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6話「神様は一息ほどつかせてほしい。」

作者:水瀬ヨウ

コンさんの名前が狐、コンと表記揺れしておりますが

今話からは"コン"に統一予定です

 ~後日~

昼前くらいに悠に叩き起こされて掃除をしていたところ、嫌な来客が来た。

「真神はん、お邪魔するで」

「帰れ」

「お邪魔しますよ~」

「ん、お前んとこの忘子まで連れてきたのか」

「あっ!イナリさんと(コン)さん!ようこそ!」

 後ろから悠までやってきた。なんだ、お前ら来るからには手土産は持ってきたんだろうな。


「はい、真神様、うちのお祭りで出しているいなり寿司です」

「おっ、いいじゃねぇか、ありがとな、おかげで茶くらいは淹れてやろうかと思えてきたぜ」

 どこか後ろの方で「でも淹れるのは僕なんだよね」と聞こえた気がした。たまには俺が淹れるか、とイナリとコンを中に上げて台所に向かう。適当に粗で雑な茶を出していいだろ。あいつら舌は適当だし。


「ういーっす、待たせた待たせた、まぁ一息つけよ」

「ありがとうなぁ」「ありがとうございます~」

 茶菓子は持ってこなかったがさっきのいなり寿司でいいだろう、ちょうど昼時でもあるし。

「で、今回は何の用で来たんだよ」

 分かってはいるから二人を上げて茶まで出しているのだが一応聞いてみた。

「それはまぁ、長橋でのことについてやね、お互い忘子は留守番やったから報告会ってことやね」

「あぁ……やっぱりな……金輪際あんな事件で呼び出されるのはごめんだぜ」

「それは悪いとは思ってたんよ……?でも大ごとになる前に解決できてよかったんやないの?」

 確かに結局ヨドミがあのまま増えていたら大ごとにはなる上に近所の俺たちが呼ばれることはほぼ確定しているからそれはそうなんだが、あのレベルなら朱羅だけでなんとかできただろうから骨折り損ってやつだ。結局朱羅本人(?)からはこれといったお礼もないしな。

「結局あの後、朱羅が呼び止めてきたからお礼かと思ったら「わ、我のところで酒でも飲んでいかんか……?」って酒の誘いだったしな」

「あれ?久がお酒を断るなんて珍しいね」

「朱羅はんは自分が呑みたいだけやからなぁ」

 結局その後に「もう朱羅様はしばらくお酒は禁止です!」って灯に怒られていた。取り越し苦労とはいえ神二柱出張らせたんだから当然だ。

「……ま、お前んとこの忘子が気付いてくれたおかげで未然に防げたんだからな、そこは認めてやるよ」

「あら良かったやないのコン、真神はんが褒めてくれたで~」

 そんな風に茶化すから褒めるのが嫌なんだよ。大体俺は巻き込まれただけだし。

「ふふ、ありがとうございます、近くを通りがかった際、何となく空気が悪かった気がしただけだったんですが、それを聞いたイナリ様が様子を見に行くと聞かないので……とりあえずこのあたりで一番歴史のある神社の真神様なら頼りになるんじゃないかと思いまして」

 ご迷惑をおかけしました、とコンが頭を下げてくる。こう、頼りになると言われたら恨み言も引っ込んでしまうな。本当は神をアゴで使った文句くらい言ってやるべきだとは思うんだが。

 何か言ってやろうと開いた口にいなり寿司を放り込んだ。功労者に文句は言えない。

「うちらは自分のとこからあまり出てこおへんからね、あそこ(長橋)くらい離れていると流石のうちらでもわからんかったわぁ」

「だな」

 そもそも原因が原因だから急すぎて気付く間もなかったしな。まさか神社の主たるやつが酒をパクったことが原因だなんて予測しようもない。


「ところでヨドミ……でしたっけ?一回目は牛の姿をしていたけど二回目も牛だったのですか?」

「ん、お猿さんの姿やったね、あちこちに飛び回って大変やったわぁ」

 そう言ってイナリが肩をパキパキと鳴らす振りをする。そんな苦戦した感じにしても俺たちが舐めプしていたら寝起きの朱羅が一撃で葬ったって話は俺から悠に既にしてあるぞ。

 そんなことを思っていると悠がこっちとイナリの方を見比べるように視線を移す。

「どないしたんや?」

「あっ、いやー……やっぱりイナリさんも久も神様だからすごいものと戦ってるんだなぁと」

「んー、そりゃまぁうちら神様みたいなものやからねぇ」

 でも褒めてくれてうれしいわぁ、とイナリが悠の頭を軽く撫でる。

 参拝者がこれくらい畏敬の念を持っていてくれたら御久上(ウチ)ももう少し綺麗なんだがな。

 一方、悠は何だか釈然としない表情で「そういうもんなのかな……」と呟いている。

「気にしなはんな、悠はんやコンはうちらに代わって神社に来てくれる人たちの相手とか日常のあれこれをこなしてくれとるんや、それも重要な仕事なんよ?」

「そうですよ悠くん、私たちも神社を守っているんだから胸を張らないと~」

 おっ、二人がいい事言った。今のうちにお茶のおかわりでも淹れてきてやるか。


「ふぃー、おかわり持ってきたぞ」

「あら、えらい優しいやないの、いい心がけやわぁ」

「ん……まぁそれくらいはしてやるよ、それにしても本当にうまいなこれ」

 たかがいなり寿司とタカをくくっていたが結構止まらない。甘さは控えめで何やら色んな具が入っている。関西風ってやつなのか?

「ふふ、うちとコンの手作りよぉ」

「イナリ様がせっかくだからって言い出したので~」

「神様のお手製や、食べたらいいこと起こるかもしれへんで」

 果たして同じ神様のような存在の俺が食べて良いことが起こるのか。というかその理論なら俺の手料理を食って育った悠は今ごろ大富豪でもおかしくないだろ。

「そういえばイナリ様のお手製なのにここ(御久上)には普通に持ち込んで大丈夫だったんですね」

「ん……力だってむやみに垂れ流してる訳じゃないしな、そこはまぁ都合よくできるんだよ、それに御久上と清風は同じ風の気だからな」

 反発するような代物が少しでも入って大変なことになるなら参拝客に目を光らせないといけないしな。あの蛇酒が特殊なだけだ。

「美味しいですね、お祭りで出してるんですよね?」

「そうよぉ、結構人気なんよ?」

 ほら、うちの耳みたいで可愛いやろ?と変身を少し解いて狐耳を出す。こんなふわふわしたいなり寿司は御免だな。

「はぁ~、ここは落ち着くなぁ」

「そりゃどうも、気に入っても帰れよ」

 宿代をくれるなら別だが。

うち(清風)は客が多いから、それに比べたら静かやねぇ」

 お前んとこは客の質が悪いからな、と言ったら微笑みながらテーブルの下で軽く足をつねられた。くそっ、女じゃなけりゃ今すぐにでもやり返してやりてえ。

「もう、すぐに喧嘩しないでよ」

「うふふ、これでも仲は悪くなさそうなんですけどね~」

 良くねぇよ。

今話の作者の水瀬ヨウです、諸々の事情で次話の投稿が遅れました、大変申し訳ありませんでした。

なお、次話以降はこちらに作者を明記する……かもしれないです。


どうでもいいんですが関西風のいなり寿司は狐の耳を、関東風は俵の形を模しているという説があるとか。どちらも五穀豊穣を願ったものらしいです。へぇ。

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