7話「久しぶりに休めそうである。」
作者:水瀬ヨウ
「ふわぁ」
寝床から起き上がって伸びをする。神は寝てばかりなどということが物語に書かれていたりなんかもするが、あいにくうちは違って、昼までのんびり寝てられるのは週に二、三日ほどだ。
この前は余所の面倒事まで解決させられたんだから特別休暇が欲しい所だが、平日は悠も学校に通っているので神社の仕事をしたり、夕飯の買い物をしたりするという訳だ。
今日は土曜日だからゆっくり寝ていたいと思っていたのだが、普段無理にでも早起きをしようとしているせいか休日でも目が覚めてしまうようだ。
「おはよう久」
「ん、おはようさん」
顔を洗ってから食卓につくと既に料理が並べられていて、良い焼き色のついた卵焼きが白い皿の中で輝いている。
朝食は悠の担当だ。俺は昼食と夕食の担当をしている。別に朝食も俺が作ればいいのだが、悠も料理の練習がしたいらしい。既に俺より上手いとは思うのだがご苦労な事である。
「今日は何があったっけな」
「えっと、何もなかったと思うよ、学校はないし部活もないし」
「ん、そうか」
そう返してから天気予報に目をやる、過ごしやすい気温と天候のようで何よりである。
ならば昼から買い物かメシでも行くとでもするか、そうと決まったら掃除をさっさと終わらせないとな。
俺がその神なんだからバチなんざ当てやしないんだけどな、ほら、黒いのが出ちまうからな。その言い方だと別のものが思い浮かぶが。
「ごちそうさん、掃除してくる」
「うん、いってらっしゃい」
するといってもごく簡単な掃き掃除とゴミ拾い程度なのだが、毎日やるなら最低限で十分だろう。
箒を持って外に出ると、秋晴れという言葉がよく似合うような空が広がっていた。
落ち葉を拾って隅にまとめて置いておく、こういう地味な作業もいいものだ。いつも通り一時間ほどで掃除を終えて家に戻ると、ちょうどいいタイミングだったらしく洗濯物を干している最中だった。
「お疲れ様、もう終わった?」
「ああ、後は軽くゴミ拾いをするくらいだな」
本当は神社の敷地だけ拾えばいいのだが家の前から神社の入り口までの数メートルくらいならやっておくかと拾っている。神社は人が沢山来るわけでもないのでゴミはそんなに落ちていないしな。
いつものようにそんなことを考えながらゴミも拾い終え、家に戻って水を一息に飲む。
「あー……生き返った」
「ふふ、お疲れ様、僕もちょうど終わったよ」
悠がお茶を淹れてくれたらしく、テーブルに熱いお茶が二つ並んでいた。
お茶うけに甘いものでもとその辺を漁りながら悠が俺に話しかけてくる。
「そういえばこの前の神社で思ったんだけどさ」
「なんだ」
「灯さんも久とかイナリさんみたいに能力が使えたら退治できて楽なのにね」
「……あー、使えんことはないがあんなバケモノの相手は神に任せときゃいいんだよ」
人間で退治できる代物なら本来、神がいるような地域に易々と入ってこれないからな。朱羅のところのやつは特別な例外だった訳で。
しかし俺がそう言うと、悠は棚を探す手を止めて目を輝かせてこっちを見ている。
「使えるの!?」
「一応使える事は使えるんだがなぁ、ヨドミと戦うようなことは出来んぞ」
「そうなんだね……」
「火なんか扱えなかったとき大惨事だぞ、風は身体のどこかしら折れるし」
強い力は反作用も強いからな、悠の体格でアレを撃ったら吹っ飛ばされるのが目に見えている。
「久もイナリさんも朱羅さんもムキムキってことなのかなぁ、神様ってすごいなぁ」
「何だかんだ、俺たちは人間の法則からしたらすごくデタラメな存在だからな、ケガもほぼしないし」
まぁそれは身体が強いというより、俺たち神に限らず、特定のルールに則ったものであるのだが。
「んまぁ、なんか特別な結界みたいなので守られてんだよ、そのうち詳しく教えてやるよ」
「いいなぁ、僕も欲しい、この前軽くケガしちゃったし」
「これ意外と不便なんだぞ、成長も止まるし」
「じゃあやめとこうかな」
経験はないが車が突っ込んできても無事な悠は怖いしな。それに神社を任せるには背丈が心もとない気もするからもっと伸びてほしい。
そんなことを話しながら茶を飲み干して湯呑みを置く。結局甘いものはお預けのようだ。出かけた帰りにでも何か買うか。
「やることもやったし買い物でも行くか、酒も買いたいし」
「ほどほどにね、僕も本を見に行こうかな」
天気予報通り、秋にしては暑くも寒くもなく過ごしやすい陽気の下を二人で歩いていく。
「たまには少しいい酒でも買うとするかな」
そう何の気なしに呟いてみる、悠は特に引っかかる様子もなく「たまにはいいんじゃないかな」と笑ってくれた。
まぁそう言いながらも、お気に入りの酒は買うのだが。それこそ持ち込んでも大丈夫な蛇酒でも探してみるか?あと灯に今度持って行ってやるって言った酒も探しといてやらないとな。
「そういえば久ってお賽銭が少ない少ないって言ってるけどお金に困ってないよね」
「まぁ一応昔荒稼ぎしたからな」
大判小判に古銭、ついでに農作物とかな。神に現ナマ供えてどうすんだよと最初は思ったが、屋台で飲み食いするのには困らなかった。
「換金も手間だし今の金で稼げたら楽なんだけどな」
でもイナリの所ほどせかせか働きたくないしこれでいいと思っているのだが。
「でも小判なんて買い取ってくれる場所ってこの近くにあったっけ?」
「そこはまぁ、代理でやってくれる便利なやつがいるんだよ」
大判小判をザックザクと売って歴史学者やら変なやつに目を付けられでもしたら困るからな。神といっても楽に生きるために日々頭を悩ませているのだ。
そんなことを話しているとバス停が見えてくる。ここからバスに乗って少し離れたショッピングモールに向かう。いつもの商店街でもよかったのだが、お互いの買いたいものなどを考慮した結果、こっちになった。
休日ということもありバスはそれなりに混んでいたが座れないほどのことはなく、程なくして目的地に到着する。
そして入ってから再確認したが、やはり店内も平日よりも人が多い。
「どこから行く?」
「任せた」
俺も買いたいものはあるが、とりあえずは悠の買いたい物のために後ろを付いていくことにしよう。
作者の水瀬ヨウです。
「3話連続でお前かよ」ってなるかもしれませんが私です。
前話投稿が昨年1月7日ということで散々お待たせしました。
しばらく神様なりの日常を書こうかなということで次話も私だと思います。
早く投稿できるようにがんばります。




