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お母さんの我儘なお誘い


今日からGW。来週の日曜日まで実に九連休だ。今の所、来週水曜日に学校の花壇に水やりに行く以外、予定はない。

 本当は健吾や雫と遊ぶつもりで居たが、クラスの女の子からの厳重なお願い?が有って一人で過ごす事になった。健吾位良いだろうに。


 土曜日は、妹の美麗と一緒に街に夏服の買い物出かけた。一応、妹の洋服を一着とそれに合う靴を一足買って、俺も服をシャツとパンツを一着ずつ買った。


 久しぶりに兄妹で外に出かけたので、一緒に昼食も摂った。



だけど…。家に帰って来るまでに、声を掛けられて逃げたのが十五人、その内買い物袋に勝手に入れられた名刺がそれぞれ十枚、強引に話そうとする人が五人いた。


 ターゲットは俺達二人らしい。俺が男だと言ってもナンパ避けだろうとか言われたりして信じてくれなかった。


 ナンパにも十組ほど遭った。片端から投げ飛ばして、いや頭を下げて逃げて来た。やっぱり外は怖い。



 やっと家に着くと

「お兄ちゃんと一緒に歩くと大変だわ。段々酷くなって来る。見てお兄ちゃんの所為で洋服の紙袋が名刺だらけよ」

「何言っているんだ。美麗が可愛過ぎるからだろう。俺の紙袋だって同じだよ」

「鏡で自分の顔見たら」

「酷い!」



「あらあら、どうしたの。いつも仲の良い二人が」

「お母さん聞いて。お兄ちゃんのお陰で、十五人のスカウトに声を掛けられて、十組のナンパに会ったのよ。酷いと思わない」

「嘘だ、みんな美麗が可愛いから寄って来たんだよ。俺の所為じゃない」


「あらあら。それは大変だったわね。ところで麗人、明後日月曜日なんだけど、スタジオに一緒に来てくれない?」

「えっ、何で。おれなんか行ったら迷惑でしょ?」

「良いの。麗人にも撮影現場とか知って見て欲しいから」


 どういう意味だろう。でもお母さんのお願い断る事なんか出来ないし。


「分かった。いいよ」


 次の日は道場に行っていつもより長く鍛錬した。最近心が乱れている気がする。



 月曜日、いつもよりのんびりと午前八時に起きて、顔を洗ってからダイニングで朝食を取っていると

「麗人、午前十時にマネージャの薄井が迎えに来るから出かけられるようにしておいて」

「分かった。洋服はいつものでいい?」

「ええ、お母さんと美麗が見立てた洋服ですもの。どれを着ても素敵よ」


 少しだけ不安。



 午前十時十分前に薄井さんが車で来た。決して家のインターフォンは押さない。外でいつも待っている。


「じゃあ、美麗、行って来るからお留守番していてね」

「はーい」

「さっ、麗人行きましょうか」


 お母さん、何でお兄ちゃん連れて行ったんだろう?



 俺は外に出ると薄井さんが車の外に出て来た。


「薄井、今日は麗人も一緒だから宜しくね」

「は、はい」


 長男の麗人君を見て、早乙女花蓮が若かった頃を思い出してしまった。似て居るとかじゃない。あの若き日の霧島花蓮(早乙女花蓮の旧姓であり芸名)そのものだ。この子をスタジオに連れて行くなんてどういうつもりだろう。



 俺は、お母さんの意図が分からないまま、薄井さんが運転する車に乗って、外の景色を見ているとやがて、渋谷にあるスタジオに着いた。地下駐車場らしい。

「麗人、一緒に来て」

「うん」


 エレベータを使って、何階か分からないけど上った後、廊下を歩いているとみんなが驚いた顔をしている。


お母さんって凄いのかな。俺は芸能界という世界を全く知らない。興味無いと言った方がいい。だから見るものが全て珍しかった。



 薄井さんと一緒にお母さんが歩いていると向こうから俺には理解出来ない服装をした男の人が歩いて来た。


「やあ、花蓮ちゃん、撮影…。えっ?!」

「何を驚いているの?」

「だって、若い時の花蓮ちゃんが」

「ふふっ、可愛いでしょう。私の息子よ」

「え、ええ、えええーっ!」

 口から泡を吹いて白目を向いて倒れた。大丈夫かな?


「さっ、無視して行きましょう、麗人」


 少し歩いたところで部屋に入れさせられた。

「花蓮、お化粧係と衣装係呼んでくるから」


 そう言うと薄井さんが部屋の外に出た。


「お母さん、俺…」

「心配しなくて良いわ麗人。偶にはお母さんの仕事場見せてあげようと思っただけよ」


 色々なバッグと箱を持った女の人が入って来た。

「花蓮さん。えっ?!」


「ふふっ、驚かなくていいわ。私の息子よ」

「む、息子。え、ええーっ」

 白目を向いて倒れそうになったので、薄井さんが支えて


「そんなに驚かないの」

「で、でも。デビュー当時の花蓮さんが…」

「ふふふっ、綺麗でしょう」


 衣装係という人も来たけど、同じ反応だった。お化粧するとお母さんが別人の様に見える。凄いな化粧って。


 何処に行っていたのか、薄井さんが

「花蓮、出番よ」

「分かったわ。麗人一緒に来て。薄井、麗人にスタジオの隅で撮影を見せてあげて」

「はい」


 俺は、薄井さんとお母さんと一緒に撮影現場という所に入って行くと一斉に俺の顔を見て驚いている。


「「霧島花蓮だ」」

「我々は夢を見ているのか」

「でも現実だ。どういう事だ」


「花蓮さん、これは」

 とても偉そうな人が聞いて来た。


「ふふっ、私の自慢の息子よ」


「「「「ええーっ!!!」」」


 スタジオが壊れるんじゃないかという位の大きな声が上がった。

「何を驚いているの。早く始めましょう」

「あ、ああ。皆準備急げ」

「「「は、はい」」」



 俺は、大きなカメラの後ろの壁の方に薄井さんと立ちながら

「皆さん、どうしたんですか?」

「ふふっ、その内分かるわ」


 早乙女花蓮、いえ霧島花蓮考えたわね。流石だわ。


 休憩を入れて、二時間近く撮影をしていた。お母さんは疲れた様子が無いけど俺は疲れた。周りの視線が痛い。凄い数の視線を浴びている。

 誰かが俺に声を掛けようとしても薄井さんが制してくれるけど。



 撮影が終わると

「麗人、控室で昼食の用意があるわ。それを食べたら、次の所へ移動よ」

「うん。でもどうしてお母さんは俺を連れて来たの?」

「偶には可愛い麗人と一緒に居たいのよ。お母さん、普段一緒に居れないでしょう」

「それはそうだけど」



 一時間位の休みの後、別の撮影現場に車まで移動した。そこでも同じ反応だった。はっきりってどっと疲れた。

 薄井さんにお母さんと一緒に車で送って貰った時には、もう午後七時を過ぎていた。


 GWだからか、お父さんも家に居た。


「花蓮、麗人を職場に連れてったんだって」

「ええ、偶には麗人と一緒に居たかったから」

「それはいいけど。大丈夫なのか?まだ早いんじゃないのか?」

「大丈夫よ。まだ高一だもの」

「でも君は中学から芸能界に居たじゃないか」

「それは私の事でしょ。麗人は違うわ。でも私がどんな所で仕事をしているか位、知って貰ってもいいでしょう」

「それはそうだが」

「それより夕飯にしましょう」

「それはいいが」


 お父さんとお母さんは偶に口論?するけど、とても仲がいい。今日も一緒にお風呂に入っている。

 

 俺もお風呂入ったら寝るか。美麗は寝たのかな。明後日学校だけど、明日は道場に行くか。でも健吾達とも会いたいし。連絡を取ってみるか。


―――――


 書き始めは読者様の応援が一番のエネルギーです。

 まだ★が少なくて寂しいです。投稿開始段階で少ないと心が折れます。評価してもいいけど★★★は上げないという読者様、★★でも★でも良いです。頂ければ幸いです。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると次話書こうかなって思っています。

宜しくお願いします。


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