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エピローグ/公演に際して

 子どもの頃から、天才だなんて持て囃されましたけどね。

 自分では天才なんて思ったこと一度もありませんよ。

 ──野坂さん。ああ、町の広報誌の。覚えています。優しそうな方でしたね。天才児なんて持て囃したのもあの人が最初だったんじゃないですか。


 ごく幼い頃は、天才なんて言葉の意味も分からなかったですし、言葉の意味が分かるようになっても、もっとうまく弾けるはずなのになんて考えていました。天才だなんてとんでもないです肩書きだなぁ、なんて。


 明峰だって、あたしの出身校だから今じゃ名門校って言われるそうですけど、一地方校ですからね。県で唯一音楽科を持っていたってだけです。


 もちろん明峰には感謝しています。

 今の経歴があるのは明峰に入ったからだっていうのは間違いないですから。特に瀬下先生にはお世話になりました。


 ご存知かもしれませんが、あたしは緊張しやすい性格で、上手に弾けませんでした。

 はじめはお客さんが多いとガチガチになっちゃって。

 そのうち今度は母の目線が気になるようになりました。うちは貧乏でしたけど、あたしに才能があるからと母はあたしに投資を惜しまなかった。過保護というには度を越していたと思います。かけられた期待の分、竦んでしまっていたんですね。

 瀬下先生にはその辺りのフォローをしていただきました。高校三年間で、メンタルの面は随分とマシになったと思います。母との関係も、ええ、いまは健全なものになっていると思います。


 思えば、ピアノ教室の広田先生が「才能がある」って言ってくれなかったら、ピアノをやっていなかったかもしれないですもんね。


 ピアノはほとんど毎日欠かさず弾いています。

 一日弾かないだけで衰えてしまう気がしてて……。だから、実は飛行機の移動がある日はつらいんです。ピアノが弾けないので。でも最近は仕事であちこちに呼んでいただけるようになって。呼んでいただけるのは光栄なので、悩ましいところですよね。今回も仕事で来日しました。


 ええ。いまは生活の拠点が日本に無くて。言葉も必死で覚えて。英語とドイツ語と、まだ拙いですがフランス語も。向こうで出会った夫とふたりで暮らしています。夫は、家で靴を脱いでいるのがおかしくて仕方ないらしいんですよ。ピアノを弾く時ならともかく、家でゆっくりしている時くらい靴を脱いで裸足でいたいですからね。


 最後に一言ですか? では……。


 みなさんに音楽って面白いんだって伝わるような、素晴らしい演奏ができるように頑張りますので、どうぞ遊び行くような軽い気持ちで聴きに来てください。












丸尾花/ピアニスト

全話お読みいただけたでしょうか。

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