26話 2人の時間
アオイにはそこからの記憶がない。朝起きるとベッドで子供のようにヒスイに抱かれていた。
「あたた。頭痛いし、気持ち悪い…。」
アオイはすぐにヒーリングで二日酔いを治すと改めて状況を確認した。
(寝着に着替えてる。ヒスイが着せてくれたのかな?あー、でも心地よいなあ。柔らかくて安心する。それにとても良い匂いがする。)
アオイはヒスイの柔らかさをもう少し感じていたかった。ヒスイを起こさないようにアオイは自分の頭をヒスイの胸元へと持っていくと顔を埋めた。そして大きく息を吸い込んだ。
「はあ…、とても良い匂いがする。」
「アオイはとってもお酒臭いですけどね!」
上からヒスイの冷たい声が聞こえて来た。
「ヒスイさん、おはようございます。いつから起きていらっしゃったのですか?」
「アオイがヒーリングしている時からです。」
「これはその、ヒスイがあまりにも良い匂いだったので…。」
言い訳をはじめたアオイをヒスイは遮った。
「私には良いんです。」
「へ?」
「だから私には良いです!アオイは昨日、ガムに自分の胸を押し付けてました。あれはダメです!男の人にああいうことはダメです。将来的にアオイに良い人ができたらあのようなこともするかもしれませんが…。いやいや、やっぱりダメです。悲しくなるので本当にやめてください…。」
「わかったよ、ヒスイ。ごめん。自重するよ。」
ヒスイのあまりの剣幕にアオイは素直に謝った。
「わ、わかってくれれば良いです。」
「でもさ、ヒスイには良いんだよね。もう少しだけ、このままにしてても良いかな?」
アオイはちょっと甘えた声でヒスイを見上げながら言った。
「よ、良いですけど変なことはしないでくださいね。」
「うん、わかった。変なことしないからもう少しだけこのままで居させて。」
「アオイはしょうがないですね。少しだけですよ。」
ヒスイはアオイの頭を抱きながら、この時間が長く続くことを祈っていた。




