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五十八話 

「戻ったか」

建付けの悪い扉がギィ~と音を立てながら開かれると仮面の悪魔は労う様に言葉を掛ける。

声のトーンはいつもよりやや高く。少女の耳にはそう聞こえた。

昼間、第三王女に敗れて引き返して直ぐにもう一人の様子を見て来いと命令を受けてその後の状態を想像して荒れていると踏んでいたが、彼はいつも通り人を寄せ付けない態度で王座にふんぞり返っていた。

「あはぁ、負け犬がふんぞり返ってるよぉ」

少女の思考を読んだのか、はたまた自らそう思ったのかは不明だが声を聞くだけ不快にさせる超変人悪魔はヘラヘラと笑いながら闇から姿を現す。その隣には彼に似た端正な顔立ちで全身ゴスロリの少女もいた。

「兄上よ、また心臓を取られるぞ」

妹のザラの警告の間もなく、ザビーダの胸に腕が貫かれると大量の血を噴出しながら心臓が奪われる。

「ぐへっ、ヤバいよぉ。このままだと本当に死んじゃうよ」

力なく横たわると本当に死にかねない勢いで血が流れる。

「私からすれば心臓を取られても軽口を吐ける兄上の方がやばい」

血で床を汚す事に気に食わない仮面の悪魔は心臓を元の位置に戻し、魔法で傷を癒す。

あと数秒経っていたら死んでいたであろうザビーダは治ると直ぐに立ち上がって距離を置く。

「ヤバイよ。三途の川を渡りかけてたよ。悪魔の所業じゃないよ」

「なら喧嘩を売らなければよいのでは?兄上は生粋のドМと見た」

「むしろ、ドSと言ってくれよぉ。悪魔がドМって需要なくない?」

「誰向けかわからない、需要だな」

仲のいい兄妹の会話が弾む中、ライウェルと白鬼(びゃっき)、新たに末席へと加わった吸血鬼(ヴァンパイア)(ロード)そして黒いローブの中から顔を出した黒髪の少女、黒川沙希。その四人が今代の新たな魔王である仮面の悪魔。瀬戸雄二の前に並ぶと二人も会話を中断して自らの定位置に立つ。

「貴様らはそこか」

「僕らはあくまでも元魔王一派だからね。ここが定位置だよ、悪魔だけにね」

「まぁいい」

玉座から立ち上がった新たな魔王は仮面を外して素顔を見せる。

東洋風な顔立ちで決して悪に染まらなそうな正義感の強い表情。同じ国の生まれであった沙希にとっては親近感の湧く印象を持った反面、仮面の下の彼の表情は思った以上に闇を抱えている。

「兄上……」

「うん。やっぱりね」

二代目勇者、二人の予感が確実なものとなるとザビーダは片手で上がってしまう口角を覆い隠す。

「フフッ、これから仕える王が私の最も憎む復讐対象とは、随分舐められたものですね」 

「殺したければ殺すといい。俺が貴様に求めるのは協力であって、服従ではない。不満があるなら、今度こそここで俺が殺してやるが?」

「彼は別人か?人間であった時はもっと温厚で人情深い、仲間を大切にする性格では?」

それ故に付け入る隙はいくらでもあったのだが、今では全てを捨て去り孤高に走る悪逆非道の王になろう懸命に足掻く哀れな道化と映る。

「しかも、今度こそって君、あの時の記憶があるようですね」

「……さぁな。戒言の浸食が進み、記憶も断片的でしか残っていない」

戒言の浸食。右頬から右眼にかけて紫紺の刻印が刻まれている。

加えて、堕天して悪魔と化した影響も合わさり、瀬戸雄二には凡その人情は既に残っていなかった。半年以上前、人間の村を焼き払い、あまつさえ地図上から消し去るという残虐行為をしたにもかかわらず、何も感じなかった。悪魔独特の人種(ひとしゅ)に絶望を与える事を飢えとする汚い欲求もない。

あるのは一つ。

世界の崩壊。

「ねぇねぇ、これからどうするつもりなの~」

「兄上、それを今から聞くのだろう」

「いやぁ、気になるよね。世界を救った英雄がどんな風に世界を破壊するのか」

その言葉に耳は貸さない。

彼にとって世界を救った記憶は遙か昔に捨て去った。その更に遙か前、この世界に来る以前の記憶さえも。残っているのはかつての仲間の死と裏切りによる負の連鎖が織りなす夢で見る記憶の光景。

「この世界を崩壊するにあたり障害を幾つか取り除く必然がある。その準備として、獣王国を傀儡にしたが支配はどうだ?」

「約十万の人質兼兵士は出来たよぉ」

「なら次のステージに移る。後で指令を下すから不備なくやれ」

「りょうか~い」

「白鬼、戒言の収集は?」

「残すところ、『怠惰』のみだ」

「そうか、引き続きお前は回収に……」

「ちょっとよろしいかな?」

ザラが手を挙げて発言をする。

「『怠惰』だが、誰が所持しているかは検討がつくのでね。私が当たっても構わないかな?そこにいる白鬼を連れて」

「構わん」

「あれれ、ザラちゃん。その様子だと誰が持っているか分かっているんだね」

「兄上は性格が悪い。知っていて尚、私を貶めようとするとは」

「隠し事は良くないでしょ。僕達、今は味方同士だよ」

「別に詮索はしない。むしろ、俺の前で隠し事は無駄だ」

「言わずもがな、だそうだ兄上」

「ふーん」

ザビーダが話に割って入る度に歯切れ悪く止まる事に嫌気がさしたのか無視して進める。

「話を戻す。ライウェル、お前はここの連中を纏め、鍛えあげろ」

「素直に聞く連中ではないと思うが」

「歯向かうなら殺せ」

「こっわぁ~」

「それで君は?」

「最大の障害を取り除きにかかる」

「具体的には?」

沙希はその最大の障害に心当たりがあった。

今現在、この世界における最強の魔法属性を持ち、膨大な魔力量と強力な魔法の担い手である人間。

「ユリナ・L・ラフォルト。あの女を殺す」


二章 遺跡編はこの話数をもって閉幕といたします。ここまで読んで下さった読者様、愛読頂きありがとうございました。これからも書き続けていきますので宜しくお願い致します。

感想、レビュー、ブクマ、評価お待ちしております。

今後も不定期に更新しますのでよろしくお願いします。

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