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六十六話 休暇(旅行)①

「女王命令です。瀬戸悠馬卿、暫くの間休暇を命じます」

「休暇ですか……」

「不満ですか?」

「言え、とても嬉しいですがこんなご時世ですから休んでいていいものかと……」


本音を言えば休みをもらえて万々歳な自分がいる。その反面で帰還してから留守中の出来事を聞いた事で一層、身を張らないといけない気がしてならない。


「構わんよ。たまには羽を伸ばしてくるといい。ユリナにも休暇を与えているから、一緒に旅行でもどうかな?」


どういう意図があるのか分からないが、俺とユリナを王都から離すのは些か危機感に反する判断だと申しかねない。


「君の不安も分かる。だが、休めるうちに休んでおくのも重要だ。まぁ、何かあればユリナの魔法で直ぐに戻って来れる」

「そう仰るなら」


国王は頑なにそう言い張ると俺も甘んじてその提案を受けようと思う。

俺自身にメリットしかない提案を無下に否定し続ける意味もないしな。


「分かりました。それで旅行とは何処に?」

「それはユリナの口から聞くといい。彼女の伴侶としてコミュニケーションは重要であろう?いつまでも、私の顔を見向きもしないのは嫌だ!」

「……あなた?」

「いや、何でもない。では、頼んだよ悠馬君」


つまり国王はこう言いたいのだ。

休暇を使ってもっとユリナと交流を深めよ。

最近、不機嫌で中々口を利いてくれないから機嫌を直してきてくれと。

国王の狙いは後者だな。

かく言う俺も帰って来て以来、ユリナとはコミュニケーションは疎か、顔を合わせる機会も全くなかった。まぁ、それもこれもエンゲージリングを通じて俺が何か隠し事をしているというのが伝わっているかららしい。特にお互いの愛の秤が釣り合わない場合、その愛が低い方が何か後ろめたい感情を抱いているという事を知らせる浮気防止の機能も備わっている。この魔法を作った人物は相当愛が重く、裏切られるのが怖い人物だと思える。


屋敷に戻った俺は旅立つ翌日の朝。一週間程、新婚旅行…ではなく休暇を満喫してくると二人に伝える。


「羨ましい」

「駄目だよアリーゼ。悠馬さんとユリナ様の新婚旅行なんだから邪魔出来ないよ」

「そう言って、アイラも行きたいんじゃないの?」

「そうだけど……私達、そんな事している余裕ないし」

「うぅ……確かに」


執務室に重ねられた山の様な書類も片付くと二人はお互いの力を高め合うため、数日間各々に課された課題に取り組んでいた。精霊メアリと契約したアイラちゃんは精霊融合(シンクロ)で自身の意識下をコントロールする訓練、アリーゼも精霊を駆使した魔法技術の向上を師であるジュウドさんから言われている。


「なので留守は任せて楽しんできてくださいね」

「……やっぱりいかな……」

「さぁさぁ、ユリナ様が下でお待ちです。待たせてはいけませんので、早く行って下さい」


少しばかり悔しそうな顔を浮かべたアリーゼを覆い隠す形でアイラちゃんに背中を押されると廊下にはいつもとは見たことのないカジュアルな格好のユリナがいた。ドアを開こうとしていたのか、突然開いたドアに驚くと半歩下がって道を開ける。


「ユリナ、その格好……」


長袖のグレーパーカーに綺麗な細長い素足を出したショートパンツという王族とは、いやこの世界の人とは思えない程のラフな姿に思わずジッと眺めてしまう。


「私の格好変ですか?」

「いや、全然。いつもとは正反対の服装だったからつい……」

「私も驚きました。それって最近城下町の若い女性の間で流行っている異世界発のファッション?っていうものですよね」

「はい。流行の最先端となった方にお願いしてまた見繕ってもらったものです。私的に少し肌を出し過ぎない様にお願いしたのですが……視線がいやらしいですよ」


その指摘で我に返ると俺は目線を逸らして「見てない」と嘯く。

上から下まで、あまりにも新鮮な装いをしていたのでじっくりと目がいってしまう。主に太股に。


「とにかく!馬車の時間ですからそろそろ行きますよ」


強引に手を引っ張られ、脇と腕に俺の腕を挟むといつもより早足で一階へと降りていく。

その後ろでアイラちゃんが「お気を付けて」と言いながら手を振るのに対して、アリーゼは何か不満がありそうな顔で俺を見詰めていたのが気になった。


「敵わないなぁ」

「ごめん。分かっていても私は……」

「分かってる。私は悠馬の事をまだよく知らないし、王女様と違って彼の横に並び立つ実力もない」

「それは……私も同じだよ」

「うん。だから、私達も強くなろう。そして、正妻の座を奪うの!」

「いや、それはいいかな。私はこの秘書の立場が合っているし。それにアリーゼと結婚したら悠馬さんエルフの人になっちゃうから私は反対派かな」

「この裏切り者!」

「初めからそう言ってたよ」

「む~、じゃあ後日、私に王女様が着ていたあのファッションとやらを教えて」

「私もよく知らない……けど、少し惹かれるものはあるよね」

「分かる。なんかこう……個性があるというか……堅苦しくない感じ」

「そうそれ!」


二人はお互いに気が合う事を再確認すると部屋に戻って直ぐに空いている予定を確認した。


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