平和な世の中
ぱん、ぱん、ぱん。
乾いた音が三発。
鉛の弾が飛び、標的の体に三つの穴があいた。
拳銃を手にした少年。
まだ小学生であるこの子は、喜びのあまり涙を流していく。
「やった……!」
これまでの出来事を思い出して悔しがり。
それが解消された事で安堵をおぼえる。
気持ちが晴れたおかげで体も軽くなる。
「良かったな」
少年によりそってきた男はそう声をかける。
感動にふるえる少年の肩に手をのせて。
銃口をまだ死体に向けたまま、少年は「うん!」と頷いた。
そこには隠しようのない喜びが浮かんでいた。
少年は常に虐げられていた。
学校でも家でも居場所がない。
その元凶と同じクラスの中にいるのは耐えがたい苦痛だった。
もちろん、親もそんな少年の状況は知らない。
つらくて苦しい日々を送っていても気付かない。
さすがに学校に行きたくないとその理由を口にしたこともあった。
もちろん、無駄に終わる。
それどころか、友達を悪く言うなとほざく始末。
もちろん教師の女も同じだ。
問題は無いと本気で思ってるらしく、訴えた少年をしかった。
それだけにとどまらず、ホームルームで「少年がこのクラスでいじめられてるといってます」などと暴露。
それについて周りからの意見を聞き出すなどという暴挙に出る。
当然、首謀者をはじめとした者達は問題を否定。
少年を嘘つき呼ばわりして終わった。
女教師はもちろん、まわりの声を支持する。
そんな事もあり、少年は誰にも何も期待しなくなった。
問題を解決するには自分でどうにかするしかないと。
そうしていきついたのが密造銃だった。
密造銃。
社会にひろまってる問題解決手段である。
救済など決してありえない世の中における、自分を救う唯一の手段だ。
これが出回ったおかげで、社会から虐待などの問題が大幅に消えた。
完全に無くなる事はないが、やらかせばすぐに報復がなされる。
少年が問題の首謀者を殺したように。
密造銃を手にした少年は、首謀者の少女のところへと向かった。
家にいるのを確認してから銃を撃つ。
痛みよりも驚きで目を見開いた首謀者少女は、体から血を流しながら倒れこんだ。
もちろん、家族も同じように処分していった。
目撃者を少しでも減らすためだ。
生かしておいたらどうなるか分からない。
いずれ発見されるだろうが、今はまだ露見するのをふせいでおきたかった。
まだやらねばならない事があるのだから。
「それじゃ次に行こう」
少年に付き添っていた男が促す。
少年に密造銃と仕返しのやり方を伝えた者だ。
事を少しでも成功させるために、男は少年に協力していた。
少年を虐げていたのは、首謀者の少女だけではない。
話を聞かない親も。
同調していた同級生も。
少年を問題児扱いしていた女教師も。
その全てが敵である。
これらをまとめて処分するためには、ある程度の作戦が必要だ。
それを男は伝えていった。
全員を始末するには、それなりに考えて行動しなくてはならないと。
そのやり方を考えて少年に伝えていった。
そんな男に少年は感謝していた。
銃を渡すだけではなく、やり方まで教えてくれてるのだ。
生まれて初めて恩人というものを得た。
尊敬できる大人ともいう。
「でも、いいんですか?」
次の目標に向かいながら、少年は尋ねる。
「なにがだ?」
「手伝ってもらって」
助かるのは確かだが、男に利益があるとは思えない。
それなのに協力して貰えて本当にありがたい。
だからこそ申し訳ないとも思う。
「気にするな」
男は少年の頭を撫でる。
「俺がやりたくてやってるんだ」
それは少年も聞いている。
男が何を目的に密造銃を作ってるのかを。
男もかつて不遇をかこっていたという。
その時の恨み辛みを晴らすために、力を求めた。
そうして密造銃を量産していく事にした。
おかげで、恨み辛みを解消する事が出来たという。
それを自分だけに留めるつもりはなかった。
同じように苦しんでる者は他にも大勢いる。
それらに問題を解決する手段を提供する。
その為に密造銃をばらまいていった。
時には恨みを晴らす手伝いをしながら。
今回、少年に付き添ってるのもそうした活動の一環だ。
たまたま手が空いていたから自らやってきた。
これまでの経験を惜しみなく使っていった。
それを男は自分の使命だと思っていた。
他の誰もやらないから自分がやらねばならないと。
「礼が言いたいなら、見せてくれ。
お前がやり遂げるところを」
男はそれを求めていた。
少年が恨みを晴らし、人生を取り戻す瞬間。
男が求めてるのはそれだけだった。
「うん」
少年は頷く。
男の期待に少しでも応えようと。
その後も少年は敵に回った全てを殺し尽くしていった。
教室一つを埋めるガキども。
その家族。
その教室を良いようにしていた女教師と家族。
これらを全て処分していった。
こうして教室一つが潰滅する。
問題の発生源は消えさり、あとには平穏が戻ってきた。
このような事が、国内各地で行われている。
いや、世界各地でというべきだろう。
それほど密造銃は出回っている。
当初は密造銃を規制しようと政府も動いていた。
しかし、それはすぐに不可能になる。
密造銃を求める者達が身を守るために反撃に出たからだ。
既に密造銃は出回ってる。
善人・悪人の区別なくだ。
そんな状況で密造銃を取り締まったら、一般人の多くから銃を奪う事になる。
悪人共の手に残るのは明らかだ。
対抗手段を無くすだけ、善人や一般人の方が不利になる。
なので、規制など賛成されるわけがない。
実行しようとした者達は全員殺された。
以来、銃は世間に多く出回っている。
悪用される事もあるが、悪事を働いた者への報復にも使われる。
場合によっては予防的に使われている。
日頃の素行の悪い者を殺し、平穏な日々を取り戻す為に。
裏で糸を引いてる黒幕・首謀者を殺す事もある。
こういった場合、被害者にしか実態が分からない事がおおい。
だが、その被害者が密造銃を使って敵を倒していく。
そうする事で、芋づる式に首謀者に辿り着く事もある。
こうした動きに反発する者もいる。
反撃したらそれは悪人と同じだと。
悪人を守るこうした者達も根絶やしにされていった。
反撃や予防を悪事ととらえる危険思考だから。
かくて銃声の絶えない世の中になる。
しかし、以前よりも平和な世界でもある。
悪人がのさばる事もなくなってるのだから。
多少の問題はやむなき事とされている。
別におかしな事ではない。
密造銃による反撃が始まるまでも、悪事は野放しにされていたのだから。
放置されていた暴言・罵倒・挑発・嫌がらせ。
こういった事が排除されていってるのだ。
以前に比べれば格段に過ごしやすくなってる。
人間は暴力でしかいなせない。
理性など持ち合わせていない。
せいぜい、利害損得勘定が働くかどうかだ。
自分が損をすると思えば引っ込む。
得になると思えばどんな悪事もおかす。
そんな人間を少しは大人しくさせるのは、突きつけた銃口くらいしかない。
その銃を、横暴な輩もまっとうな人格者も手にしている。
互いに銃口を突きつけあう事で、人は平穏と平和を手にする事が出来た。
そんな世の中は長く続き、その間に数多くの死体が出る。
だが、不思議とそれはそれで均衡と均整の取れた世の中になっていた。
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