七十一話
「リスフェルト、お前いつまでここにいるつもりだ」
「ん~、さぁいつまでだろうね」
「いい加減に動いたらどうだ。外はそろそろ荒れるぞ」
「なら、君が動けばいいじゃないか」
「俺は魔王だ。世界を救うのはお前とお前の主である瀬戸悠馬だろ」
「誰がそんな事決めたんだい?」
「知るか。現に魔王であった俺を倒したのはどこのどいつだ」
「はいはい。分かりましたよーだ」
「それで……お前にはどう映っているんだ?」
「何が?」
「惚けるな。未来視を持つお前なら分かっている筈だ」
ベッドの上で深い溜息をつくと身体を起こす。
眠気眼を手で擦って開けると大きな欠伸をつくとだらしなく頭を掻く。
あまりにもノロノロとした動作に魔王をイラつきを覚える。
「第一、こんな辺境地で身を潜める君に。外の世界に興味があるのは意外だね」
「月に一度、ある人間に食糧や衣服を持って来てもらっているが、奴は世間知らず過ぎて情報屋として使えんからな」
「君に言われたくないと思うよ」
「ここで惰眠ばかりに耽る精霊よりはマシだ。衣食住を提供してやっているんだ、少しくらいの見返りを要求する立場にあると思うが」
「ん~、それを言われたら返す言葉もない。だから、一つ良いことを教えるよ」
「それを話せ」
「それじゃあ、さっそく。森に悪魔の侵入者だね。狙いは恐らく君だ」
その言葉を受けると「やはりか」と小さく漏らす。
近くの椅子に座ると窓の外で森に生息する小動物らと戯れる娘に目を向ける。
「戒言を狙って来たのだろうな」
「どの道、君が【怠惰】を保有する限りはここに来るよ」
「まぁな。だから知りたかった。生き残りの配下がどのタイミングで仕掛けてくるか」
新たな魔王の動きがどれ程まで活発であるかは全くと言って掴めなかった。念の策を講じて森の中に幾つか侵入者用の魔法陣を設置しているが、今の所は反応がない。
「それでここに着くまでどれくらいかかる」
「二日かな。ここ結構広いし、彼女らも君の居場所を完全に把握出来てないみたいだし」
「だろうな。大地から巡る豊潤な魔力は身を潜めるには最適だしな」
その情報を聞いて魔王は立ち上がると玄関前に向かいドアに手をかけようとする。
「戦うつもりかい?」
「話し合いに応じる相手ではないしな。それに先ずは娘を森から逃がす」
一度、ドアから手を外す。
「誰かと共闘して倒すって事は考えないの?」
「こんな嫌われ者が誰と共闘するんだよ」
「確かに」とその一言で早合点する。リスフェルトも窓の外を目を向けると魔王に似つかわしくない程の無邪気な笑顔で走り回る小さな娘を気に掛ける。
「娘さんを逃がしてどうするんだい?」
「さっき言った人間に預ける」
「信頼に足る人物なのかい?」
「問題ない。奴は俺が魔王だったと知っても動じない世間知らずの馬鹿だ。まぁ、そこに救われたのだがな」
「へぇ、君がそう言うなんて僕も興味湧いたよ」
「会ってみるといい。今日、定期の荷物を届けにやってくる」
「へぇ~」
魔王の言葉にリスフェルトはニヤリと面白そうな顔を浮かべるとそれに嫌な予感を抱く。
「お前、何を見た?」
「いやいや、ただ面白くなりそうだなって」
「……勘弁してくれ」
投げやりにそう呟くと魔王はドアを開けて娘の元に行く。
一人残ったリスフェルトはベッドに仰向けになって、少し思い詰めた表情で天井を見上げる。
「一人一人の運命の歯車が大きく嚙み合う時、物語は大きく揺れ動く……か」
七十一話まで読んで頂きありがとうございます。
三章は大陸の最西端に位置する大森林を中心とした舞台となっております。悠馬やユリナ、魔王といった因縁のある面々が顔を合わす回が今後の展開になると予想されているでしょう。
そこで申し訳ございませんが、本日二月十九日の更新を持ちまして暫く休載とさせて頂きます。
理由は作者である私が免許を取りに行くからと伝えておきます。合間を縫って、本編の改稿作業に取り組む予定なので続きの気になる方もいらっしゃると思いますが、暫しお待ちください。
既存の方々、新規の皆様も今後ともよろしくお願いいたします。
定期文
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