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五十七話 正体

 エルフの里。

 本来であればケンイやフィオが住んでいた村とエルフ領を結ぶ架け橋であるシャーベルマン大橋を渡り、エルフ領全体を覆う樹海を真っ直ぐ北上して進むと到着する筈なのだが、今回は海に潜って海底でリヴァイアサンに襲われ、逃げた先の遺跡でキュクロプスと対峙して、と言った風に丸一日程かけて長い時間を掛けて来た。その点で俺は一つ腑に落ちないことがあった。


「正規のルートを辿っても同様な時間がかかるのには些か納得がいかない」

「仕方なかろう。王国からここまでどれ程離れていると思っておる」

「樹海は途轍もなく広いからな。大森林と比べても三分の一程度だが」


 ここはエルフの里の首都であるミョルンの森。樹海の中心地に位置しており、エルフ達の住まいはこのミョルンを中心に樹海を縦に横断する形に沿って広く展開されている。

 その中でも一際大きく成長した樹齢千年程の古代樹の木を住まいとしているフォレスト家の寝室の一角で俺は目が覚めた。

 気を失ってからというもの、約二日間程俺は寝込んでいたらしい。

 『不壊』の反動も大きいことから外傷や内傷はないものの、その分精神面に大きな負荷がかかった事で魘される様に寝ていたと看病をしてくれたアイラちゃんから話を聞いた。

 アイラちゃんも酷い怪我を負っていた筈だが、万能薬(エクリサー)の効果が効いたらしく里について直ぐに意識を取り戻したとか。ケンイとフィオも特に怪我はしていなかったらしい。


「結局、俺が一番重症だったわけか」

「なんにせよ、誰も死なずに戻って来たのじゃ。問題なかろう、と言いたいのじゃが」


 俺のベッドの上でちょこんとと座り、ジュウドさんを連れて見舞いに来たセルフィは大事な話があると言って、人数を三人に絞った。日が差し込む窓の側の壁に背中を預け、腕を組んでいつになく険しい顔を見せるもジュウドさんにセルフィは伝える。


「ジュウドよ、ライウェルが悪魔として生きておった。それを踏まえ、私はお主に聞く」


 ライウェルとはあのハーフドワーフの悪魔を指す。

 彼がセルフィ達とただならぬ因縁があるのは悟った。


「今世に現れた魔王、その正体は誰であると思う」

「……セルフィード様。もうお気付きなのでしょう」

「認めたくはないが」


 話の内容を詳しくは理解出来ないが、魔王の正体について二人は確信に触れているようだった。

 俺にとってはさっぱり分からないが。


「何を惚けておる。お主も集中して聞くのじゃ」

「まぁ、倒すべき相手なのは分かるけど、俺は深い因縁がある訳じゃないし」

「いや、勇者。君にとってもこれは重要な話だ」


 そう諌められ真剣に耳を傾ける。


「悠馬、よく聞くのじゃ。新たな魔王の名を」


 魔王の名。

 セルフィはその名を口に出したくないという顔で俺を見詰める。


「その魔王は知り合いなのか」


 その質問に目を大きく開かせると露骨に視線を逸らして言う。


「うむ、あ奴はこの世界を救った二代目勇者」


 二代目勇者?

 魔王討伐後に行方不明とされている人物だった筈。

 世界を救った英雄が堕天して悪魔になって、魔王に落ちたのか。

 そんな思考が働く束の間、決心したセルフィは魔王の名を口にする。


「名を瀬戸雄二、という」


 その名を聞いた瞬間、俺の思考は完全に氷ついた。

 なにせ、その人物は間違いなく……


「……兄貴?」


 この世界に来る数年前……ある日突然、失踪した兄の名前だったのだから。

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