの元へたどり着いた。


「アオイ!」

「動くな!」


 ジュールはアオイに剣を突きつけながらヒスイへ言った。


「この前の屈辱を晴らしてやる。」

「やめて。お願い。やめてください。」

「ははは、こいつが苦しみながら死ぬのをそこで見ていろ!」


 ジュールは抵抗できないヒスイに真空刃を放って、右腕に傷をつけた。ヒスイが右手に持っていたすももが床に落ちた。


「うっ。」

「やめろ!ヒスイに手を出すな。」

「なんだ、お前。俺に命令するのか?気が変わった。先ずはあいつを裸に剥いて、いたぶってから殺してやる。その後にお前だ。」


 ジュールはそう言うとヒスイの周りに風の渦を作り出した。その風の魔法でヒスイのシャツが破れて下着が露わになる。そして、その肌から血飛沫が飛んだ。


「やめろ!ヒスイ!」

「アオイ、私は良いから動かないで!」

「そうだ!お前も動くなよ!!これはどうだ?」


 ジュールの風魔法は更に強さを増した。ヒスイの服はズタズタに引き裂かれ、その肌も切り刻まれていた。


「あああっ、」

「やめろ!!」

 それは突然だった。アオイの右手が暗く暗く闇に包まれた。そしてジュールは唐突に壁へ叩きつけられ、そのまま貼り付けられた。


「う、動けない!」


 ジュールは心の底から恐怖を覚えた。アオイは宙に浮かび上がり、ジュールのことを見下ろしていた。アオイが負っていた傷はきれいに消えていった。


「あ、あ、あ。」


 アオイの姿は人ならざる者であると感じられた。それは美しさ、儚さ、畏怖の対象であった。そして、


 ジュールが最後に感じたのは暗い闇に包まれ、身体全てが押しつぶされる感覚だった。

 



「ヒスイ!」


 アオイはぼろぼろになったヒスイに駆け寄るとヒーリングを行った。ヒスイの傷は瞬く間にきれいに消えていった。


「ヒスイ!」


 アオイは強く強くヒスイのことを抱きしめていた。


「アオイ、痛いです…。」

「うん、でも…。」


 アオイはヒスイの存在を確かめるように強く強くその身体を抱きしめた。


「アオイ、闇の魔素が戻ったんですね。」

「うん。」

「身体の傷も元に戻りましたね。」

「うん。」

「アオイ、痛いです…。」

「うん。」


 ヒスイもアオイの存在を確かめるように強く抱きしめ返していた。

 


「ヒスイ、とっても刺激的な格好だね。」


 ヒスイの胸は魔装で隠れていたが、下半身はほとんど覆われているものが無く、裸同然だった。


「や、や、見ないでください!」

「うん、とてもきれいなお尻だ!傷が残らなくて良かった!」

「怒りますよ。」


 アオイはヒスイに近くと優しくそっと抱きしめた。


「ヒスイ、本当にありがとう。そして心配をかけたね。」

「アオイ、何度も言います。もう離れないでください。ずっと一緒が良いです。」


 アルデイの屋敷にあった服に着替えてヒスイはアオイの寝ていたベッドに腰掛けた。アオイも隣に座った。


「あれは闇の魔法ですか?」

「そう。かなり高度な魔法だから私も集中しないと使えないんだ。ブラックホールって私は呼んでいる。高高重力で対象を押しつぶして異空間へ放りこむ。」

「…。」

「私の闇魔法はルークから譲渡されたものなんだ。悲しい悲しい業に染まった魔法。だけと私は大切なものを守るためになら使うことは躊躇わない。ヒスイにも宿っている力だけど、使う使わないはヒスイの自由だと思う。」

「はい。私ももし同じ事があったら大切なものを守るために躊躇なく使うと思います。」


 ヒスイはアオイの肩に頭をもたせかけた。


「アオイ、私はアオイの苦悩を半分もらうと言った事。本気ですからね。」


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