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体育祭は大変な事に


 もうすぐ体育祭だ。水やりの日を除いて、リレーの為に一、二時間程度バトンパスの練習をする。

 簡単なようで中々難しい。次走者が早く走り始めても遅く走り始めてもいけないし、前走者が、次走者に渡したと思って次走者が握る前にバトンを離すと落としてしまう。

 二百メートルトラックの半分百メートルを男女混合で走る競技だ。問題は、


「私が早乙女君に渡すの!」

「私が渡すのよ!」

「何言ってんの。私よ!」


と思えば

「私が早乙女君からバトンを受けるのよ!」

「私に決まっているでしょ!」

「何言っているの。私よ!」



 俺がリレーの走者と決まったとたん、雫を除く女子全員がリレー希望者に名乗りを上げた。それをじゃんけんで決めて、落着いたと思ったら、こんどは走者順を決めるのにこれだ。


 練習初日から全然話がまとまらない。じゃんけんで負けたクラスの体育祭実行委員の上条さん、またじゃんけんで決めたらという発言でじゃんけんになった。…本当にこれでいいのか?


 じゃんけんが終わった後は、負けた子が勝った子に今にも飛び掛かりそうな勢いで睨みつけるし、勝った子は、ぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。


それを横目に田所が

「麗人、体育祭が楽しみだな」

と言って嬉しそうに笑っている。こっちの身にもなってくれ。




 そして体育祭当日。昨日は大雨でも降ってくれればと祈りながら寝たのに、お天気の神様は俺に意地悪らしい。

 悲しい程、見事に朝から晴れ渡っている。



「はぁ、これじゃあ、決行だな」

 駅で健吾と雫を待っていると


「「麗人、おはよ」」

「健吾、雫。おはよ」

「どうしたんだ。そのがっかりした顔は?」

「だって、晴れているじゃないか」

「どういう…。あははっ、そうか麗人は体育祭が嫌なんだ」

「雫、仕方ないだろう。それより持って来てくれた?」

「勿論よ。これで三年連続、麗人の素敵な姿が見れるわ」

「俺もだ」

「全く、二人共他人事だと思って」



 校門をくぐるとグランドでは、体育の教師や体育祭実行委員が、準備をしていた。もう諦めるか。


 教室に入るとジャージ姿が一杯だ。上条さんは、グラウンドに行っているのか席にはいなかった。


 席に着いて健吾と雫と一緒に話し始めると田所が近付いて来て

「麗人、がんばろうぜ」

「ああ」

「何か元気ないな」


健吾が

「麗人の気持ちになるとそう思うぞ」

「そうなのか」

 

 良く分からないという顔をして自席に戻って行った。



 少しして体育祭実行委員の川上と上条さんが戻って来て直ぐに担任の桜庭先生が入って来た。ジャージ姿だ。お胸の破壊力が凄い。


「皆さん、おはようございます。今日は良く晴れて絶好の体育祭日和です。怪我に気を付けて楽しみましょう」


 先生、朝からテンション高いよ。



 皆で運動靴に履き替えてぞろぞろとグラウンドへ出て行くと他のクラスや上級生も出て来ていた。



 良く晴れた空の下、クラス毎に並んで校長の話を聞いた後、体育の先生の注意事項を聞いてから、生徒会長が台に上がった。

 入学式依頼だ。こんな人だったっけと思いながら見ていると曲に合わせて体操が始まった。


 ショートボブの健康そうな女性だ。ぴょんぴょん飛ぶとお胸がブンブン震える。周りの男子を見ると自分も飛びながら視線は一点に集まっていた。気持ちは良く分かる。


 体操が終わって、自分のクラスが座る場所に戻ると俺の傍に健吾と雫が直ぐに来てくれた。前後周りは女子だらけだけど。


 男子達は仲のいい友達同士で集まっているグループもあれば一人ぼっちの奴もいる。中学の時もそうだったけど何か気が引ける。



 組分けは一年から三年まで通しでAクラスがA組という形でFクラスのF組まで別れる。競技形態は、騎馬戦、棒倒しや組体操以外は基本男女混合で行う事になっている。



「麗人の最初の競技は玉入れだな。三つ目だ」

「俺は逃げたいよ」

「ははっ、諦めろ」


 目の前では、二人三脚が始まっている。ぼーっと見ていると、いつの間にかアナウンスが流れた。

「玉入れの参加者は、スタート地点に集まって下さーい」


「麗人頑張ってね」

「ああ」


 俺は全くやる気の無い声で返事をして集合地点に行くと一年から三年までのAクラスの男女がいる。なぜか急に周りがざわざわし始めた。


―誰だ、あいつ。

―あれが噂の早乙女麗人だよ。

―麗人?女の子かすげぇ美人だな、いや可愛いか。

―どっちなんだ?


―誰?

―知らないの。噂の子よ。

―あんな可愛い女の子が入って来たの。知らなかった。

―違うの。男の子

―えーっ!


 はぁ、ここでもかよ。



 グラウンドの真ん中にある二か所の玉入れに向った。A組の相手はD組だ。かごの周りには、綺麗に球が散らばっている。


 俺が玉入れエリアの下に着くと何故か女子が皆俺の傍に集まっていて、男子は不思議そうな顔をしている。


 相手のD組を見ると皆こっちを向いている。なんでだ?



 先生のピストルの形をした電子銃で開始を知らせると一斉に皆が玉をかごに向けて投げる。

 あれ、やけにAクラスのエリアに人が多くないか。ふとD組のエリアを見ると…誰もいない。


えっ!落ちている玉を思い切り手に持ってA組のエリアからD組のかごに向けて投げている。どうなっているんだ。


そして入らないと直ぐにD組のかごの下に取りに行って、こっちに戻って来てまたD組のかごに投げている。


「おやーっ、これはどうした事でしょう。D組の皆さーん。玉はかごの下から入れましょう。……誰も聞いてくれない」


 俺はA組のかごに玉を投げるが何故か俺が投げて入らなかった玉を女子達が取合っている。

「これは、私のよ」

「何言っているの。これは私が先に取ったのよ」


 そこかしこで女子達が玉の取り合いをしている。


そして俺の周りはというと、何故か俺を見ながら自分で持った球を自分の目の辺りまで上げて俺に渡そうとしている女子で一杯だ。なんなんだ。

男子は呆れて玉入れを止めてしまっている。



 ピーッ、ピーッ、ピーッ。



 先生が笛を吹いて競技が一時中断された。

「D組参加生徒はD組エリアで投げる様に。早乙女君は退場ー!」

「「「「えーっ!」」」」


確かにD組のかごには一個も玉が入っていない。いくら何でも遠すぎる。しかし、俺が退場とは。


仕方なく、俺が自分のクラスの席に戻ると田所や川上達だけでなく男子全員が目に涙を溜めて腹を抱えて笑っていた。健吾も同じだ。女子達は嬉しそうな顔をしている。


覚えてろ。全く!



 ふふふっ、早乙女君。まだまだお楽しみはこれからよ。


 麗人、もうすぐ私が救ってあげる。


―――――


 まだ、体育祭始まったばかりです。


 まだ★が少なくて寂しいです。評価してもいいけど★★★★★は上げないという読者様、★★でも★でも良いです。頂ければ幸いです。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると次話書こうかなって思っています。

宜しくお願いします。


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