74話 不思議なお婆さんと試験会場
今回もナタリアさんの少し前の出来事になります
私は馬車に揺られながら、学園に向かっていた。
早めに来すぎたのか、馬車の女性が街の門の入り口で止まり門番と話していた。
「ここの門を潜って、奥にある門を出た後少し進むと学園が見えるので。そこに向かってください」
と言われ、私は馬車から降りた。門番の人が「身分証となる物を提示してください」と言ったので、私は母から貰っていた身分証を提示すると。
「伯爵家の方でしたか、失礼をお詫びします。すみません」
「……い、いえ。構わないです」
そう言って私は、門を潜った。
街をしばらく散策していると、見たことのある人影があった。
メオドールだった。そこの横に居た人間は、ノーム・ハーネスと分かった。分かりながらも心に残っている彼に……私は少し残念と感じていた。もしかしたら、まだ捨てきれない恋情が私の中に残っているのかもしれない。
何故か、私は自分の中にもう一人の人間がいる感覚があった。
そんな2人は、何故か雑貨店に入っていった。いや、問題では無いが政略目的とはいえ、婚約した人がいるのに2人きりの男女で歩くのは悪評が広まるのではないかという、危惧だ。
「はぁ……この恋情は、この子の物だけど。ゲームの中に入っても、残るものなんだ」
ただ……記憶にある彼とは少し違う様な、そんな違和感が拭えなかった。
誰も周りに居ないと思い、素を出して溜息を吐きながら呟くと。下でドレスを引いている子供が居るのに気づいた。
私はしゃがんで、女の子に話しかけてみた。
「……どうしたの?」
「まよったの、きょうかいってばしょどこ?」
「教会? もしかしたらあそこかも」
私は少し離れた所にある、住宅街の所にちょこんと見える建物の頭の所に女の子と一緒に進んでいった。
名前を聞いてみると女の子は「あんり!」と言っていた。私は、少し狭い場所を通っていると。開けた場所に出た。
そこにはボロボロと言ってもいい教会が見えていた。知らずに見上げていた私は、視線を下げると多くの子供達が遊んでいた。それを嬉しそうな表情で見ているお婆さんが居る。
「ありがとう! おねえちゃん!」
女の子は、みんなの所に戻るとお婆さんがこちらに気づき近づいてくる。
「すまんね~、内の子供が世話になったよ」
「……いえ、私は通りすがりなので」
言葉を発した時、お婆さんが一瞬だけ険しい表情になった。何故かは分からなかったけど、小さく呟いたその言葉で私は目を見開くことになった。
「お主、何時からこの世界に入り込んだ?」
「!?」
「イレギュラーか……最近あちらの女神が、やらかしてるためか歪みが生じたのか?」
そこにいるお婆さんが一瞬、別な姿に見えた気がした。しかも女神などの発言をしているところを見ると、只者では無い気がした。
私に見つめ直してくる、その瞳は私の心の中を覗くような視線。
「貴女も分かっているはず、このままでは貴女は物語の様に死を向かえることを」
「……」
「その沈黙は分かっているのね」
先程の様な年寄りめいた言葉じゃなく、はっきりとした口調で私の中にある不安を当ててくる。そして私は喋る、何故かそれは口の中から溢れる落ちるような言葉。
「それじゃ、私はどうすればいいの……? 努力をしてこの日を迎えたというのに……」
「大丈夫、貴女にはゲームでは居なかった助っ人がいます。それは、優しくそして貴女のよく知っている……本当の貴女が知っている人だと思います」
私自身のよく知っている人物? それは何故か、凄く安心出来ると言ってもいい程の人物だと思った。ただ、あの人は前世とはいえ、死んだ人物……私は頭をよぎった人を振り払って、お婆さんを見る。
「私はなんとかして、生き残りたい」
「はははっ……信じてもらえんか、もう話す事は無いからの。頑張って生き残るのといい」
私はその場を後にした。結構な時間を喋っていたみたいで丁度良い時間だった。
先程まで門から道を外していた所に戻ると、ある3人組が見えた。
片方の方は、左に攻略対象のケルト・シライシ。真ん中にいる人は知らなかった……ただ、酷く懐かしい笑顔に見えた。右にはメオドールかと一瞬思ったが、仕草や雰囲気が先程と違う……兄の方だと確信していた。
無視して進もうとするけど、行く所が一緒なのか奥の門に向かって歩いていた。
門を潜ると魔物が出そうな、森の中を通る様になったが……魔物が1匹も見ない。何故か、誰かとの接触を避けてる居るように。
学園への道のりは特に問題なかった。門番の人にまた、身分証と今度はステータスの提示を見せるように言われた。
ナタリア・ワリ・ホーメント
種族 人族
スキル ??? ???
何もかも不明だったが、ステータスの出し方は聞いていた。
中に入ると、そこは試験会場で色々な人が居た。先程の3人組とメオドールが見えた。
声をかけられる事もなく、かける事もなかった。
「全員来たようだな、これから実技試験を行う。来てすぐじゃないと不正を行う者いるからな」
「「「「はい!」」」」
私は、魔法があまり良く分かっていないけど。
課題は詠唱どうりに進めて発動させる魔法、自分が考案または見つけ出した魔法を披露するのが試験らしい。
メオドールさんは、魔法は何とか苦労しながらも詠唱して出来て。オリジナルの魔法はできなかったようだ。
私も課題のファイアという魔法だけ出来る様になったため。それだけで満足した。
3人組の1人……マリアと呼ばれた人は、課題が普通ならばファイアの筈なのだが……全く違う魔法だった。その時点で、この教師はこの子に何かしら失敗させようとしたみたいだけど……。
彼女はみんなと違う魔法を、詠唱無しでやってのけていた、オリジナル魔法であっても同様に。
ただ、彼女ならやってのけられるのではないかと、心の中で思ってしまった。何故かそれは分からない。
その後は特に無く寮に荷物を置いて、部屋は2人1組だった。相方はセリーナ・ヘル・ナタシアという貴族だった。
挨拶をすると、セリーナさんは。
「こんにちわ……あの女何故、テオドール様と……」
挨拶は素っ気ない物で、ブツブツと先程のマリアとう女性の事を悪く言っていた。
そこにある内容は、教師を買収して難しくしたのは彼女だという事が分かった。ただ、恋情というよりは誰かとの恋を応援している感じだから。
ちょこちょこ、カルネルさんとか名前が出ているので彼女のことでは無いかと思う。
私はあまり関わりらないようしようと思った。
朝起きると、食事をしに行くと。マリアさんがそこで料理を作り配っていた。そして、そのメニューを見て私は改めて確信に変わった……彼女が同じ転生者だと言うことが。
私は、野菜炒めなんて物はこの世界では珍しい物ではない。しかし、作り方が……よく知る人に似すぎていた。
ただ、私はそれを声をだすことが出来なかった。間違ったら……引き離されたらと思った。
従者の試験が行われたが私には関係が無かった。
試験が終わり、学園の道案内にしてる時に学園長室に着いた時に。彼女の様子がおかしい事には気づいていた。遂に倒れてしまったが、心配したが従者の方が素早く運び込んだらしい。
案内が終わって、教室に戻りそれぞれ優雅な貴族達が話しをしている事に気がつくが。私は素を出していないため。凄く話しづらいということで全然話し相手は居なかった。
少しした後に、マリアさんと教師が入ってきた。その様子を見て私は安心した。
そして、自己紹介が終わり……マリアさんに呼び出された時に私は確信する。
次は、呼び出された時と回想の終わり?




