21話 アオイって呼んでよ。
2人が風呂に入る少し前、ガムとジムの2人は先ほど食堂にいた女の子達の話をしていた。
「2人とも可愛かったなぁと。天使みたいだった。」
「良い身体してたよね。見惚れちゃったよ。」
「ジムはどっちが好みだ?」
「そうだな、僕は髪の長い方かな。ガムは髪が短い方だろ?」
「よくわかるなあ。」
たわいの無い会話である。2人はそこへ会話の中心であった女の子達がタオルを持って風呂へ向かうのを見てしまった。
2人は駆け出しの傭兵である。まだ実戦経験は無い。今回、護衛の仕事に付けたのはガムの父親のコネだった。王都の周辺は近衛騎士団が警らに当たるため、ほとんど危険は無い。彼の父親もそこを見越して彼らを商隊の護衛に押し込んだのだ。普通、任務についた傭兵は無用なトラブルを避ける。悪い評判がたつと、次の仕事に差し障るからである。だが2人は駆け出し、しかも思春期の情熱に突き動かされてしまった。
「ジム、ちょっとだけ覗いてみないか?」
こうして2人は女風呂に忍びこむ決意をした。ガムは風魔法で風呂には女の子2人だけなことを確認した。脱衣所へ続くドアはジムの地の魔法で固定して開かなくし、ガムの風魔法で気配を消しながら風呂に続くドアの前に来た。
風呂の中から女の子達の話声が聞こえてくる。
「ジム、ドアを開けるぞ。」
ガムはそおっと少しだけドアを開けた。ドア越しに風呂を見ると2人が湯船に浸かっているのが見えた。
「くそ、見えないな。」
「ねえ、僕にも見せてよ。」
2人でドアの隙間にへばりついた。身体は湯船の中で見えないが、女の子達の顔は見えた。お湯に温まって桜色にそまった顔がとてもきれいだった。
「何てきれいなんだ。」
「おい、ジム。髪の短い方が立ち上がるぞ!」
2人は目を皿のようにして凝視していた。
ガムとジムはアオイの裸を見たはずだった。しかし、
「うおー、目が目が痛い!!」
立ち上がったアオイは魔素を込めて光の玉を作り出し、強烈に光らせた。ヒスイには影になるようにアオイの身体の前で。
「ふう、見せつけてやったぜ!」
ヒスイはすぐに目を押さえて転がっている2人に近づくと地の魔法で砂に埋め、硬化させていた。特に目は見えないように厳重に。かろうじて息ができるくらいに。
「アオイさん、びっくりしましたよ。本当に見せつけるのかと思いました。」
「ふふん、そんなに簡単には見せないよ。それはそうとヒスイ、変なこと口走ったよね。「私以外は見ちゃダメです!」って。大丈夫、ヒスイ以外には見せないから。」
アオイは嬉しそうにニヤニヤしながらヒスイに言った。
「忘れてください。」
「え、」
「忘れてくださいって言ったんです!」
「ヒスイさん、私に対して独占欲が出て来たのかな?」
「そんなんじゃありません。」
「じゃあ、何なの?」
アオイはヒスイの頬に手を当てながら優しい声で聞いた。
「だから、忘れてください!ああ、そうだ!頭叩いたら忘れるかもしれない!」
「そうだ!じゃないよ。ヒスイは物騒だな。」
アオイはヒスイの頬に当てていた手をヒスイの唇に当てた。
「よし、忘れてあげる。ただし、交換条件がある!」
「な、な、なんですか?」
「ずっと気になってたんだよね。ヒスイ、私のことアオイさんって呼ぶよね。アオイって呼んでよ。」
「だ、だ、だって恥ずかしい。」
「「私以外は見ちゃダメです!」」
「わ、わ、わかりました。わかりました。アオイさんのことはそう呼びます!」
「わかって無いじゃないか!何て呼ぶって?」
「アオイ…。あー、わかりました!アオイ!これでよいですか?」
「うん、これからはアオイって呼んでね。」
アオイは満足気にヒスイの頬から首筋までを撫で上げた。
「もう、アオイ。そろそろ服を来ましょう。湯冷めしちゃいます。そして、服着たらこいつらを殺りますよ!」
「はーい、ヒスイ。わかったよ。」




