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今日から学校と仕事、始まります。②莞

自己暗示の強い人

作者: 孤独

悪い事が身に起こると、自己暗示を始める。


「この間の健康診断で胸がちょっぴり大きくなってて、お尻もちょっとだけど~」

「そうですか」


愉快愉快と、いつもとは違った笑顔を見せて話す沖ミムラ。

自分の作ったご飯とお味噌汁、鮭の塩焼き、卵焼き、ひじきと。和風食のメニューを食べている阿部のん。


「しょーがないよね。ちょっぴり、体重が増えちゃうのって」

「……確かに、そうかもしれません」


女子大生と女子小学生。

そんな2人暮らしで家事全般を担っているのは、小学生の阿部のんちゃん。大学生のミムラは、家事がど下手糞なのでやらない。

健康的でバランスのとれた料理を提供したのに、ミムラの口は喋ることばかり。


「食べ過ぎは良くないよね~。食事制限しようかな~」


ご飯も少々、鮭も少々。ここ最近、忙しいとは思えないのだが、食事を摂っている量が少ないと感じるのは作る人間だから思えること。

のんちゃんはそんなストレスも含めて


「お腹周りはどーでした?」

「…………あはは」

「顔が笑っているなら、良かったんですか?」

「え、あ、……」


怒り顔ののんちゃんに、ミムラの笑顔が消えかける。それは言わないでという心を、知っていながらグイグイと心を踏んで話すのんちゃん。


「間食、お菓子の食べすぎ、運動不足、……体重が増えない理由。ないですよね?」

「は、ははは……」

「夕飯や朝食をしっかり食べられないのは、間食のしすぎじゃないですか?お菓子の一袋どころじゃないですよね。のんちゃんが買って来たチョコレートも食われてますし……」

「うぐぅっ!でも、あとで代わり買って来たじゃん!許してくれたじゃん!!」

「それはそれ。食事制限なんて、そもそもミムラさんにできないでしょ!自己管理能力がないんだから!!」



小学生にボロクソに言われた…………。

このショックでどうして痩せないのか。

いや、そんなことは1秒思ってだ。のんちゃんの顔に怒りマークが出ている。食事を作ってもらい、片付けをしてもらい、掃除をしてもらい、洗濯もしてもらい……。完全に自分のオカンのような存在。

歳が下な分。


「食事制限じゃなく、ダイエットしませんか?のんちゃんと……。なんなら、ミムラさんのお友達もご一緒に……」

「あ……あああ」


絶対、お菓子を捨てられる。それはつまり、ゴロゴロ寝転がって間食をする楽しみが無くなるということ。そんな凶悪的で、物理的な禁止をなんとしても、ミムラの心は阻止したかった。

まだ、若干に心の中ではのんちゃんを恐れつつも、見くびっているミムラは


「いやー、のんちゃん。運動しろって」

「はい」

「のんちゃんはまだ子供だから知らないだろうけど、脂肪より筋肉の方が重たいんだよ。私、ダイエットしたいのにな~、あー、残念残念」

「大丈夫です。脂肪を燃やす運動で、ミムラさんがダウンする姿が目に浮かびます。それと、筋肉をつけるって事を甘く考えないでください。ボディビルダーのような筋肉は1週間ではできません」


うっかり蹈鞴を踏んだ。


「ミムラさん。あなたに必要なのは、ダイエットを”始める”という、その第一歩となるスタートなのです!!これから夕飯を食べたら、食休みをして走りに行きましょう!!」

「い、い、嫌だーーー!外暑いっっ!!」

「嫌々言わない!!のんちゃんが無理矢理外に出させますよ!!それとも、お菓子を全部捨ててきましょうか!?のんちゃんが通う学校のみんなに、無料で分けますよ!!」

「ダメ!!それはダメ!私のバイトで稼いで買った、お菓子を!子供になんかあげたくない!!」

「じゃあ、太ることから目を背け続けるんですか!?のんちゃん、作った料理をまったく食べてくれない人と一緒に生活するのは辛いんです!!」


いかずちが落ちた。

なにもかも言っても、ダメだ。

せめて、


「夕飯を食べる、運動をする、間食をする。そして、体重と体型をキープする!!それができるんだったら、のんちゃんは怒りません!こんなだらしない人と一緒に暮らしたら、のんちゃんだって良い成長ができません!!いいですね!」

「は、はい……」


期間付きで真夏のダイエットが始まった。

目標は6キロダウン。


◇        ◇



カランカランッ……


そんなダイエット宣言から1週間。のんちゃんにストレスがあったように、ミムラにもストレスはあった。ただ、のんちゃんと違ってミムラの愚痴は、おめぇが悪いんだよで済んでしまう。


「のんちゃんの何が嫌って……。私と違って家事はできるし、真面目で意識が高いし、可愛いし。私と同じ好きな人がいるし……子供なのにグイグイ言ってくるし、たぶん私のことを馬鹿にしてるんだと思うんです」

「大変だねぇ」


喫茶店のマスターであるアシズムは、そんなミムラにカフェオレを奢ってあげた。


「ありがとうございます」

「いいよいいよ。ミムラちゃんにも良いところがあるじゃない。運が良い以外で」

「え?それは……」

「人から指摘された事を素直に受け入れ、考えること」


のんちゃんが強引過ぎるのもあるけど


「人によっては、それから逃げたり反論したり、言い訳もする。ダイエットしようで三日坊主にならないのはミムラちゃんが真面目だからだよ」

「アシズムさん………うわーーー!のんちゃんより優しーーー!ケーキ食べます!カフェオレもお金払います!」

「あ、……まー、いいかな……」



1ヵ月後、のんちゃんの厳しい監視の中、ミムラは体重を6キロダウン。ウエストも引き締めることに成功した。



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