36話 後始末
騎士の名はジュールといった。バールミン領C級騎士。
「私はアスラ王国情報部A級騎士、ヒスイと申します。ベルク国王より密命を受けて行動してます。私達への攻撃はアスラ王国への反逆と捉えられても仕方のない行為ですよ。」
「私は命令を受けて行動しただけだ!それにおまえの身分も怪しいものだ!もう1人の女だってD級騎士なものか!どうせ、魔物の類だろう!」
ヒスイはため息をつくとアオイを振り返った。
「D級はやっぱり無理がありますよ。」
「そんなことないだろ。こんな可憐な少女にはD級が似合っていると思うよ。」
ヒスイはまた、ため息をつくと、
「そうですね。あれは魔物です。このまま何も喋らないと喰われますよ。」
「ちょっとヒスイ…。」
「ふん、俺は何も喋らないし、喋ることもない!」
兵士達は村で集められた傭兵あがりの連中がほとんどで何も知らなかった。逆に襲撃の詳細を知らされていない事に不満を持っていたくらいだった。
「しょうがない。時間もかかるし、解放しちゃおう。バールミン侯爵に事情を聴くしかないね。一応、こいつのパスは預かっておこう。」
「そうですね。それが良いでしょう。」
ヒスイはそう言うとジュールからパスを取り上げて拘束を解呪した。
「くそ!覚えていろよ!」
ジュールは月並みなセリフを吐き、走り去っていった。
「オンジンさん、私達は子供を拐かす極悪人ということになっていたよ。本当にごめん。狙われているのは私達。なので別行動にした方が良いかと思って…。」
「いや、アオイさん。あなた達の強さはこの目で見ました。私はあなた達といる方が安全と判断します。なので、できたら領都まではご同行してもらいたいです。ここで別れると皆、悲しみますしね。」
「うん、わかった。全力でこの商隊は守るよ。」
「それでですね…。ジムのことなんですが、大森林まで連れていってやってほしいんです。その…、ジンライ様の魔装の修理ですか?ジムにも手伝わせてやってほしいんです。何卒お願いします。」
そういうとオンジンは深く頭を下げた。
「それは私達も望むところだけど良いの?」
「はい、ジムとも話ましたし、何よりガムからお願いされましてね。」
「ありがとう、オンジンさん。ジムのことは私達が責任を持って面倒を見るよ。」
2人はその日、結局オンジン達と同じ宿に泊まることにした。宿は大部屋だったため、他の宿泊客を巻き込んで酒盛りが始まる。如何にアオイの剣技が華麗だったか!如何にヒスイの魔法が優美だったか!話題が尽きることはなく、アオイとヒスイはむず痒い思いをした。結局、その日は夜遅くまで2人の武勇譚が語られていた。




