五十六話
悠馬達が戦っていた樹海の中の円形の広場の近く。
二人の男女がそこの景色を一望出来る高い木が聳える位置から気配を消してただ黙って見ていた。
全てが終わり、仲間の撤退を手伝い自らも退こうとするも白髪の鬼仮面はただ一点を見詰めていた。その不思議な感じに黒いフードをした少女は思った事を口に出す。
「ねぇ、あなたは元人間?」
「だとしたら、どうする?」
「どうもこうもしない。けど、貴方は多分、他の人とは違う。悪魔らしくも無ければ、悪人らしくもない」
「善人だと?」
「分からない。でも、悪では無いでしょ」
少女の言葉に肯定も否定もしない。
「名前、なんて言うの?」
「以前も名乗っただろう。白鬼と」
「本当の名前」
「本当の名前などない。白鬼、それが今の俺であって全てだ。これ以上の詮索は無用にしてもらおうか小娘」
「ふーん。私はあの変人達の中であなたが一番まともだと思っているけど」
「好きにすればいい」
マントを翻し少女の開いた影に入ろうとすると入口が急に小さくなる。
「一つ質問」
「無用だと言った筈だが?」
「これ私の魔法だから、それくらい聞く権利があると思うんだけど」
返す言葉もなく、舌打ちをすると「話せ」と許可する。
「貴方はどちらの敵?」
その返答は直ぐには返って来ない。
仮面の下で彼が何を考えているかは分からない。
白鬼と名乗るこの男はとにかく情報が少ない。人間に対して道楽の玩具としてしか見ないザビーダや似た思考をもって相手の絶望を揺さぶるザラ、戦いともう一つ別の何かに執着するライウェル。そして、世界の再生と崩壊を目論む、新魔王。日頃から接する彼らとは違い、この白鬼という男からは野心はともかく、悪魔独特の狂った感性すら持ち合わせず、外見が怖いだけの無害な男という印象を抱いている。
しかし……
「俺は人類の敵だ。俺はいずれ、あそこに居る男を殺す」
「瀬戸悠馬を?」
「あぁ、俺は奴を殺す以外に興味は無い」
「なら、今がチャンスでは?」
「ここでは役者不足だ。それに聖剣無き奴を殺す事には価値は無い」
話は終わり、影を大きくすると白鬼の姿は闇に溶ける。
「やっぱり変わり者か」
少女も去り際に銀髪の少女の近くにいる少年に目を送ると一言残す。
「次会う時は、私の知っているケンイチでいてね」




