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体育祭は大変な事に その三


 クラスの皆のお陰で昼休みはゆっくりと休む事が出来た。皆も見張りを交代しながら昼を取ってくれた。ほんと感謝しかない。


 そして午後の部が始まる予鈴が鳴った。


「麗人、行くぞ。おい皆、ガード頼む」

「「「分かった」」」



 教室の出入り口の生徒達を退かして廊下に出ると男子生徒女子生徒のアーケードが出来ている。なんなんだ、これは?


 俺達が人にぶつからない様に歩いていると


―お綺麗ねぇ。

―うん、私もう立っていられない。

―もう、身も心を早乙女様に捧げるわ。

―あーっ、体が疼くわ。


―おい、俺今日から女になる。

―俺も考えていた。

―いや、今はボーダーレスだ。

―そうだ、男同士だって。


 もう耳を塞ぎたくなった。


 なんとか、Aクラスの場所に座るとクラスエリアの周りは人の山。


「みなさーん。自分のクラスの場所に戻りましょう。午後の部が始まりますようー。……誰も聞いてくれない」


 体育の先生と桜庭先生が来て

「他のクラスの生徒は自分のクラスの場所に戻りなさい!」

「「「「えーっ!」」」

「「少し位!」」


「駄目です。競技が始められません」


 他のクラスの生徒がブツブツ言いながら自分のクラスの場所に戻った。



「はい、それでは、午後の部始まります。最初は…。あっ!組対向男女混合リレーだ」


―おーっ!!!!

―きゃーっ!!!!


「健吾、これって人気あるのか。凄いな声援が」

「麗人、お前がスタートラインに居るからだよ」

「そうなのか?」


 学年毎に各クラス五人が出て走る。最初の四人は百メートル。アンカーが二百メートル走る男女混合リレーだ。俺は三番目だ。先生と来賓が座っている場所側だ。藤堂も三番目で走るらしいが、やたら俺を睨んでいる。どうしたんだ。まだ考査の事気にしてんの?



 パーン!


 第一走者がスタートした。健吾が第一走者だ。今の所AからFまでほとんど変わらない。あっ、Bクラスが早く第二走者にバトンを渡した。Aクラスは二番目だ。


 俺もスタートラインに立つと内側に藤堂が立っている。

「お前には負けないからな!」


 なんだこいつ?



 コーナーを曲がったところでBクラスとAクラスの走者が並んだ。近付いて来た。俺はゆっくりと助走しながら前走者の女子にスピードを合わせて走るとバトンを渡され…。あれっ?バトン離してくれない。女子がバトンと一緒に俺の腕も触った。


「早乙女君、私の気持ちを受け取って」


 それだけ言うとバトンから女子の手が離れた。藤堂は少し前を走っている。もっと早くバトンを…と言っても仕方ない。全力で走り始めると髪の毛が全部後ろに流れた。


「「「「きゃーっ。素敵ー!」」」」

「「「「おーっ、惚れるー!」」」


―私、もう駄目ー。

―美しすぎるー。


 何故か女子生徒がバタバタと倒れて行く姿を横目で見ながらコーナーの立ち上がりで藤堂に追いついた。


「「「抜けー。早乙女ー!」」」


 そのままAクラスの座り場を全力で駆け抜けて次走者にバトンを渡し…。あれっ、走っていない。

「早乙女君。君の気持ち受け取るね」


 何故かバトンを頬に擦りながら走って行った。またBクラスが先頭だ。ラインから内側に入って周りを見ると何故か女子生徒達が随分横になっている。皆ご飯食べ過ぎて眠いのかな?


 リレーは第五走者の誠也が挽回してAクラスは無事一位になったのだけど…。


「競技を一時中断します。救護班」


 どうかしたのか?


「救護班。急いで」

「救護班、こっちも」

「皆、倒れている生徒の頭に冷たいおしぼりを乗せて」



 俺は、その様子を見ながら自分のクラスの場所に行こうとすると健吾とまだ息切れしている誠也がやって来た。


「麗人。やってしまったな」

「俺も流石に驚いた」

「えっ?俺の所為?」

「麗人、いい加減に自覚しろ!」

「全校生徒に麗人の存在が分かってしまったな。来週からが大変だ」

「健吾、誠也」


 中学の時と同じだ。またこれから三年間あの生活を送るのかな。不登校になりそう。



 三十分遅れで再開された午後の部の競技も無事?終わりクールダウンの体操も終わった所で


「麗人行くわよ」

「急げ」

「ああ」



―あれ?早乙女様は?

―早乙女たんどこ行ったの?

―早乙女様ー。


―おい、俺の大切な男子は?

―誤解産むからそれ言うな。

―いや、誤解されても構わん。

―探すぞ。

―おーっ。




 俺達は、桜庭先生に頼んで生徒指導教室に来ていた。

「麗人持って来ているわよ。早く着けて」

「でもなぁ。またこれを着るのか」


 目の前に有るのは長い髪のウィッグ、スカート。ブラウスだ。


「麗人時間が無い。早く」


 仕方なく、雫をドアの外で見張りさせ、急いで着た。ウィッグは雫に調整して貰った。


「うふふっ、長い付き合いだけど、毎年この時だけは麗人に胸キュンするわ」

「ああ、俺の彼女になって欲しい位だ」

「二人共止めてくれ」

「急いで学校を出るぞ。但し、ゆっくり歩かないとバレるからな。麗人、マスク」


 俺達は、何食わぬ顔で生徒指導室を出て廊下を歩いた。もう各教室には、一杯生徒が戻って来ている。Aクラスは出入り口も窓も生徒で一杯だ。


 俺達は気付かれない様にゆっくりと歩いた。何人かの生徒が不思議そうに俺を見ている。


―ねえ、あんなに綺麗な人いたっけ?

―来賓かな?

―先生には居ないものね。


―おい、マスクしているけど凄い美人が歩いているぞ。

―来賓じゃねえか。

―そうかな。


 もう少しで昇降口だ。そこを出れば取敢えず安全。


―あれ、来賓の人が生徒の上履き吐いている。

―えっ?


「麗人、まだ大丈夫だ」


―あっ、でもあの髪の毛ウィッグじゃない?

―えっ、もしかして!


「麗人バレた。走るぞ」

「ああ」


―きゃーっ、早乙女様が女性に

―美しい。

―やはり早乙女様は女子生徒なのでは。

―きゃーっ!


―俺やっぱりあいつ、いやあの人に告白する。

―えっ、でも。あっ、女だ。

―俺もー。



 校門まで掛け抜き、少し出た所で止まった。


「はぁ、はぁ。なんとか巻いたか」

「はぁ、はぁ。いや油断できない」

「はぁ、はぁ。とにかく駅のおトイレまで急いで行きましょう。ここに居ても目立つわ」


 その後も早足で歩いたが、周りからの視線が凄まじかった。


 何とか、駅の近くにあるコンビニのトイレで着替えを済ませた。



「健吾、雫。ありがとう。助かったよ」

「一年ぶりの早乙女麗奈を見たよ。嬉しかったぜ」

「ふふっ、麗人、女子の時は麗奈だものね。私も良かった」

「…………」


 なんて返せばいいんだ。



「でも、来週からが大変だな。麗人の事が完全にバレた」

「ああ」

「中学の時の様になるわね。でも一ヶ月位で落ちついたでしょ」

「一ヶ月かぁ」

今年も長い六月になりそうだ。


―――――

 

まだ★が少なくて寂しいです。評価してもいいけど★★★★★は上げないという読者様、★★でも★でも良いです。頂ければ幸いです。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると次話書こうかなって思っています。

宜しくお願いします。



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