50話 蠢めく者達
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「ディスターブ、アオイは見つからないか?」
「200の兵を動員してますが、魔素の痕跡も消えていまして。未だ見つかりません。」
「引き続き捜索を行うように。王都の騎士団にも動きがあるようだ。そちらも警戒せよ。」
ブエノスはもうアオイは見つからないと感じていたがディスターブには捜索の継続を命じた。
(騎士団の動きと同調されたら厄介だ。先手を取りたいものだな。)
ブエノスはアオイとの戦闘で重篤な傷を負っていたが、光の使い手によるヒーリングを受けて回復していた。
(だが、魔素が完全に戻るまで後2日はかかるか…。)
アオイがあれほどの力を秘めていたことはブエノスにとっては誤算だった。
(闇魔法は使えないはずだが…。なのにあの強さか…。)
ブエノスは静かに目を閉じた。
(策を講じなければならないな…。)
ディスターブは30歳、口が上手く、小心な男だった。20歳の時にバールミン侯爵家の1人娘を言葉巧みに口説き落とし、婿養子としてバールミン侯爵家へ籍を移した。その後、スガル平地の戦によってバールミン侯爵家の実子である2人の息子が戦死したことにより、次の領主候補と目されていた。
しかし、バールミン侯爵はディスターブを評価していなかった。ある日、バールミン侯爵はディスターブを自邸に呼び出し、侯爵家を継がせる意思がないことをはっきりと伝えた。そこからディスターブの奇行が始まる。
かねてより親交があった混沌の魔団をバックにして領地内で亜人、特に子供を狩り出した。混沌の魔団が多くの子供を裏で買っていたからである。ディスターブは魔団が何の目的で子供を必要としているかをよく知っていた。
子供を拐かす度に多くの金と力がディスターブのものとなった。この行いはディスターブの私腹を肥やすために行われていたのだが、バールミン領には先のスガル平地の戦で命を落とした兵士が多かったことと、大森林に接しており魔物の被害が多かったこともあり、民衆の中にはカルト的に亜人を狩るディスターブを指示する者もいた。
だが、この行為はバールミン侯爵の知る事となり、怒りを買った。ディスターブは更迭され、謹慎とされた。そこに現れたのがブエノスだった。
「お前を領主にしてやろう。」
ブエノスは亜人狩りに賛同する兵士や騎士をまとめあげ、クーデターを起こした。ディスターブは解放され、逆にバールミン侯爵はディスターブに幽閉された。
しかし、ディスターブは小心だった。王都へ事が露見することを恐れてバールミン侯爵を殺せずにいた。
「どいつもこいつも俺の邪魔ばかりする!」
ディスターブが執務室の机を蹴り上げた時、扉がノックされた。
「なんのようだ!」
執務室へ入って来たのはジュールだった。ディスターブからすると小娘2人の始末もできない能無だった。
「王都より騎士階級と思われる集団が領都に侵入したとの報告を受けましたのでお知らせに…。」
ジュールの言葉は最後まで発せられなかった。ディスターブが投げたカップがジュールの額にあたり、血が滴った。
「ふん、小娘も始末できない能無しが!どの面を下げてここへ来た!うせろ!」
ジュールは一礼して執務室を離れた。ジュールはディスターブの態度に失望しながらも挽回しなければ今後の出世はないと感じていた。
(あの時の屈辱は忘れないぞ!あの小娘どもが!!俺が必ず見つけだして屈辱的に殺してやる!)
これは一緒に行動を共にする者のいない孤独な決意だった。




