どうする保護者会
桜庭先生は、俺を職員室に入らせると
「早乙女君、そこのソファに座っていなさい」
「はい」
俺が教室に入って行くと先生達が一斉に俺を見た。ジッと見た後、一度目を離すが、机に向って仕事をする振りをしてチラチラ見ているのが分かる。
でも先生達って、まだこんなに残っているのか。授業終わっても色々する事有るのかな?部活担当の先生は仕方ないにしても他の先生は帰っても良さそうなものだけど?
先生達の苦労も知らない俺が好き勝手に思っていると桜庭先生が俺の所に来て
「早乙女君、少しそこで時間を潰しなさい。今帰っても家まで付いて行かれてしまうわ。うちの学校の生徒がストーカーで全員逮捕なんてさせたくないのよ」
そんな事有るか!
「あなたは嘘と思っているかもしれなけど、一度あなたの家が知れたら大変よ。それにお母様の事も有るでしょう」
あっ、お母さんの事忘れてた。そうか。桜庭先生そこまで俺と家族の事を。
「先生、すみません。色々考えて頂いて」
「ふふっ、いいのよ。私は君の担任だから。でもその内少しわね」
なんだ、少しわねって?
俺は美麗にスマホで連絡した。家には帰っていたらしく、理由と一緒に家に帰るのが遅くなると伝えた。
しかし、明日からどうしよう?こんなのずっと続けられたら堪らない。
この季節は明るい。職員室の窓から外を見ているとバスケ部の練習が終わったのか、六時半に健吾が出て来た。俺は、桜庭先生に
「バスケ部が終わって、健吾が帰るみたいなので、一緒に帰ります」
「そう、残念だわ。もう少し待てば私が一緒に帰ってあげたのに」
「いえ、健吾と帰ります」
先生何考えているんですか?
俺は、昇降口で履き替え……。下駄箱の中が一杯だった。参った。朝、雫に貰ったビニール袋に、入っていた可愛い封筒を全部入れると急いで校舎を出た。
まだ、校門の手前で仲間と一緒に歩いている。
「健吾!」
「おう、麗人か。どうしたんだこんな時間まで?」
「実は…」
今日の水やりの時の事と桜庭先生の機転の事を話すと
「そりゃ、大変だったな」
「小早川、そいつが今有名な早乙女麗人か?」
「先輩、そうです」
「ふうん、確かになぁ。俺も惚れそうだ」
止めてくれ。身長が俺より二十センチ近く大きい人に言われると怖くなる。
「先輩、麗人を揶揄わないで下さいよ。こいつ今、結構大変なので」
「そうか。じゃあ、俺は先に行く。早乙女、バスケ入るならいつでもいいぞ」
そう言うと先に早足、いや歩幅が違う。で歩いていった。
「健吾悪かったな」
「いいって。あの先輩、部員の面倒見が良くてさ。部内でも人気があるんだ。ちなみに彼女も居るから安心しろ」
「…………」
どう返していいか、分からない。
「麗人、そう言えば、今週の土曜日、保護者会があるだろう。お母さん来るのか?」
「来ないと思うんだけど。中学の時の事も有るし」
俺が中学一年になって初めての保護者会の時、俺の授業姿を見たいからとお母さんが、仕事を調整して来たのは良かったが、その当時のお母さんは、売れっ子中の売れっ子で、教室のドアを開けて、中に入ったとたん、授業ではなくなってしまった事が有った。それ以来、中学の二年と三年の時は来ていない。
「そうだな、あの時は凄かったな。生徒全員が後ろを見て、他の生徒の保護者もみんな、麗人のお母さん見ていたものな。先生の話なんか誰も聞かなくなって、仕方なくお母さん帰った事が有ったな」
「ああ、だから来ないと思うんだけど」
家に着くとドアの音に気付いたのか、
「お兄さん、お帰りなさい」
「ただいま美麗。お母さん帰っている?」
「まだ、今日も遅いんじゃない?」
「そうか」
夕飯は大体美麗が作ってくれている。勿論お母さんも作れるけど回数が少ない所為か、味のスキルは上がらない様だ。
俺達が夕食を食べているとお父さんが帰って来たので一緒に食べた。
夕食を終えてお父さんが先にお風呂に入っている間、美麗と一緒にリビングでテレビを見ていると
「ただいまぁ、帰ったわよ」
俺達は玄関に行って
「「お母さん、お帰りなさーい」」
お母さんは一度、部屋に戻って着替えた後、ダイニングに来て冷蔵庫から水のパックを出して一度飲むと
「麗人、今度の土曜日、保護者会よね。お母さん行きたいわ」
俺は手に持っていた紅茶のカップを落とそうになってしまった。
「お母さん、中学一年の時の事忘れたの?」
「覚えているわよ。だからあの後行っていないでしょう。今回も麗人の高校一年の姿見たいわ」
「いいよ、俺の高校の姿なんて。来ないでよ。今大変なだから」
「大変?」
お父さんが、お風呂から出て来てダイニングに来た。
「何の話だ?」
「今週の土曜日にある保護者会の話。高校生になった麗人の姿を見たいから行きたいって言ったら、来なくていいって言われたの。あなたも行きたいわよね」
「麗人の保護者会かぁ。今度の土曜日だったら父さん空いているぞ」
「えっ?!」
誰も来なくていいのに。
「あら、じゃあ二人で行く?」
「お母さんもお父さんもちょっと待って。お兄ちゃん、今学校で大変なんだから」
「大変?麗人苛められているのか?」
「その反対よ。お兄ちゃん説明したら」
美麗に言われて仕方なしに今日の学校での出来事を話した。
「あらあら、流石はお父さんと私の子ね。凄いじゃない麗人」
「お母さん、俺の身にもなって見てよ。明日からどうすればいいか困っているのに」
「でも、そんな事先生に言って止めさせたら」
「先生に言って止めさせられるんならそうしたいよ」
「今から、校長先生に電話しましょうか」
「いや、それは流石に。あっお母さん」
思い立ったら、何とかやらで、もう午後十時を過ぎているのに校長先生に電話をしている。俺明日から大丈夫かな?
「ええ、そうです。教育者として、生徒を守るのは当然ですよ。しっかりお願いしますね」
「はい、宜しくお願いしますね。校長先生」
「麗人、校長先生。明日から早速対応してくれるそうよ。だから土曜日は私も」
「「「お母さんは駄目!」」」
「三人共酷ーい。お母さん泣いちゃうから」
「泣いても駄目。お母さん女優でしょ」
「もう、仕方ないわね。お父さん、土曜日はお願いしますね」
「分かった」
でも、ちょっと位いいかしら。
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